June 26, 2008

凸版印刷のマピオン特許の無効審判

 昨日午前、特許庁で行われた特許の無効審判の口頭審理を聴きにゆきました。2005年に、JAL対ANAのビジネス方法特許の口頭審理等に行ったことはありましたが、久しぶりで行きました。なお、私はときどき、特許庁の口頭審理のページを見て、ビジネス方法特許関連の口頭審理がないかチェックしています。

 昨日は、ビジネス方法特許の代表例として知られる凸版印刷のマピオン特許の無効審判に関する口頭審理でした。なお、マピオン特許については古谷国際特許事務所のページの解説などがあります。特許庁のビジネス方法の特許についてという資料の中でも例として紹介されています。以前より、Google Mapのようなネット上の地図に広告を載せる仕組みはこの特許を侵害するのではといったことが言われていましたので、いつかは問題になるのではないかと思っていましたが、遂に大日本印刷から無効審判をおこされました。

 昨日の口頭審理では、大日本印刷側は、その特許の出願以前に、パソコンマッピングの利用例の1つの営業支援システムで、地図からデータを入れている公知例があったり、住宅地図に対応した電話帳データベースに広告の情報が含まれている公知例があることから、このマピオン特許のほとんどの請求項は、「容易に思いつく」レベルであるとして、「進歩性」を否定して取消を求めていました。昨日聞いた限りでは、マピオン特許(と分割により後に追加で成立した特許)の一部の請求項は取り消される(つまり、権利範囲が狭くなる)可能性がありそうです。

 このようなビジネス方法特許は、もともと進歩性が弱いものが多いため、新たなビジネスモデルを構築しえた、という面の効果をもっとアピールしたほうがいいと感じました。

 近況ですが、6月は、日々の講義以外に、2つの委員会活動、学会発表2件、高校訪問、オープンキャンパス、他大学の講義などで、目が眩むような忙しさです。7月中旬までもう少し、しんどそうです。

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March 26, 2008

JASRACシンポジウム 動画共有サイトに代表される新たな流通と著作権

 昨日(3/25)午後、JASRACシンポジウム 動画共有サイトに代表される新たな流通と著作権を聴きに行ってきました。

 2007/11/28の日経新聞「著作権攻防 新ルールを探して(中)」という記事に、動画共有サイトに対して「ここまで普及すると、力で阻止するのが利用者、権利者のために良いとは思えなくなった」というJASRACの菅原常務理事の言葉が出ていたので、JASRACの方針をもう少し知りたくて、聴きに行きました。

 プログラム第1部の「著作権行政の現状と課題」(吉田大輔 文化庁長官官房 審議官)の講演の中では、最後のスライドで「排除」の論理から「共生」「活用」の論理へという方針のような言葉で締めくくっていたのが印象的でした。文化庁も、ネットでの文化の共有に熱心な姿勢が分かりました。また、3月13日の、知的財産戦略本部会合(第19回)で、「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」の設置が決まったという話がありました。その専門調査会では、「課題解決に向けた立法的措置と契約による措置等の役割分担」や「ネット上の多数の創作者の関与により形成されるコンテンツの権利関係」(たぶん、Wikipediaのような創作の権利関係)などが検討されると予想されている、とのこと。この2つは、ネットからみの著作権問題では最重要な問題だと私は思います。

 プログラム第2部の「パネルディスカッション:テーマ=動画共有サイトに代表される新たな流通と著作権」については、既にITmediaの記事Internet Watchの記事がもう出ています。詳細はそれらをご覧ください。私が一番興味を感じたのは、ドワンゴ川上会長の「現状、ネット業界から、コンテンツ業界が儲かる仕組みを提案できていない」という話でした。「コンテンツ業界が儲かる仕組みまで考えるべきなのだが、それができる余裕はない」というような心境で言ったのだと思われます。ネット業界は利用者指向でないと生き残れませんので、こんな状況がしばらく続くのでしょう。「(制作者が) ネットに出すコンテンツはテレビとは異なるものになるはず」というような話もありました。「テレビとの役割分担がはっきりしてくるはず」というような意味で言っているようでした。この辺りは、動画共有サイトの存在意義に関わる話で、興味深かったです。なお、JASRACから昨年7月に動画共有サービスに対する利用許諾条件が示されていますが、ドワンゴはまだ契約していないとのことでした。

