June 01, 2008

アマゾンとアップルのイノベーションに対する姿勢は対照的

 この春、アマゾン・アップル・任天堂などでのイノベーションに関して、雑誌記事がいろいろ出ました。

 まず、BusinessWeekが選ぶ革新的企業50社というランキングが、2008年4月28日号にカバーストーリーとして載りました。1位はアップル、2位グーグル、3位はトヨタ自動車。意外だったのは、6位のタタ・グループで、任天堂の上に来ました。

 アマゾン創業者のベゾスCEOが語るは、同じBusinessWeekの号の記事(Bezos On Innovation)の翻訳。このインタビュー記事で、アマゾンがマーケット重視のイノベーションを志向していることが分かります。

事業領域の拡大を考える時、「我々はその分野で全く技術を持っていないのに、なぜそれをやらなければならないのか」と企業は手始めに考えてしまう。その考え方では企業は限界に直面する。世界は変化し、かつて最先端だった技術も今や顧客にとって無用の技術になっている。「顧客が何を必要としているか」を問うところから始めることで、はるかに手堅い戦略になる。その後で技術的に不足している点を検討すればよい。
When [companies] think about extending their business into some new area, the first question is "why should we do that—we don't have any skills in that area." That approach puts a finite lifetime on a company, because the world changes, and what used to be cutting-edge skills have turned into something your customers may not need anymore. A much more stable strategy is to start with "what do my customers need?" Then do an inventory of the gaps in your skills.

 次に、Fortune誌2008年3月17日号のWhat Makes Apple Goldenというアップルに関する記事の翻訳「アップルはなぜ金のリンゴになったのか」が、月刊アスキー2008年6月号に載っていました。この記事で、アップルが、利用者の求めるものを作る、というよりも、自分達が利用者をリードしてゆくタイプのイノベーションを志向していることが分かります。また、先進的な技術やデザインで常に自分自身を変えていく姿勢がうかがえます。

「アップルにとってひとつの鍵は、自分たちが本当に夢中になれる製品を作ることなんだ。」とジョブズは言う。
"One of the keys to Apple is that we build products that really turn us on," says Jobs.
アップルはマイクロソフトのような企業を一気に抜き去っただけでなく、米国実業界に黄金律を打ち立てた。ブランドを創り、それを変身させ、破壊的イノベーションの時代に合うように生まれ変わらせるという、全く新しいビジネスモデルである。
Apple not only has upstaged the likes of Microsoft but has set the gold standard for corporate America with an entirely new business model: creating a brand, morphing it, and reincarnating it to thrive in a disruptive age.

 ところで、アップル(ジョブズ)に関しては、Inside Steve's Brainという本が4月に発売され、池田信夫ブログなどで話題になっています。Wiredの編集者が書いた本らしく、ジョブズについて宗教など様々な面を取材して頭の中を解剖したような本のようです。私は、そのような内容の本を、洋書では読み気はしません。和訳本が出てから読みたいと思っています。

 ということで、アマゾンとアップルのイノベーションに対する姿勢は対照的であることが、これらの記事で再確認できました。

 任天堂については、オープンイノベーションの姿勢が強まっている感じです。The Tom Sawyer of InnovationというNewsweek (May 19, 2008) の記事は、Wiiのリモコン(WiiMote)の仕様がハックされて、いろいろな用途に利用され始めていることが取り上げられています。一種の「再発明」(Rogersの本を参照のこと)と言えるでしょう。
 BusinessWeekのOpening Up The Wiiという記事は、独立系デベロッパー向けのWii用ソフトウェア開発サービス「WiiWare」について取り上げていて、"win-win for both Nintendo and game designers" と評価しています。

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April 11, 2008

イノベーションは顧客との対話から生まれる

 今週水曜(4月9日)の日経産業新聞の1面の「米欧企業 成長フロンティア 米ゼロックス①」という記事の中で、ゼロックスのCTOのゾフィー・ヴァンデブルークは、次のように述べていました。
「インベンション(発明)は研究所で生まれるが、イノベーション(革新)は顧客との対話から生まれる」

 この言葉は、とても印象的でした。新技術は大切であるが、それを顧客視点から見ることで、真のイノベーションが生まれるということでしょう。

 ググってみたところ、ヴァンデブルークさんは、次のような表現で同じようなことを語っています。

"Inventions are not innovations until they delight our customers."(Securing Innovationというブログより)

"I differentiate between invention and innovation. Innovation is when ultimately this service is rolled out and you actually can use it."(Fortune July 9, 2007より)

 また、XeroxのMessage From the CTOというWebページには、ゼロックスでのイノベーションのビジネス化の手順("explore phase" → "incubation phase" など)が公開されています。

 IBMのニコラス・M・ドノフリオ(エグゼクティブ・バイスプレジデント イノベーション&テクノロジー担当)も、日経コンピュータ 2008/03/24号で、似たようなことを述べています。
「21世紀のイノベーションとは、市場の知識と、技術あるいは製品・サービスが交差するところに生まれます。」

 イノベーションを担当する役員にとって、技術と顧客(市場)をどう結びつけるかが、共通の悩みのようです。

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April 10, 2008

[書評]「経営の未来 マネジメントをイノベーションせよ」

 先々月出版されたゲイリー・ハメルとビル・ブリーンによる経営の未来 マネジメントをイノベーションせよという本を先週から今週にかけて読みました。ネット書店の書評やブログを検索すると、好意的な書評が多いようですが、少し辛口な批判をしてみたいと思います。

