May 13, 2025

ソフトバンクグループの生成AI活用の特許出願1万件の中身

 4月に特許庁が公開したソフトバンクグループの特許出願が話題になっています。まず、その量の多さです。普段は、月に100件も出願していない会社なのに、先月には約1万件の特許出願が公開されました。しかし、このことは既に分かっていました。2023年10月4日、グループの年次イベント「SoftBank World 2023」で孫正義会長兼社長は「生成AI関連の特許をここ数カ月で1万件以上出願している」ことを明らかにしていました。その特許出願が公開されたわけです。

 簡単に調べてみましたが、この大量出願は次の点が特徴的だと思いました。
・1万件の特許出願を特許分類で調べてみると、ビジネスモデル特許(ビジネス関連発明)が多いです。1万件の中の約86%にG06Q(ビジネスモデル特許の分類)の特許分類(FI)が振られています。生成AIをビジネス面に活用する狙いの特許出願がほとんどのようです。
・生成AIの活用に加えて、ほぼ全ての特許出願に「感情エンジン」の要素が入っています。「生成AIがすべて自動化するのでなく、関わる人の感情がどこかに入るはず」というような未来像をイメージして、組織的に、「感情エンジン」が入る構成の発明を強制発想したように思われます。感情エンジンを含む構成の請求項であれば特許査定の可能性が高いのではないかという狙いもうかがえます。そうであれば、意義のある大量出願と感じられます。
・今のところ審査請求しているものが少ないです。審査請求されたものを見ると、優先権主張で修正された新規の出願として778件が審査請求されています(1万件の中の8%弱)。そのまま審査請求されたものは見当たらないです。やはり、短い期間で1万件を出願したため、特許成立を狙いたい出願は、内容に問題がないかを再検討して優先権主張で修正した上で審査請求したようです。なお、全体的に図を共通にしているものが多そうですし、特許明細書の内容は急ごしらえの感が強いです。
・短期間で1万件も出願するために、特許明細書の作成のプロセスを工夫したと思います。半自動化したか、ここでもAIを活用したかもしれません。先月公開された1万件の中にシステムおよび方法(特開2025-051605)という特許出願があります。「生成部は、情報取得部によって取得された発明者のアイデアを生成AIに入力し、特許出願原稿を作成」という仕組みが含まれる特許出願です。ほとんどの特許出願は「システム」だけの名称ですが、この特許出願だけは「システムおよび方法」という名称(「方法」の請求項を含む)で審査請求(他と同様に優先権主張で修正した新規出願を審査請求)されています。このように特別扱いしていますので、重要と思っているのでしょう。

 今後、審査請求された778件の中のどれくらいが成立するか、さらにどのくらい審査請求されるかや、新たな大量の特許出願があるかなど、注目してゆきたいと思います。ソフトバンクグループの事業戦略とどのように関連付けるつもりかも興味深いです。

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December 08, 2019

跳びガエル現象 (leapflog、リープフロッグ型発展)

   最近、新興国で製品ライフサイクルを1巡飛び越して最先端の製品/サービスが普及する現象が起きることがあり、「跳びガエル現象 (leapflog、リープフロッグ型発展)」と呼ばれています。Wikipedia日経コンピュータ2019.7.11などで紹介されています。
 最近の講義で、この現象を説明する機会があったのですが、いい図が見つからなかったので自作しました。
 ご参考までに載せておきます。

Leapfrog

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October 27, 2019

アスタリスクがユニクロの新型セルフレジを特許侵害で訴えている件

 今月の月刊 最新、ビジネス方法特許の登録状況に少し書きましたが、先月、アスタリスクという会社がユニクロを特許侵害で訴えました。ユニクロの新型セルフレジが、アスタリスクの保有するRFID読取装置関連特許読取装置及び情報提供システム(特許6469758号)を侵害しているという主張です。

 ファーストリテイリング側は、この特許に対する無効審判(無効2019-800041)を請求しています。特許庁のページの口頭審理・証拠調べ・巡回審判期日の中の「巡回審判期日一覧表」を見ますと、明後日(10/29)火曜の午後に大阪で口頭審理が行われます。東京で行われるのでしたら聞きに行きたかったのですが、大阪では行けません。残念です。