 JASRACは、動画共有サイトで流された音楽の著作権料さえ徴収できればいいのでしょう。JASRACの菅原常務理事は、動画共有サイトについて、「コンテンツの集め方が違うだけ」「社会的ニーズがあるのだろう」と語っていました。そのように、このシンポジウムでは、JASRACは動画共有サイトにある程度の理解を示しているように感じられました。(テレビ局とはかなり立場が違うようです。)

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January 22, 2008

2007年後半に成立したビジネス方法特許より

 2007年に後半に成立したビジネス方法特許(ビジネスモデル特許)の中から、気になったものを上げてみます。

 まず、サンプル百貨店を運営するルーク19とその社長(渡辺 明日香)の名前で出願されていた「試供品提供管理システム及び、そのプログラム」(特許3999260) が成立しました。ユーザに配布する試供品の点数を管理し、試供品点数を試供品情報とユーザの属性のマッチングに応じて変動させるような仕組みです。

 Paypal(ペイパル インコーポレイテッド)の特許が、3つ成立しています。CtoCの支払いに関する仕組みのようですが、エスクローサービスに関するものもあるようです。
 ・「インターネット上で商品及びサービスを購入するためのコンピュータ化された支払いシステム」(特許3970324)
 ・「取引を容易にする方法」(特許3970869)
 ・「複数のユーザーを有するネットワーク上で金の支払いを処理する方法」(特許3970868)

 オークション関連では、BtoCのオークションサイトを運営するオークセールの「オークションシステム」(特許3974381) が成立。予測不能数というものを求め、予測不能数に基づいて加算金額を算出するという仕組み。

 オーバーチュアに関しては、「サーチエンジンアカウントの監視」(特許4015509)と、「協調フィルタリング及びウェブ・スパイダリングを用いる検索語の推奨」(特許3955256) が成立。特許第3676999号が検索連動型広告で基本特許と思われますが、既に成立している特許第3860036号に加え、これらの2つの特許も成立させて特許網を広げています。

 NTTのパーソナライズ/レコメンデーション関連の特許が3つ成立しています。
 ・「個人化広告の提供情報及び個人化広告提供装置及び~」(特許4023273、日本電信電話)
 ・「相関アイテム検出方法および装置、お薦めアイテム紹介方法および装置、~」(特許3984430、日本電信電話)
 ・「お薦めアイテム紹介方法、~」(特許3974407、日本電信電話・東日本電信電話)

 オンキヨーの「ネットワークAVシステム」(特許4026668) は、デジタルコンテンツをアクセス・ダウンロード・管理できるステレオHDメディア・コンピューターに関する特許と思われます。

 業務システムでは、
 ・ダイキン工業:「部品管理システム」(特許第3964151号) --- e-SWATに関する仕組み?
 ・江崎グリコ:「商品ボックス管理装置、商品ボックス管理システムおよびプログラム」(特許3986057)--- オフィスグリコに関する仕組み。日経情報ストラテジー2007年6月の記事に特許出願中と書かれていましたので、それが成立したようです。

 その他では、次のような特許も成立しました。
 ・楽天:「広告送信システム」(特許3984473)
 ・ぐるなび:「飲食店レイティングシステム」(特許4005342)
 ・日本音楽著作権協会:「作品登録方法、作品登録装置及びコンピュータ・プログラム」(特許3874271)

 これらの特許情報は、私が管理するホームページに適宜追加してゆく予定です。

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September 28, 2007

研究・技術計画学会で発表する論文が完成

 10月27~28日に亜細亜大学で行われる研究・技術計画学会の第22回年次学術大会で発表する論文の原稿を本日提出しました。4ページですが、新しい知的財産権を提案するため、その必要性を訴えるのに結構大変でした。サービスイノベーション促進のための新たな知的財産権の必要性と要件という論文です。