 この本の価値を適切に評価するためには、イノベーション・マネジメント(トニー・ダビラ他、英治出版、2007年) やイノベーションの経営学(ジョー・テッド他、NTT出版、2004年) といったイノベーション経営の本と合わせて読んだほうがいいと思います。なお、これまでのイノベーション経営の本としては、MOT(技術経営)的な内容が多かったですが、「イノベーションの経営学」ではオープンソースコミュニティのことまで出てきますし、「イノベーション・マネジメント」の本では、サービスやビジネスモデルの面のイノベーションやオープンイノベーションの事例も多く出てきます。

 もともと、ゲイリー・ハメルは「コア・コンピタンス経営」という本で知られた人です。経営学の理論でいうと、資源アプローチ(リソースベースド・ビュー)という立場の学者で、その立場から未来のイメージを基にした戦略立案・企業改革・パートナーシップを提唱してきた人です。そのハメルが、「ここ数年、ロンドン・ビジネススクールの二人の同僚とともに、経営管理イノベーションの歴史を研究してきた」 (P.24-25) 結果として、まとめた本のようです。
 ですので、事例の分析はしっかりしていると思います。4章=ホールフーズ・マーケット、5章=W・L・ゴア、6章=グーグル、10章=主に、IBMの新規事業機会(EBO)プロセス、の事例分析は、一読の価値があると思います。

 ですが、結論や方法論の面では、もの足りなさを感じます。11章の「マネジメント2.0」については、著者自身が「予言」と言っているように、しっかりとした方法論とは思えません。他方、「イノベーション・マネジメント」の本では、イノベーション経営の方法論まで突っ込んで、7つのルールとしてまとめています。

 具体的には、「経営の未来」のP.37「図2-1 イノベーションの階層」では、製品・サービスイノベーション(テクノロジー)と戦略イノベーション(ビジネスモデル)を階層的に位置付けています。このように階層として見るのは、あまり適切ではないと思います。「イノベーション・マネジメント」の本のP.44「図2 イノベーションマトリクス」では、テクノロジーとビジネスモデルのイノベーションはどちらかというと並列的に示されていて、両方とも従来にない新しいものであれば、ラディカル(画期的)なイノベーションをもたらす、といった具体的な組み合わせを推奨しています。単純に階層的に見てしまうと、このような手法につながらないでしょう。
 「イノベーションの階層」と「イノベーションマトリクス」の図へ。

 結論としては、このゲイリー・ハメルとビル・ブリーンによる「経営の未来」という本は、イノベーション経営の入門書として、イノベーション経営の重要性を理解するのには適した本だと思います。しかし、実際にイノベーション経営を実践する場合には、この本の事例分析を参考にはできると思いますが、具体的な方法論については他の本(最初にあげた2冊など)を参考にしないといけないでしょう。

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March 18, 2008

サービス産業生産性協議会の「SPRINGシンポジウム 2008」

 昨日、サービス産業生産性協議会の「SPRINGシンポジウム 2008」を聴きにいってきました。

 この協議会は、2006年12月~2007年4月に経済産業省のサービス産業のイノベーションと生産性に関する研究会で基本構想が検討され、2007年5月にできた組織です。

 この協議会は、「日本のサービス業のイノベーションと生産性を達成」を目標としている、というので聴きにいったのですが、「イノベーション」といってもプロセスイノベーションのことが中心のようでした。何らかの新たなサービスのビジネスモデルを創造するといった新規のイノベーションを促進するのではなく、プロセスの向上/改善により生産性を高めましょう、というような目標でした。

 具体的には、ハイ・サービス日本300選をベストプラクティスとして選んだり、標準的なCSの指標を定めるなどして、「底上げ」を図っている感じです。しかし、サービス産業で「とんがった」企業がもっと出てくることによるイノベーションによって、経済が大きく発展すると思います。サービスを「輸出」することにもつながると思います。ですので、このような活動だけでは物足りないと感じています。

 最近、坂村先生の変われる国・日本へ イノベート・ジャパンという本を読みましたが、その本には次のように書かれています。(P.185)

政府は直接イノベーションを仕切るのではなく、イノベーションが盛んに生まれるような環境整備だけを行い、あとは天に任せるという姿勢が重要になる

 そのように、サービス業界でのイノベーションを促進するためには、イノベーションが自然と促進されるための制度を構築することがポイントでしょう。私としては今年、元祖権をもっとアピールしたいと思っています。まず、元祖権に関する論文を先月から今月にかけて仕上げまして、先週、日本知財学会誌へ投稿しました。査読に通って学会誌に載れば、少しは注目してもらえるでしょう。さらに、もっと分かりやすく書いて縦書きの本にして出版したいとも思っています。

 今月の他の仕事としては、先週、戦略的な情報システムの事例集を5カ月ぶりに更新しました。また、eビジネス/eコマースの動向と技術も更新中で、今月中にすべて更新する予定です。

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February 02, 2008

イノベーション関連の書籍のご紹介

 昨年後半に出版されたイノベーション関連の書籍を3つ紹介しておきます。

 イノベーションの普及は、エベレット・ロジャーズ著。"Diffusion of Innovations" という有名な本のFifth Edition(2003年)の翻訳。従来は、第2版の翻訳本が1990年に出版されていましたが、かなり古い内容で既に絶版状態でした。Rogersの理論では、イノベーションの採用者カテゴリーが有名ですが、その他、イノベーションの決定過程、イノベーション属性、普及ネットワークの理論が出てきます。また、イノベーション普及を促進させる役割のチェンジエージェントやチャンピオンについての理論や研究も書かれています。古い事例が多いですが、様々な既存研究(リード・ユーザーの考え方も)が紹介されているので、イノベーション理論に関心のある方は必読の本でしょう。