 アパレル業界の多くの企業ではRFIDタグを活用してゆく傾向ですので、この特許の侵害訴訟・無効審判の結果が注目されます。

 

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September 05, 2018

特許無効審判、 コムスクエア 対 TIS

 昨日(9月4日)、経済産業省別館1階 第1審判廷で行われた特許無効審判の口頭審理を傍聴してきました。私は、時々特許庁の口頭審理・証拠調べ・巡回審判期日のページを見ていまして、ビジネス方法特許(ビジネスモデル特許)関連の審判を見つけた際は、都合がつけば聞きに行くようにしています。

 昨日の無効審判は、株式会社コムスクエアの特許の情報管理方法、情報管理装置及び情報管理プログラム(特許5075201)に対して、TIS株式会社が特許無効化を請求した事件です。一般に「ペイ・パー・コール」と呼ばれている機能で、ネット広告に電話番号を載せて、利用者がその電話番号に電話をかけた場合に課金する仕組みに関してでした。請求人側(TIS)が、この特許とほぼ同じ仕組みの先行技術を見つけていて、請求項1・4・7の取消しを請求しています。昨日聞いた範囲では、この審判の争点は、「情報が表示されてから一定期間」(先行技術)と「(情報管理サーバから)情報が送出されてから一定期間」(本特許)とを同一と見なしていいかという点でした。請求人側は、当業者からみてほぼ同じ意味というような主張をしていました。被請求人側は、実験的証明などを提出して同一ではないと主張していました。ディベートを聞いているようでした。
 私の感想ですが、最近のネット広告詐欺の問題として、スクロールしないと見えない箇所に広告枠が設けられているような場合があることを請求人側が提示したほうがいいと思いました。そのような問題があるように、先行技術の文献で、広告出稿側が「表示」と書いていても、実は利用者の端末では表示されてない場合があり、広告出稿側は情報を送出することを「表示」と書いていると思われます。そのような点を主張に加えると、より説得力が増すのではないかと私は感じました。

 なお、この無効事件と並行して侵害訴訟も行われているとのことでした(ダブルトラック)。ですので、無効にできる否かは請求人側にとって大きいでしょう。
 コムスクエア側はTIS株式会社の提供する「Callクレヨン」サービスに対する 特許権侵害差止等請求訴訟の進捗のご報告というリリース等を昨年出していますが、無効審判を起こされている件は発表していません。

 別件ですが、小著eビジネスの教科書に誤りがありました(ご指摘いただきました)。単純な用語の誤りです。6.7 に「ソーシャルレンダリング」とありますが、「ソーシャルレンディング」が正しいです。出版社の正誤情報のページにも記載される予定です。ケアレスミスで申し訳ありませんでした。また、ご指摘いただいた方に感謝いたします。

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May 19, 2017

電子チケット関連の特許の無効審判について

 特許庁の口頭審理・証拠調べ・巡回審判期日のページを時々見ているのですが、電子チケット関連の技術の特許に関して、無効審判が起されていることを最近知りました。無効2016-800102と無効2016-800103です。

 電子チケット発券アプリのtixeeboxを提供しているLive Styles株式会社が保有するチケット処理方法およびプログラム(特許第5362134号)プログラム(特許第5436718号)という特許に対して、ファンクラブ運営・電子チケット技術のEMTG株式会社が無効審判を起こしています。
 Live Stylesの特許のページには、上記の2つの特許の概要が示されています。アプリに届いたチケットをもぎるだけで入場が可能となる技術に関する特許です。その他、「チケット処理方法およびプログラム(特許5256372号)も有していることが示されています。

 EMTG株式会社も同じようなビジネスを行っているようですので、Live Stylesから警告されているのかもしれません。
 来週火曜(5/23)に経済産業省別館1階の第一審判廷で、この無効審判の口頭審理があるのですが、授業が入っていて聞きにゆけません。結果がでてから、詳しく解析したいと思います。