 内容としては、7月に発表した日本知財学会の学術研究発表会の論文の続編のような形で、昨年、イノベーション25に提案した元祖権について、イノベーション政策の面から必要性を主張した論文です。

 私は、10月28日午後に発表の予定です。

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September 13, 2007

知的財産を担保にした融資

 先週土曜の日経のサイトの商工中金、ビジネスモデル特許担保に融資 岐阜の花卸会社にという記事が、特許/知財関連のブログで少し話題になっています。「全国どこでも宅配トラストシステム」という事業の仕組みを出願したビジネスモデル特許(ビジネス方法特許)を担保に融資したというニュースです。

 約1年半前にまとめましたように、成立した特許、ソフトウェア著作権、商標権・ドメインネーム所有権というような知的財産を担保にした融資は、既に行われています。

 しかし、今回融資を受ける岐阜の花卸会社(ジャパンプランツ)の特許は出願しただけで、まだ成立していないものです。それを担保にするのはいかがなものか、というような意見があります。成立前の特許は、拒絶査定(かつ審判・再審・裁判でも敗れた場合)を受けてしまうと権利は全く無くなってしまいますので。

 商工中金のニュースリリースをよく読むと、出願中の特許だけでなく商標権も担保にしているようです。それでも、この場合はソフトウェア著作権あたりも担保にとっておいたほうがよかったのではないかと思います。そのほうが、拒絶査定になっても資産が残ります。ただ、商工中金は、ビジネスモデルとして他社との差別化が図られているといった「知的資産」の面を評価して融資をした、というのが実状かもしれません。

 また、日経の記事の中に「この仕組みがビジネスモデル特許を取得できると判断し、融資を実行」とありますが、だれが判断したのか気になります。商工中金の組織の中に特許に詳しい人がいるのでしょうか?または、弁理士に判断(鑑定)してもらったのでしょうか?少し気になりました。

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July 06, 2007

東京都民銀行が三菱東京UFJ銀行を特許侵害で提訴

 今週月曜(7/2)、東京都民銀行が三菱東京UFJ銀行をビジネス方法特許(ビジネスモデル特許)侵害で提訴したことが明らかになりました。朝日新聞や読売新聞で報じられました。前給という給料前払いサービスで実施されている仕組みの特許を侵害されたとのこと。

 2005年12月に、このブログの金融関連のビジネス方法特許(2)で取り上げましたように、2005年6月に特許登録された東京都民銀行の「給与支払いシステム」(特許第3685788号) という特許は、前払いといっても、既に働いた分を給料日より前に払うというもの。特許明細の内容を分かりやすくまとめてみると、次のような感じ。

労働者が雇用者に対して労働を提供すると、労働の対価としての給与が日々発生し蓄積されていく。銀行コンピュータの記憶装置が記憶する給与データ管理ファイルには労働データに基づき順次算出された労働者の任意タイミングにおける累計給与データ及び労働者に資金交付された金額データが格納されている。給与日前に労働者から資金が要求されると、労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出し、その資金の金額と残余の給与金額とを大小比較し、給与金額の範囲内である場合には、労働者の口座に対してその資金の金額を振込処理を実行するとともに、雇用者の口座に対してその資金の金額の引落処理を実行。

 その後、分割出願(つまり同じ内容の明細書で違う請求項)の特許が2006年9月に登録されました。(特許第3857279号)

 三菱東京UFJは同じような従業員への前払い代行サービス(仮払いASPサービス)のSOッCA(ソッカ)を提供していて、東京都民銀行はそれが自分の特許を侵害しているとして提訴しました。

 東京都民銀行の特許の請求項を見ると、前払い代行サービスで基本的な仕組みを権利化しているようにも見えます。訴えたくなる気持ちは分からなくもないです。しかし、請求項の文章は長い(侵害を問うのに多くの構成が必要)ので、どこかで回避できるかもしれません。例えば、働いた分よりも多く支払うことができるようにすれば回避できるでしょう(この回避方法はまずいかも)。