 オープンビジネスモデル 知財競争時代のイノベーションは、ヘンリー・チェスブロウ著。この本を翻訳された栗原さんは昨年11月、ご自身のブログに翻訳書「オープンビジネスモデル」まもなく刊行と書かれています。チェスブロウの前著(オープン・イノベーション)は、個別の企業の事例を分析したような本でしたが、この本は業界全体での傾向まで分析しています。また、イノベーションの二次市場が出現していることを指摘して、この二次市場をうまく活用して、場合によってはパテントトロールを出し抜くようにすべきと提案しています。ビジネス方法特許戦略(原著のタイトルは、「屋根裏のレンブラント」)という2000年のリベット著の本では特許発掘の重要性が叫ばれていましたが、このチェスブロウの本では発掘だけでなく他社の特許を買うことにも積極的になるべきと述べているのです。
 なお、パテントトロールについてですが、先週金曜(1/25)のテレビ東京WBSの特集(眠れる知的財産)でエイディーシーテクノロジーが取り上げられていました。この企業は、日本でパテントトロールのようなことをしていてメーカーから嫌われているのですが、特許の訴訟を行うだけでなく、個人・中小企業の特許を管理し技術の移転先を紹介するような業務も行っていることが紹介されていました。

 技術とイノベーションの戦略的マネジメント (上) は、ロバート・A・バーゲルマン、スティーヴン・C・ウィールライト、クレイトン・M・クリステンセンの編集。分厚い本ですが、さらに下編もあります。研究者向けにいろいろな論文を集めた、Readingsと呼ばれるような本です。研究者や大学院生にとってはありがたい本です(原書を読めばいいのかもしれませんが)。ただし、原書を翻訳するのに5年位かかってしまっています。ネット関連の論文(例えば、音楽配信の事例など)は、かなり昔のことに感じました。

 ところで、本日のニュースで、「マイクロソフトがヤフーに買収提案」と報じられていました。しかし、私の意見としては、両社のビジネスモデルは大きく異なるため、賛成しかねます。

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January 27, 2008

日本経済の総量(パイ)をいかに大きくするかが問題

 本日のNHKテレビ経済羅針盤でのオリックスの宮内義彦会長の話が興味深かったです。話の最後のほうで日本経済の問題について、次のように語っていました。

経済の総量(パイ)をいかに大きくするかが、日本の経済の対処すべき最も大きな問題。 第三次産業の生産性(現在は欧米の6~7割と低い)を上げてゆけば、経済のパイが大きくなる。 現在、国内ではパイの配分(切り分け方)ばかり議論しているのは残念。

 確かに、ふるさと納税、ガソリン税の暫定税率、年金に税金を投入するか否か、等の議論は、「パイの配分」の議論です。パイの配分のような議論ばかりしていては、日本経済は浮かび上がらないでしょう。

 宮内会長は、経済のパイを大きくする鍵として、次の点を上げていました。

民間部門における規制改革と、政府部門における行政改革によって、経済の効率をあげること

 しかし、効率化の他に忘れてならないのは、第三次産業(サービス・流通・金融など)でのイノベーションを促進することでしょう。私は、昨年10月に研究・技術計画学会でサービスイノベーション促進のための新たな知的財産権の必要性と要件について発表した研究を、今年はさらに押し進め、書籍にまとめて世に問いたいと考えています。

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October 10, 2007

日本の新聞社のネット対応はまだ持続的イノベーションの発想

 先月後半から今月初めにかけて、新聞社のネット対応について発表が相次ぎました。しかし、日経産業新聞2007/6/29によると、6月にネット調査したところ、PCでニュースサイトを見ている利用者(93.4%)が見ているサイトは、Yahoo!ニュースが、86.1%。Googleニュースは、13.3%。新聞社のサイトは、各社10%台程度。そのように、Yahoo!ニュースが圧倒的なのです。ITmediaにもこの調査に関する記事あり。

 日経/朝日/読売、共同ニュースサイトを2008年に開設という提携の発表は、 3社のブランド価値を活かすことで、新聞ポータルとしての相乗効果を見込んだようです。しかし、ネットでは、より広い情報の提供がないとYahoo!ニュース/Googleニュースとの対抗は難しいでしょう。新聞ポータルとするためには、地方新聞・業界新聞なども取り込んだ展開が望まれます。また、日経/朝日では、多くのニュースのリンク先が1週間程度で消えてしまうのも問題です。それでは検索でひっかりにくくなりまし、リンクが使われません。思い切って、日経テレコン21のような有料サービスの無料化(または低価格化)が望まれるでしょう。共同ニュースサイトというのは、持続的イノベーションの発想です。ニュースの世界でも、破壊的イノベーションの波があっという間に来ると予想されますので、発想の転換が必要です。

 産経新聞とマイクロソフトの共同ニュース・サイトのMSN産経ニュースは、紙とネットの壁を壊すと言っていますが、今のところさほど迫力はありません。Business iへはトラックバックできるのに、親サイトの産経ニュースはまだできません。