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March 10, 2017

アリタリアのアップグレード入札制度とプライスラインの逆オークション

 先週、約1週間の間、ローマに行ってきました。航空会社はアリタリア航空を使ったのですが、アップグレード入札制度を使って、行き帰りともプレミアムエコノミー席にアップグレードできました。市場原理でアップグレードの価格が決まるということで、興味深い仕組みでしたので、入札してみました。数万円ならいいかと思い入札したところ、フライトの前日に落札できたというメールがきました。なお、調べてみると、アリタリアだけでなく、他の航空会社でも同じような制度を取り入れているところがあるようです。

 私がこの制度を知ったのは、出発の10日前にアリタリアから次のような英語のメールがきたためです。
"Get an Upgrade on your Alitalia flight to Rome. Make a bid!"
Dear guests,
Your current flight itinerary is eligible for an upgrade to our Business Class. Enjoy all the allure of Italian style. Relax in the utmost comfort and let us spoil you with our wide range of services and our all-Italian hospitality.

 そのメールで示されたリンクから入札を申し込むサイトにゆくと、メーター(offer strength)で、どの位の入札額ならば落札できそうかの目安が示されました。ビジネスへのアップグレードも入札できましたが、かなり高くないと落札できそうになかったので、私はプレミアムエコノミー席に入札してみました。なお、入札時にクレジットカード情報の入力を求められ、アップグレードできた時点で入札金額が引かれることが示されて、冷やかしでは入札はできないという感じでした。

 このような入札方法は、見た目はプライスライン社で航空券やホテルを逆オークションで予約するName Your Own Priceの仕組みによく似ていると思いました。しかし、アップグレード入札制度は1つの会社の中で閉じた入札制度であるのに対し、プライスライン社の逆オークションは複数の航空会社やホテル会社に逆オークションをかける仕組みですので、全く違う仕組みです。なお、プライスライン社の逆オークションは、特許化されていることでも有名で、以前このブログでその特許が日本でも成立したことを報じました。その逆オークション関連のプライスライン社の最初の特許出願は1996年ですので、既に出願から20年経っていて権利期間が終了しています。早いものです。

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December 11, 2016

freee(フリー)がマネーフォワードに対して特許権侵害で差止請求訴訟(Smipsでの議論など)

 昨日(12/10)、政策研究大学院大学で行われた第184回知的財産マネジメント研究会(Smips)に出席しました。
 今回、この研究会の中の法律実務(LAP)分科会のテーマが、「FinTech関連の知的財産について、ビジネスモデル特許の今後のあり方について」というものでしたので、ビジネスモデル特許(ビジネス方法特許)に関して、特許関連の方々(特許庁・弁理士・企業内の特許実務の方)のご意見が聞けそうと思い参加しました。

 まず、議論のとっかりとして、フィンテックで特許訴訟 中小向け会計ソフト巡りという先週の日経新聞の記事を元に、クラウド会計ソフトのfreee(フリー)が、同業のマネーフォワードが自動仕訳の技術の特許を侵害したとして差し止め請求訴訟を起こしたことが報告されました。そして、その特許の請求項をチェックするなど、議論を進めました。
 そのFreeeの特許とは、会計処理装置、会計処理方法及び会計処理プログラム(特許5503795号)という特許で、私は以前から知っていました。問題になるかもしれないと思っていた特許の1つで、私のeビジネスの教科書のビジネス方法特許の章で、金融分野の特許の例としてあげていました。

 その研究会では、侵害にあたるかは微妙なのでないか、というご意見の方が多かった感じです。今回の差し止め請求は、営業的な狙い(差し止めの可能性があると利用者がマネーフォワードを使うのを躊躇するのでは)といったご意見も出ました。
 オーガナイザーの特許庁の足立昌聡さんからは、米国ではビジネスモデル特許の出願が減少傾向という点、海外サーバの場合などの域外適用の問題、この分野での均等論適用の問題などのお話をお聞きすることができました。

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November 28, 2016

「Web-POS方式」という特許による特許権侵害訴訟

 最近のビジネス方法特許(ビジネスモデル特許)からみの企業間の争いについてです。今月、ドワンゴ、FC2を提訴 動画コメント特許侵害を主張という報道がありました。動画コメント関連特許を侵害されたとして、ドワンゴがFC2などを提訴した件です。
 このようなビジネス方法特許関連での提訴はあまり多くありませんが、この数年間で4件も特許権侵害訴訟が起こされた特許について、取り上げます。それは、発明の名称が「Web-POS方式」という特許による特許権侵害訴訟です。この特許の最初の出願は1998年(特願平10-13546)ですが、分割出願により第4世代まであり、成立特許数は計6件です。