 朝日新聞によると、損害賠償だけでなく使用差し止めも求めているとのこと。きっとビジネス的にバッテングすることが多いのでしょう。それで、何とか特許の優位性を活かしたいのだと思います。

 銀行関連のビジネス方法特許は、いろいろと成立しています。これからも、訴訟などがありえます。

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July 03, 2007

Googleニュースに関する特許出願が2件公開

 先週、Googleニュースに関する特許出願が2件、日本で公開されました。PCT出願(国際出願)されたものです。ただし、日本ではまだ審査請求はまだのようなので、成立するにしてもまだ先でしょう。

 約2年前に、Google Newsに関する技術が特許出願されているという話がCNETのニュースなどにありました。なので、やっと日本で公開されたという感じです。

 注意)以下の特許のダイレクトリンクをクリックする前に、一度特許電子図書館の公報検索画面ページを表示させる必要があります (クッキーに覚えさせるため)。

 ニュース記事のランク付けを向上させるためのシステムおよび方法(特表2007-517269)には、主にニュースソースの品質を決定するための方法が開示されています。ニュースソースのための情報源ランクを決定するために、次のメトリック値を使用。
  ・第1の期間中にニュース ソースによって産出された記事の数
  ・ニュース ソースによって産出される記事の平均長
  ・ニュース ソースが第2の期間に産出する重要な報道の数
  ・ニュース 速報のスコア
  ・ニュース ソースに対するネットワーク・トラフィックの量
  ・ニュース ソースについての人の意見
  ・ニュース ソースの貸出統計
  ・ニュース ソースに関連する人員のサイズ
  ・ニュース ソースに関連する局の数
  ・ニュース ソースに関連する一群の記事に最初に登録された事業体の数
  ・ニュース ソースによる報道の幅広さ
  ・ニュース ソースへのトラフィックの発信元となる諸国の数
  ・ニュース ソースに使用する文体

 というように、かなりいろいろな面からニュースソースを評価しています。ただし、これらのメトリック値の効果的な重み付けについては、明確に書かれていません。企業秘密のようです。

 もう一つの集計されたニュースコンテンツを個人化するためのシステムおよび方法(特表2007-517316)は、Googleニュースのカスタマイズ機能に関する特許出願のようです。

 ニュースソースだけでなく、各ニュースに関してのランク付けについても、Googleから特許出願があるのかもしれません。分かり次第、追加します。

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July 02, 2007

日本知財学会の学術研究発表会で発表してきました

 昨日、東大(本郷)にて行われた日本知財学会 第5回年次学術研究発表会にて、サービス・イノベーションのための知的財産権の在り方に関する考察と提案という論文の発表をしてきました。PowerPoint資料は、こちらです。

 サービス・イノベーションを促進するための知的財産権として、独占はしないが営業的な優位となる権利「元祖権」の提案をしました。イノベーション25へ提案するために新たな知的財産権を考えたもので、以前このブログでも概要を述べました。

 昨日の学会では、賛意の御意見もいただきましたが、「権利にする必要はあるのか?民間で決めるだけでいいのでは?」といった御批判もいただきました。そのような御批判をよく吟味した上で、10月に行われる研究・技術計画学会の年次学術大会(亜細亜大学にて)で再度発表する予定です。

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June 29, 2007

パブリックコメント制度に関する問題点

 知的財産推進計画2007に関連した話題ですが、日経IT-PLUSのサイトに先週掲載された「アップル」名乗るパブコメが提起した2つの問題という岸博幸氏のコラムがネットで話題になっています。

 私的録音録画補償金制度などの著作権制度に関しての岸博幸氏の意見については、池田信夫ブログ小倉弁理士のブログを見てもらえばいいかと思います。私は、日本知財学会に入会していて、7月1日には学会発表もしますが、著作権よりも特許・イノベーションのほうが専門ですので、著作権制度の問題については、意見を控えたいと思います。今回、私はパブリックコメント制度について、少し考えてみました。
 