 毎日jpは、あっさりしたサイトになった感じです。ブロガーの協力も受けているとのことですが、今ひとつ面白みに欠けます。

 今年6月に、エコノミスト誌のすべてのコンテンツをネット上で無料公開されました。また、9月には、New York Timesが有料オンラインサービスを終了し、コラムなどが無料で読めるようになりました。それなのに、日本では新聞社の動きは遅いです。

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August 06, 2007

クリーニング業界でのブルーオーシャン戦略

 昨日のNHKの経済羅針盤で、クリーニングの喜久屋を紹介していました。このブログでも約2年前に一度、喜久屋を取り上げました。

 新聞や雑誌に取り上げられることの多い企業です。ネットでは、日経BPのサイトに詳しい解説があります。
 ・喜久屋(1) --- e-closetという保管料0円のクリーニング・サービス
 ・喜久屋(2) --- 「出前館」通じてインターネット・サービスに進出
 ・喜久屋(3) --- 23時まで集荷するムーンライト・デリバリー23
 ・喜久屋(4) --- ケータイ宅配クリーニング

 以前、Wiiはブルーオーシャン戦略と紹介しましたが、喜久屋は、クリーニング業界で、ブルーオーシャン戦略を取っているといえるでしょう。従来見逃されていた、「都心に住む単身者や共働き世帯」の市場を狙ったムーンライト・デリバリー23や、「衣替え時期にまとめてクリーニングに出す衣類を半年間保管してほしい」という要望を狙ったe-closetというサービスにより、価格競争(レッドオーシャン)に陥ることなく、利益を出しているわけです。

 e-closetでは、クリーニング依頼に繁閑の差があることに着目して、保管するクリーニング依頼品はできるだけ閑散期に処理するように平準化(生産管理で出てくる用語で、処理の量を平均化すること)することで、クリーニング設備の固定費を削減でき、保管のコストをペイできるという仕掛けです。

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August 03, 2007

あんしん、あったか、あかるく元気!~人が織りなすANAブランド~

 やっと一昨日で春学期の170名分のレポートの採点も終わった(以前このブログにも書きましたがレポートの採点は結構たいへんでした)ため、昨日は有明の東京ビッグサイトで開かれていたe-Learning WORLD 2007という展示会に行ってきました。大学でのeラーニングの活用方法や、企業でのコンピテンシー管理などの現状の情報収集のためでした。

 その展示会の特別講演の日米欧におけるナレッジ・マネジメントの最新情報を、事前に予約して聞いてきました。その中では、全日本空輸 CS推進室の澤谷みち子さんによる「あんしん、あったか、あかるく元気!~人が織りなすANAブランド~」という講演が印象的でした。

 これまで、私のブログでは次の企業のサービスイノベーションを取り上げました。
 ・ディズニー
 ・NECフィールディング
 ・加賀屋

 しかし、ANAも、これらの事例に負けないくらい熱心にサービス向上に取り組んでいるのを感じました。

 ANAのCS経営に関して、ある程度は、日経情報ストラテジー2005年9月号の「全日空(ANA) JALの国内線強化を受けて立つ」という記事や、BITS(Business & IT Strategy)2005というイベントでのANA 競争力を高めるCS活動の取り組みとITの活用についてという講演で知っていました。昨日の講演で、現状が詳しく分かりました。

 ANAのCS活動では、まず「顧客の声」をたくさん集めています。コールセンターだけでなく、CAや地上係員も「気付き」を入力し、社内で共有し、期間を決めて組織的に解決してゆきます。その数は、年間4~5万件にもなるとのこと。
 また、「ANAらしさ」として、「あんしん、あったか、あかるく元気!」なサービスの提供を心がける全社的な体制作りをしています。CS(顧客満足)向上のために、まずES(従業員満足)を高めようとする企業は少なくありませんが、ANAは仲間を「ほめる」仕組みで「仕事のやりがい→がんばり」につながることを狙っています。具体的には、「GOOD JOB CARD」というカードを使って仲間をほめることで、CSマインドを啓発しています。また、従業員に配布される賃金明細書の表紙に、お客様から頂いたお褒めやお礼の言葉を掲載しているとのこと。詳細は、ANAのCS活動のページを参照のこと。

 ブログを検索したところ、ANAの澤谷さんは、別な場でいいことを言っていました。ハー・ストーリィの日野社長のブログに次のような話が述べられています。


先日、あるパネルディスカッションで、ANAのCS推進室の澤谷みち子さんとご一緒しました。
彼女が講演の中で、【安全と安心の違いはわかりますか?】と会場に投げかけられました。
【安全と安心】
多くの人が今、とても使う言葉です。
でも、この違いをどう伝えるのか、というとたしかに考えてしまいます。
「安」という字に対して、「全」と「心」。ここに答えがあるのでしょうね。
澤谷さんは、「安全とは、品質管理が行き届いたコンビ二のおにぎり」で、「安心は、おかあさんの、あなたのことを思って作るおにぎり」といわれました。
今、企業は、この両方に応えていくことが問われています。
「安全」であることは絶対責任で、さらに「おかあさんのような」思いを持って、お客様と接していくという姿勢です。