Webpos

 特許権の売買があったらしく、第3世代の特許(第4491068号)の権利者は米国の「ジーピーシー アジア パシフィック アソシエイツ インク」となっています。その特許権の専用実施権者である「株式会社ジーピーシーコリア」が、2013年に千趣会と楽天に対して特許権侵害訴訟を起こしています。
 その後、第4世代の特許(第5097246号)の権利者である日本の「Ada ZERO株式会社」が、カクヤスとアスクルを訴えて、今年、知財高裁の判決が出ています。

 これらの裁判では、特許侵害は認められていません。理由は均等論の話になり、かなり専門的ですが、なぜ特許侵害にあたらないかは、日本弁理士会が出しているパテントという月刊誌の中の解説(2 均等侵害)などをご覧ください。

 裁判を嫌がる企業も少なくないので、警告されて少ない額の特許料であれば、支払ってしまった企業もあるかもしれません。特許権はあと2年位ですので、それまではこの特許による警告や訴訟は続くかもしれません。

 なお、小生は企業から特許権侵害に関する相談を受けることがあります。担当の弁理士さんが、このような技術分野にあまり詳しくない場合など、お手伝いできるかもしれません。
 他のソフトウェア特許の判例については、河野特許事務所-ソフトウェア特許判例紹介などをご覧ください。

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October 24, 2016

ヤフーの広告商品「PRオプション」の特許が成立

 先月、ヤフー(Yahoo! JAPAN)がショッピング事業専用の広告商品「PRオプション」の特許を取得というリリース発表をしました。ヤフーは国内で、年間に数百位の特許を登録しているのに、これまであまり特許成立について発表していませんでしたので、先週発行された特許公報(特許第6009485号)を見てみました。なお、公開公報は、配信装置、配信方法および配信プログラム(特開2015-179469)です。

 PRオプションを出稿する際、料率を指定しますが、特許によると、料率で優先度を決めるのでなく、商品価格を乗じた販売促進費で優先度を決めています(それ以外にも、検索連動型特許のようにCVRやCTRなども考慮されています)。例えば、同じ商品を、A店で10000円、B店で12000円で販売していた場合、A店が料率を8%、B店が料率を7% と指定すると、料率は低いのにB店の商品のほうが優先されることになります。こんな点に気を付けたほうがいいかもしれません。
 なお、この方法はヤフーの利益を最大化するのには適しているかもしれませんが、利用者側からみると少し疑問に感じます。CVRやCTRなども考慮されるので、結果としては安い方が優先されるのかもしれませんが。

 ヤフーが特別にリリース発表した理由ですが、ショッピング事業担当の執行役員が発明者の1人になっていたためかもしれません。

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July 20, 2016

レコメンド技術に関しての無効審判

 ビジネス方法特許(ビジネスモデル特許)に関して、国内で企業間の争いが表面に出てくるのは少ないですが、特許庁の口頭審理・証拠調べ期日 審判事件 平成28年7月分のページを今日たまたま見たところ、レコメンド技術に関して、無効審判が起されていました。

 サイジニアの特許レコメンド装置、レコメンド方法、レコメンド媒体の生産方法、及びプログラム(特許第5800926号)に対して、シルバーエッグ・テクノロジーが無効審判を起こしています。両社とも、レコメンド技術/サービスを提供する企業です。この特許は、紙にレコメンド情報を印刷する仕組みであり、パーソナライズカタログのようなサービスを可能にする仕組みです。パートナー制度も発表しています。シルバーエッグ・テクノロジーも、レコメンドのそのような活用場面を狙って無効審判を起こしたと思われます。または特許侵害がらみかもしれません。

 来週月曜(7/25)に経済産業省別館の第一審判廷で、この無効審判の口頭審理があるのですが、予定が入っていて聞きにゆけません。結果がでてから、詳しく解析したいと思います。

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