 私も以前、パブリックコメントを提出したことがあります。私が提出したパブリックコメントのフォーマットでは、「氏名」の欄に、「企業・団体の場合は、企業・団体名、部署名及び担当者名」と注意書きがあるだけでした。なお、公開する際は、担当者名は外して公開しているようです。パブリックコメントは、「意見提出期間を定めて広く一般の意見」を求めるものです。社印などは不要ですし、組織でオーソライズされたオフィシャルな見解を出すようには特段定められていないようです。ですので、ある組織の担当者が自分の意見を、所属する組織の名前で出すことを禁止してはいないと解釈されます(道義的には、組織内でオーソライズされた見解のほうが望ましいでしょうが)。組織内で意見調整したり、トップに了承を求めたりするのも面倒です。
 実は、私が以前提出したパブリックコメントでも、学科の名前で提出したのですが、時間がなかったので(学科会議は月に1回であるため)、学科としての正式な了承を得ずに提出しました。事後に口頭で話した程度でした。

 ですので、例のパブリックコメントはアップルジャパンからの意見として公開されていますが、アップルジャパンの一社員が個人的な意見(または、部署のレベルの意見)として提出したのかもしれません。アップルがノーコメントだからといって、「なりすまし」と騒ぐのは大げさだと思います。パブリックコメント募集元が、必要に応じて(その企業から出るはずのない変な意見が出された場合など)、提出された意見の担当者に本人確認すればいいだけです。そんな手間とも思えません。または、提出された時点で、担当者に提出受付確認メールを送るといった方法もあります(「貴殿が提出していないようでしたら、ご返事ください」という文面付きで)。

 岸博幸氏は、官僚出身だけあって、性悪説で見てしまうのでしょうか?元官僚の方には、性善説に立脚するWikinomicsのようなことは理解できない人かもしれません。また、産業振興という観点から、レコード会社の事業を心配してしまって、著作者個人のことはよく見えないのかもしれません。また、岸氏は、アップルのパブリックコメントは「常識ではありえない一方的批判」と言っていますが、この辺りも官僚的な意見だと思います。アップルの意見はある程度筋が通っています。しっかり言っているのは気持ちがいい位です。弁理士の方でも、意見書にこの位しっかり述べる人はいます。岸氏は政府・官僚に対して一企業は「へりくだる」のが当然、とでも言いたいのでしょうか?

 岸氏は、パブリックコメントを募集する際、もし「なりすまし」のコメントがきたら、ということを心配されています。しかし、私がもっと問題だと感じるのは、パブリックコメントに対する回答の問題です(一部変更:2007/6/30)。
 意見公募手続等の概要によると、行政手続法の【結果の公示等(第43条)】には次のように定められています。

・命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、(1)命令等の題名、(2)命令等の案の公示日、(3)提出意見、(4)提出意見を考慮した結果及びその理由、を公示しなければならない。
 一般に、「(3) 提出意見」は公開されています。しかし、知的財産推進計画2007では、「(4) 提出意見を考慮した結果及びその理由」を公開してはいません(一部変更:2007/6/30)。  どう検討されたかは、パブリックコメントを出した企業・個人にとって大きな関心事です。1つ1つ回答してくれとはいいませんが、似たような意見が多く出ていた場合には、答えるのが筋でしょう。例えば、知的財産推進計画のパブリックコメントでは、個人からの意見としてJASRACを批判する意見が多く出されていました。このような意見に対して、知的財産戦略本部は考慮したか否かという検討結果を何も答えてはいません。それでは、パブリックコメントを出した人達にはとっては納得がいかないでしょう。単に「ガス抜き」しているようです。

 このように、パブリックコメント制度では、【結果の公示等(第43条)】の (4) の公開を徹底するべきです。そうでないと、この制度の意味はとても弱いものになります。

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June 06, 2007

知的財産推進計画2007より

 先週木曜(5月31日)に、政府から知的財産推進計画2007が発表されました。

 構成は、
  第1章 知的財産の創造
  第2章 知的財産の保護
  第3章 知的財産の活用
  第4章 コンテンツをいかした文化創造国家づくり
  第5章 人材の育成と国民意識の向上

 今回は、第4章が特徴的です。この中で、テレビ番組や映画などのデジタル映像に関し、ネット配信などの二次利用を容易にするため、2年以内に新たな法律を整備する方針が出されたことが、Business.iなどで大きく報じられています。