 このことを狙って、「ANAらしさ」のコンセプトは、「安全」でなく「あんしん」から始めているのでしょう。

 また、ANAの情報システムとしては、座席配分や運賃の自動最適化システムも、ANAの収益向上に役立っていると言われています。

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July 13, 2007

小林製薬のイノベーション

 日経BPのサイトのイノベーション解剖学という特集コーナーに、今週、NRIの齊藤義明さんによるイノベーションには「情熱の循環」が必要だというコラムが載りました。このコラムでは、メドトロニックと小林製薬のイノベーションへの取組み(情熱)が取り上げられています。私も、小林製薬のイノベーションには注目していたので、いろいろと調べて読んでいましたが、このコラムの中の「ごんたの10箇条」(小林製薬が愛でる人材像) は知りませんでした。やんちゃな子供を意味する「ごんた」を持ち出して、組織文化の醸成を狙っているようです。
 
 もともと小林製薬は、「小さな池で大きな魚を釣る」というニッチを狙ったマーケティングをする会社で有名でした。ユニークな新製品を次々に開発して、一時は、売上高に占める発売1年以内の新製品の比率が15%まで達しましたが、この3年は目標の10%に届かない状態が続いています。2004年に社長に就任した小林豊社長が、組織改革や新たな制度を導入して、活性化を図っています。優れたイノベーションに対して社長からその貢献内容を称える「ホメホメメール」や、提案の多かった人をフランス料理のフルコースに招待するといった試みもしているとのことです。

 小林製薬は、社員全員による消費者目線の提案で、“あったらいいな”をカタチにするような商品開発を志向している会社です。テクノロジープッシュでなく、デマンドプル/マーケットインの戦略です。マーケティングセンスを持った研究員の育成をしているような会社です。そのような方針の会社で、情熱的というよりも、トップが社員を乗せて、楽しくイノベーションするサイクルができているように感じます。

 日経ビジネス 2007年01月29日号「小林製薬“ドロドロ開発”で原点回帰」によると、「ドロドロ開発」と名付けられた組織横断的な会議で、新商品開発の議論をするとのこと。2001年頃から、大企業病が目立つようになり、何となく社員がスマートになって、かつてのドロドロとした現場の雰囲気が失われつつあったため、現場の活性化のために「ドロドロ」とした場を設けようとしたとのことです。関西の会社だけに、「ドロドロ」を楽しんでいるようにも思えます。「“あったらいいな”をカタチにする」という宣言の中で、5つの目指す会社像の中に「おもしろい会社」があります。これも関西企業らしいです。

 また、同社人事部長の藤城克也氏へのインタビュー記事によると、提案制度には「アイデア提案」「改善提案」の他、「青い鳥カード」というのもあるようです。改善の取り組みを自己申告し、ベストプラクティスを共有するためのものとのこと。また、ブランドを高める活動として、「コーポレートブランドチャンピオン大会」という企画で、コーポレートブランドを向上させたグループ企業を表彰しているようです。いろいろと社員を乗せる工夫をしています。

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June 24, 2007

Apple社のイノベーション

 Econimist(June 9th 2007号)の表紙の見出しは "Apple and the art of innovation" でした。その中のLessons from Appleという記事では、Appleのイノベーション方法に関して、4つの学ぶべき点(lesson)があげられています。


  • Innovation can come from without as well as within.
  • Apple illustrates the importance of designing new products around the needs of the user, not the demands of the technology.
  • Smart companies should sometimes ignore what the market says it wants today.
  • Apple is to "fail wisely".

 また、記事中の "Stay hungry, stay foolish" というのは、Appleの特徴をよく表していると思います。(追記:この言葉は、スティーブ・ジョブスが2005年6月にスタンフォード大学卒業祝賀スピーチを締めくくった言葉でした。かなり知られた言葉のようです。原文その日本語訳があります。)

 この記事に対して、WiredはAppleは「ネットワーク・イノベーション」企業ではないと異論を唱えています。Economistが1つ目のlessonの中で、P&Gが行っている「ネットワーク・イノベーション」(オープン・イノベーションとも呼ばれる) をAppleが行っていると指摘していることに、Wiredは「見当違い」(quite wrong) と言っています。

 私もWiredの意見と同感です。Appleは、使いやすさやデザインなどで、利用者の新文化を作り上げるのに長けた企業といえるでしょう。NIH(not invented here)などのオープン・イノベーションの考え方とは異なります。どちらかというと、Wiiのイノベーションの例のほうに近いでしょう。なお、Economistの記事の2つ目以降のlessonには異論ありません。4つ目のlessonの話では、Newtonの失敗も、その後に活かしていると思われます。

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June 14, 2007

任天堂がWiiの開発でとった戦略(ブルーオーシャン戦略)

 任天堂がWiiの開発でとった戦略が、いろいろなところで話題になっていますね。私のゼミでも先週取り上げました。

 備忘録がてら、主な資料をまとめておきたいと思います。

Wii:ゲーム機戦争を制した「逆転の発想」(1)
  [Wiredの翻訳記事、by Chris Kohler、原文の日付は2007/6/11]

 競合する2社に後れを取ったゲーム機メーカーは例外なく、やがてレースから脱落してしまった。米Atari社、NEC、セガがそれに当てはまる。そして4年前、ほぼ誰もが、任天堂も同じ運命をたどると考えていた。
 任天堂自身も、おそらくそう考えたのだろう。だからこそ、市場から独自のニッチを切り取れるような製品の開発を決定したのだ。それは、他とはまったく異なるゲーム機で、たとえ3位に落ちたとしても、その特殊性ゆえに、存続可能なビジネスモデルが成り立つ製品が望ましい。
 ソニーやMicrosoft社との競争をやめると決断したまさにその時、任天堂の反撃が始まったのだ。