 また、同時に公表された「知的財産推進計画2006」の見直しに関する団体からの意見の中のアップルジャパンの意見(パブリックコメント)が話題になっています。
 アップルジャパンは、科学的且つ客観的証拠に基づかない理由に依る私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべきである、と主張しています。そのパブリックコメントの中では、文化庁の著作権課長の責任をも追求していて、かなり攻撃的です。CNETで報じられているためか、こちらのほうがブログでは話題になっています。「知的財産推進計画 アップル」とブログ検索すると、話題の広がりが分かります。
 また、IBMは、特許の質の向上や、オープンソースを特許訴訟から保護するべき、といったことをパブリックコメントしています。

 それ以外に、私が関心を持った点は、次の項目。

第1章 知的財産の創造
3.大学、研究機関において知的財産を活用し、創造を促進する
(5)特許情報等を活用する
②特許情報等の活用による研究開発の戦略化を促す
ⅲ)研究テーマの選定等、研究で使用するための使いやすいパテントマップ作成のためのソフトを2007年度中に開発し大学等に提供する。また、パテントマップを使えるように開発したeラーニングソフトを普及する。(P.34)

 パテントマップ作成のためのソフトを公開してもらえるのはありがたいです。

第2章 知的財産の保護
3.利用者の利便性を高める
(1)特許電子図書館等を通じた産業財産権情報の利用環境を整備する
b)2007年度中に、産業財産権情報をインターネットを通じて無料で提供する特許電子図書館(IPDL)に全文テキスト検索機能を追加する。また、2007年度以降、現在大学等に限って提供されている特許情報の固定URLサービスについて、要求されるシステム性能等に関する実証調査を行った後、その提供範囲を一般にも順次拡大する。(P.42)

 固定URLサービスを早く一般にも拡大してもらいたいです。

第4章 コンテンツをいかした文化創造国家づくり
Ⅰ.世界最先端のコンテンツ大国を実現する
1.デジタルコンテンツの流通を促進する法制度や契約ルールを整備する

(1)ビジネススキームを支える著作権制度を作る
⑤ネット上のビジネスマーケットを構築する
2007年度中に、コンテンツ製作者が企画提案や作品等の情報提供を行うとともに、国内外の事業者や配信事業者、ファンド等がこれら情報を入手し、コンテンツ配信ビジネスにつなげるためのネット上でのビジネスマーケットを構築する。(P.91)

(3)一般ユーザーがコンテンツを利用する環境を充実する
①ネット検索サービス等に係る課題を解決する
情報化時代におけるネット検索サービスが、国民生活の利便性の向上のみならず、産業政策や文化政策上重要であることにかんがみ、ネット上での検索サービス等に伴うサーバーへの複製・編集等や検索結果の表示に関する著作権法上の課題を明確にし、所要の法整備の検討を行い、2007年度中に結論を得る。また、新たなコンテンツへの検索・解析技術の開発・国際標準化や適切な保護ルールの検討などを2007年度から開始する。(P.94~95)

 (1)⑤のビジネスマーケットはどんなものでしょうか? 気になります。また、(3)①は、Google News問題のようなことでしょう。確かに、日本でも、著作権法上の課題の明確化が急がれます。

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May 10, 2007

IBMの特許ポートフォリオをAmazonが評価して特許侵害訴訟和解/クロスライセンス締結

 Amazon.comとIBMが、EC関連の特許侵害訴訟で和解し、クロスライセンスを結んだことが、Internet Watchや、CNETなどで報じられました。

 IBMのリリース文によると、

Scott Hayden, Amazon’s VP of Intellectual Property, said: “IBM’s patent portfolio is the largest and strongest in the IT industry. Our license to its portfolio, and specifically to its Web technology patents, gives us greater freedom to innovate for our customers.”