ソニーと任天堂を隔てるもの
  [アイキットソリューションズ 生島大嗣氏、2007年6月8日]

 任天堂は新発想の最新鋭ゲーム機「Wii」を送り込む。この機種の特徴は、コントローラにある。本体の性能を向上させるのではなく、今までのゲーム機にないユーザーインターフェースを用意することでゲーム機を進化させたのだ。PS3より早く発売できたこともあり、新型コントローラを備えたWiiは売れた。
 どうしてこれら二社にこのような明らかな戦略の差が生まれたのだろうか。戦略の違いを生んだ要因を推測していくうちに思い当たったのが、「成功体験の罠」というものである。

任天堂「Wii」を生んだ「ブルー・オーシャン戦略」とは?
  [日経情報ストラテジー発ニュース、W・チャン・キム教授へ取材した記事、2007年4月27日]

 Wiiは「非顧客」を顧客化した典型的な事例だ。これまでゲームであまり遊ばなかった小さい子どもや大人にも満足してもらえるゲームを出すことで、ブルー・オーシャン(新市場)を開拓した。

・任天堂トップ直撃! 岩田社長が語る「Wii誕生の目のつけ所」 [プレジデント2007/3/5号]

 正解は静かに去っていったゲームファンが教えてくれた。
 今いるのは互いにノンガードで殴り合う血まみれのレッドオーシャンだけれど確実に市場はある。向こうは血の流れていないブルーオーシャンかもしれないが市場になるかどうかわからない。ロジカルな分析では答えは出せません。
 それでも腹をくくったのは、この方向性は絶対正しいという自分なりの自信があったからです。

・お母さんを狙え 任天堂Wiiの戦略 [日経ビジネス2006/11/27号]

 任天堂の目指す原点は人が驚くものを作ることであって、最先端の技術はそのための手段に過ぎない。限られた時間と予算で作り上げたものを示してお客さんに驚いてもらうには、どんなバランスがよいのか。そのバランスを考えた結果、任天堂は最先端の技術を追求する以外の道を選ぶ――岩田らは社内に向かってこう語り続けた。
 「ゲームに関心のなかった人にも邪魔に思われないような、特に家庭のお母さんに嫌われないようなゲーム機というのがキーワードでした」 岩田はこう振り返る。
 この2004年末時点で、ゲーム機本体とコントローラーの開発のめどはついた。販売価格も「努力すれば娯楽機器として許容される範囲内にちゃんと手が届く」(竹田)という確信を得た。 しかし、新しい据え置き型ゲーム機の開発はまだ終わりではなかった。「どうすれば家族全員に関係のあるゲーム機にできるか」という課題を解決する必要があったのだ。「Wiiはテレビにチャンネルを増やすような機械にしましょう」 岩田はこう書いたメモを宮本と竹田に渡し、2004年末から2005年初めにかけて、そのための方策を話し合った。

[追記](2007/6/30)
 Business 2.0にも、How the Wii is creaming the competitionという記事がありました。この記事の和訳を、月刊asciiの8月号に見つけました。

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March 10, 2007

ディズニーのサービスイノベーション

 サービスで定評のある企業に関する本として、NECフィールディング加賀屋の本に続き、今週は、ディズニーが教える お客様を感動させる最高の方法という本を読みました。ディズニー・インスティチュートが、ディズニーにおけるサービス提供の方法(主に、クオリティ・サービス・サイクルの手法)を解説した本です。

 ディズニーでは、サービスを提供するプロセスを重視したり、ゲストロジー(お客様を知り、理解する技術と科学)という考え方を用いたりしているなど、クオリティ・サービス・サイクルを科学的に検討する継続的な努力をしていることで、サービスの質の高さを維持していることが分かります。

 ちょうど今週、大阪と東京でディズニー・インスティチュート・セミナー in Japanが開かれました。この本のようなことを詳しく教えるセミナーだったようです。

 ディズニー・インスティチュート AND セミナーでブログ検索すると、上記のセミナーを受講された方々の感想が出てきます。

 この本のポイントをまとめておきます。

1章 サービスこそディズニーのすべて

マジックを生むクオリティ・サービス・サイクル --- オフステージでの共通プロセス P.13

ゲストロジー = お客様を知り、理解する技術と科学 P.19

クオリティ・サービス・サイクル  P.19-25
  4つの要素(サービステーマ、サービス基準、サービスの伝達、サービスの統合)
 サービステーマ --- 従業員全員が共有することにより、サービスを伝達する原動力となる分かりやすい意志表明。
 サービス基準 ----- サービステーマ実現のための行動指針となり、クオリティ・サービス計画の手段となる。ディズニーでは、重要な順に、安全・ゲストへの配慮・ショー・効率。
 サービスの伝達 --- 従業員(キャスト)、セット、プロセス。
 サービスの統合 --- 完全な業務システムを作り上げるために、サービスの各要素を組み合わせる。その結果、質の高い顧客経験を提供。

2章 ゲストを知ることがマジックの始まり

ゲストロジー = 市場顧客調査  P.33
 ゲストがどのような人々か、何を期待してディズニーのテーマパークにやってくるかを知るためのもの。
 ・テーマパークの入口や主要な場所で対面調査。
 ・情報収集所(リスニングポスト)で、ゲストの質問に答えたり、問題を解決したり、情報を集める。
 ・コメントカード(ゲストの意見や様子を記入し報告するもの。キャスト全員の仕事の一部)
 ・施設の利用状況の研究(交通やホテルなど)
 ・ゲストからの手紙や電子メール、フォーカスグループ。