 この特許侵害訴訟和解/クロスライセンスでは、次の3点がポイントだと感じました。

[ポイント1] 
 AmazonがIBMの特許ポートフォリオを評価(「IT業界で最大で最強」と表現)したことが和解につながっているようです。なお、このリリース文を和訳した記事のほとんどが、patent portfolioを「特許群」と訳しています。しかし、IBMはEC関連の特許を単に寄せ集めたのでなく、「ポートフォリオ」のように組み合わせて「資産化」しているのです。この辺りがIBMのすごいところです。

[ポイント2]
 Amazonは、最終的には「顧客」のために自らが革新(innovate)する自由を選んだということ。やはり、Amazonの「顧客指向」という企業姿勢から、IBMの特許を回避するためにEC機能をレベルダウンするなどして顧客に不自由をかけることを避けるために、泣く泣く判断したのでしょう。

[ポイント3]
 IBMとしては、金額よりもAmazonと和解したことを公表できたことで、その他のネット会社との交渉もやりやすくなるはずです。

 Amazonは技術に熱心なこともあり、このような積極的な判断ができたのだと思います。

[追記]
 ところで、4/30に米連邦最高裁、特許の「自明性」を判定する法的基準の緩和を命じるという判決をした(CNET)と、ニュースで報じられました。一般に、「KSR事件」と呼ばれる裁判の判決が出たのです。この判決により、米国でも、特許成立のための「自明性」(日本では進歩性と呼ばれる) の判断が厳しくなると考えられます。弁理士の方々や米国へ特許出願している企業にとっては、大きなニュースです。しかし、もともと日本では、米国よりも進歩性の判断が厳しかったので、日本への直接的な影響はないでしょう。「KSR事件」でブログ検索すると、KSR事件に関する弁理士等の方々のブログを多く見つけられます。

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April 18, 2007

米国のユタ州で検索広告規制法が施行(電子商標登録所の設置)

 あまり話題になっていませんが、米国のユタ州で検索広告規制法が施行された、というニュースが先週報じられました。ユタ州の新しい法律では、ライバル企業の社名や製品名に関連した検索広告を表示することが禁止され、Googleはこの法律に異議を唱えている、とのこと。ユーザーがある企業の社名や製品名を検索した時に、その競合企業がユーザーの注意を引くことを防ぐための電子商標登録所が設置されるというもの。

 1年ほど前のエントリーにも書きましたが、検索連動型広告での商標に対する扱いが問題になっています。パテントサロンのトピックスに、関連するニュースがまとまっています。

 先週のニュースの中で、ユタ州の検索広告規制法に反対する側からは、次のような理由があがっています。
 ・比較広告から恩恵を得られる消費者に害をもたらす。
 ・消費者は検索している会社以外の企業が提供している、もっとお得な類似の製品を見つけられないかもしれない。

 しかし、そのような理由よりも、他社の商標で検索する利用者を巧みに自社のサイトに誘導しようとする手口を許さないほうがいいと、私は思います。

 ところで、病気治療のため、今月末位までブログの更新ができそうにありません。ブログへのコメントへのリプライやeメールへのご返事もできないかもしれません。ご了承願います。

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April 07, 2007

動画投稿サイトのもう一つの著作権問題

 動画投稿サイトへ、個人がプライベートで録画したテレビ画像が投稿されるとか、無断でCDの音楽がBGMに使われる、といった著作権問題が話題になっていますが、もう一つ音楽自体の著作権の問題があります。

 大部分のロック/ポピュラー音楽や、一部のクラシック音楽では、著作者の死後50年に達していないので、著作権が保有されています。しかし、YouTubeなどには、個人がそのような既存の音楽を演奏して市販のビデオカメラで撮影した画像が多く投稿されています。クラシック音楽でも、Samuel Barbar、Shostakovich、Sibeliusなど、まだ著作権が残っている作曲家の曲を個人(アマ演奏家)が演奏した画像を多く見つけることができます。

 AmebaVisionでは、著作権の考え方のページの中で次のような注意事項を載せています。「動画のアップロードに際しては、音楽著作物も考える必要があります。音楽の利用はその作詞者と作曲者の両者の同意を得たものでなければ使用することができません。」
 しかし、著作権が譲渡されている場合があるので、「作詞者と作曲者の両者の同意」というよりも、「著作権者の同意」のほうがいいでしょうし、JASRACが著作権を預かっている音楽ならばJASRACに申し込めばいい、というような具体的な書き方のほうがいいでしょう。なお、替え歌の場合には、著作者人格権に関わりますので、作詞者の同意が必要です。