ゲストロジーを4つの方位に展開(ゲストロジー・コンパス)--- お客様のニーズ、ウォンツ、ステレオタイプ、エモーション  P.39

ゲストロジーによって集まった情報は、クオリティ・サービス・サイクルのすべての要素をつくり、改良するために活用しなければならない。 P.36

ディズニーのサービステーマ
「わたしたちは、最上のエンターテインメントを提供することにより、すべての年代の人々のためにすべての場所で幸せを創造する」 P.43

3章 キャストが起こすディズニー・マジック

4章 感動を体感してもらう空間づくり

5章 ディズニー・マジックは入口から

プロセスを、継続的に改良をつづけていく努力(プラスする)。 P.139

プロセスを通じてサービスを伝えるには、発火点を制御することが重要。P.143

発火報告は、サービスのマジックを実現するために、解決すべき問題点。

よくある発火報告
・時間がかかりすぎる
・だれもきちんと答えてくれない
・私の場合は人と違う
・とにかく困った

待ち時間を最小にする方法 P.145
・商品とサービスの工程を最適化する
・ゲストの流れを最適化する
・列に並ぶという経験を最適化する

1999年にファストパスを導入。P.149 

アイズ&イヤーズ(目と耳) P.154
 ディズニーワールドについて、キャストひとりひとりが知っておかなければならない情報を伝達する社内誌。
 毎週、6万部が刷られ、パークで働く全キャストに配布される。
 ポケットサイズの早見表やイントラネットの利用も。

6章 魔法のサービスを実現させる

統合マトリックス --- クオリティ・サービスを分析し、向上させる手助けとなる。 P.181
 横列に、キャスト・セット・プロセス。縦列に、サービス基準。
 マトリックスのそれぞれのマス目は、サービスの瞬間。

すばらしいサービスには、3つの特徴  P.191
 ハイタッチ(人間的感触)、ハイショー(ショー的要素)、ハイテク(先端技術)

ストーリーボードの活用  P.193-196
 サービスのソリューションを策定し、実現のための計画を立てるために有効なテクニック。
 統合マトリックスから生まれたサービス・ソリューションの開発を視覚化し、整理するのにも有効。

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March 05, 2007

加賀屋のサービスイノベーション

 月刊AJ編集長さんから「加賀屋」というキーワードでトラックバックしていただいたので、私も加賀屋のサービスについて書きます。

 加賀屋は、石川県の和倉温泉にある老舗の旅館ですが、プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選の総合ランキングで、27年連続日本一になっているという凄い旅館です。なお、私は和倉温泉には行ったことがありますが、加賀屋には泊まっていません(宿泊料金がかなり高いので)。

 テレビ朝日の2/11の旅の香りで加賀屋の裏側へヒロシが潜入して、顧客満足度が高い秘密をレポートしていましたので、見た方も多いと思います。加賀屋では、例えば、客室係は47都道府県全ての出身者をそろえていて、なるべくお客様の出身地と同じ人を客室係につけたりして、お客様に不便を感じないようにしています。また、外国の様々な国からお客様が見えられていいように、国旗をちゃんと用意しています。そのテレビ番組では、宴会用の道具としてセーラー服まで用意していることを写していました。加賀屋では「できません」や「ありません」を言わない、とのことです。ありえないような心配りに、あの腰の低いヒロシが驚いていました。

 だいぶ前の話ですが、私は経営情報学会という学会の2002年度秋季全国大会で、加賀屋の小田会長による「おもてなしのこころ」という講演をお聞きしました。小田会長は、精神面だけでなく、「おもてなしを科学する」と言っていました。接客の裏側で、客室係を支援する仕組み(配膳システム等)・体制(カンガルーハウスという従業員の子供のための育児施設など)で従業員満足度を維持したり、評価・改善する仕組みを整えることで、継続して顧客満足度を高めることができているのです。

 加賀屋の流儀という本の中で、加賀屋の副支配人は「ホテルは足し算、旅館は引き算」と表現しています。そのため、お客様に失礼がないように、細やかな心配りで「一客入魂」の精神を徹底している加賀屋の全従業員の姿がこの本の中で描かれています。リッツカールトンやディズニーよりも本格的なCS経営を組織的に行っている、というのが私の印象です。

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February 26, 2007

NECフィールディングのサービス品質革命

 昨日、サービス品質革命 「顧客とともに、CSを超えて」 NECフィールディングの挑戦!(高橋安弘著、ダイヤモンド社、2004年)という本を読みました(本の構成Amazonのページ)。今年、私はサービスイノベーションに関する研究を進めており、事例の本をいろいろと読んでいます。その中で、このNECフィールディングの例は、ITを活用したサービスイノベーションを考える上でとても参考になると感じました。また、ディズニーや加賀屋などの事例ともいろいろ通じる点を感じました。

 この本のポイントを箇条書きでまとめておきます。

NECフィールディングの経営の卓越性の本質を理解する5つのポイント(高橋) P.26
1. 事業の本質を「サービス業」であると位置づけたこと。
2. 「CS」を経営の基盤に位置づけたこと。
3. 「アフターサービス分野」に事業ドメインを絞り込んだこと。
4. 戦略推進の「卓越した仕組みと強固な体制」が存在すること。
5. 自立を機に「マネジメントロジック」を意識的に転換したこと。

サービスを2つに分けて考えている(鳥居顧問) P.40
・「当たり前のサービス」--- システムの安定性を提供するなど
・「期待を超えるサービス」--- 顧客価値そのものを高めるような提案により、付加価値を提供

自らあげている競争力の源泉(コアコンピタンス) P.48
・ナレッジマネジメント力
・展開力

事業戦略 P.51-55
・ITヘルスケア --- ITのライフサイクル全体のわたってそのシステムの状態を最適に維持し、システムが最大限の効果を発揮できるようなサポートサービスを展開。
・プロアクティブ・メンテナンスをベースに、フィールディング・ソリューション(クロスセルなど)へも。

サービス品質の2つの要素 P.57
・サービスの機能的側面 --- 本質的要素
・サービスの提供プロセス --- かならず「人と人が接する」

CS活動 P.66-81、P.107
・CSIP(CS改善活動)による好循環 → E-CSP活動(そこまでやるか、フィールディング)へ
・SQA(Service Quality Activity)活動
・DSC(Do See Check)活動
・CSI(顧客満足度指数)による評価。目標展開マネジメント。

取得した規格/賞
・2003.4 = COPC (Customer Operations Performance Center) 規格 --- コールセンター業務の国際的な品質保証規格
・2003.10 = ISMS規格 --- 情報セキュリティ関連の国際規格
・2003.11 = 2003年度日本経営品質賞を受賞

システム
・顧客の声の蓄積と活用
  TRUST Ⅲ --- ナレッジを蓄積する社内データベース。常にマイニング。 P.47
  CSVOICE --- 「お客様の声」管理システム。BRやCSMAILも。 P.101-104
・サービス業務
  サービスプロセス統合技術支援システム P.122
  iモードディスパッチシステム(CE支援ソリューション) P.124-125
  PRIDE (作業手順自動作成・配信システム) P.125 --- ダイキンのe-SWATシステムに似ている?
  ヘルプデスクサポートシステム P.130
・ロジスティクス
  あるパーツ川崎 P.131-138
・提案用
  e-Promotionシステム P.160

 その後、昨年2月には、ITサービスマネジメントの国際規格のISO20000を取得しています。

 なお、特許を検索したところ、現在までに次のような特許が成立しています。
 「コンピュータの修理システムと方法、修理支援センタの処理装置、及びプログラム」(特許3866583)
 「顧客からの連絡要求受付システム,方法,受付サーバおよびプログラム」(特許3866675)
 「CTIシステムおよびCSレベル判断方法ならびに音声分析サーバおよびプログラム」(特許3872066)
 「大規模システムに接続された複数の携帯端末の運用管理システムと方法」(特許3880453)

 他の情報源として、次のような解説がネットにあります。
 ・NECによる事例解説
 ・ITmediaによるコールセンターの解説記事

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December 25, 2006

サービスサイエンスとサービスイノベーション

 今年は、サービスサイエンスやサービスイノベーションという用語を、雑誌やネットなどでよく目にしました。今日は、それらをまとめておきたいと思います。

 サービスサイエンスについては、IBMが提唱した考え方のようです。ビジネス雑誌では、昨年、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューに出てきて、それから他の雑誌や学会で取り上げられました。サービスイノベーションも、今年から言われ始め、今月には経済産業省に研究会が正式に発足しました。

[サービスサイエンス]

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
2005年のパワー・コンセプト(下)14. 「サービスの科学」を拓く(2005年6月号)
・サービス・エコノミーのフロンティアのシリーズ
 [第1回]デリバード・バリュー・プライシングへの挑戦(2005年10月号)
 [第2回]サービス・サイエンスの可能性(2005年11月号)
 [第3回]サービス・プロフェッショナルを育成する (2005年12月号)

サービスサイエンスとは何か(富士通総研のレポート)

日経コンピュータ2006/5/1号「議論百出する“サービス・サイエンス”」

情報処理2006.6月号(Vol.47 No.5)「サービス・サイエンスの出現」

一橋マネジメントレビュー2006年秋号.AUT.「特集 サービスを科学する」

ダイレクトマーケティング学会の部会

サービス・サイエンス論(亀岡先生)は北陸先端大の講座。昨年から開講。

[サービスイノベーション]

日本企業のサービスイノベーション(野村総研のレポート. 2002年)

サービス・イノベーション:メーカーにとっての課題(SRIのレポート. 2005年)

サービスサイエンス・イノベーション有限責任事業組合

サービス・イノベーション(富士通総研の研究テーマ)

サービス・イノベーション・シンポジウム(IBM)

サイエンス化で切り拓く知識社会のサービス・イノベーション(日立総研の研究テーマ).その方法論の詳細はこちら

サービスイノベーション研究会(東京大学での産学連携の研究会).2006年10月に開かれたフォーラムの内容はこちら

経済産業省 第1回サービス産業のイノベーションと生産性に関する研究会(2006.12)

 検索してみましたが、個人のブログで、サービスイノベーションを取り上げているところは少ないです。社会人大学院で学ぶ技術経営というブログで、何回かサービスイノベーションを取り上げています。

 私としては、来年は、情報化事例・eビジネスのイノベーション(マッシュアップによる再発明など)・サービスイノベーションのための知的財産権(新知的財産権の提案など)、の3つの面から、サービスイノベーションに取り組みたいと考えています。

 目標としては、来年春の経営情報学会・日本知財学会、秋の研究・技術計画学会(最近、入会しました)の全国大会で発表したいと考えています。できれば、本にでもまとめたいですが。

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