 JASRACのサイトのインタラクティブ配信での音楽利用の契約方法では、商用と非商用で扱いが変わってきます。ここで、動画投稿サイトに投稿されたアマによる音楽演奏の動画の扱いが問題になります。投稿した個人にとっては非商用ですが、動画サイトは商用です。ですので、商用か非商用かの扱いがはっきりしません。現実的には、非商用であれば、商用よりも厳しく取り締まられることはないでしょう。しかし、前回のエントリで述べたAmebaVisionのように、レベニューシェアの仕組みによって投稿者に広告費が還元されるようになれば、投稿した個人にとっても商用になり、JASRACなどを通したインタラクティブ配信の登録が強く求められるでしょう。

 なお、JASRACのFAQにあったのですが、海外サイトで見つけた日本のアーティストの音声データにリンクを張って自分のホームページで聞けるようにするのはダメ、というのがJASRACの見解です。ですので、YouTube等のコンテンツを自分のHPやブログ内に張るのは注意すべきです。

 ところで、一昨日の夜、クラシック(室内楽)のコンサートを横浜まで聴きにいったので、聞きにいったクラシックコンサートの記録に追加しました。

[追記] (2007/9)
 7月に正式オープンしたYahoo!ビデオキャストでは、このエントリで指摘した音楽著作権の問題をクリアしようとしています。JASRACと歩み寄る動画投稿サイトという日経パソコンの記事に、その辺りが詳しく解説されています。

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December 20, 2006

Googleに特許検索を独占させてしまうのは危険

 先週、Googleは、米国特許を対象とした特許検索サービスとして、Google Patent Searchを始めました。この件については、ITmediaのニュースCNETのニュースパテログなどで、報じられています。

 使ってみた感触としては、米国特許商標庁(USPTO)の特許検索ページと比べて、ずっと使いやすいものでした。

 Google Patent Searchでは、検索結果から選ぶと、まず、概要・請求項・図(最初は3個)・参照特許を1つの画面で見ることができます。他の特許からの被参照情報も載っていますが、ちょっと少ない感じです。ちなみに、USPTOの特許検索ページでは、各特許の最初の表示画面はテキスト表示で、図は出てきません。検索結果の画面の「Images」のボタンを押して始めて表示されます。

 また、Descriptionを含む全文(明細書イメージ)を読むための画面では、Ajaxを使ったなめらかなスクロールが可能です。"Search within this patent" ができるのも便利です。検索語は、検索結果の明細書の上にカラーで強調表示されます。

 ダイレクトリンクも可能です。例えば、Method and system for managing attraction admission (U.S.Pat.No. 6,173,209)は、ディズニーランドのファストパスの仕組みと思われる特許へのダイレクトリンクです。(これは、日本でも昨年特許化しています。特許第3700833号。私の「eビジネス」の授業の中で情報システムの特許の例としてあげました)

 Googleは、他の国でも、同様な特許検索サービスを行う計画とのことなので、日本の特許の検索もサービスされるようになるのでしょう。日本の特許庁の特許電子図書館のサービスは、最悪(ユーザインタフェースの悪さ、メンテナンス期間の多さ・長さなど)なので、日本でサービスされた場合には、多くの人は特許電子図書館よりもGoogleのサービスを使うようになるでしょう。大企業のメーカー等でよく使われている有料の特許検索サービスも大打撃でしょうし、単純な特許検索機能はサービスをやめてしまって、特許マップ機能といった高付加価値の機能だけを提供するところも出てくるでしょう。

 使ってみていて、この検索サービスの検索結果のランキングの求め方(どのような順番なのか)について、疑問を感じました。About Google Patent SearchのページのFAQを見ると、"We use a number of signals to evaluate how relevant each patent is to a user's query" と書かれていました。ページランクのように特許間のリファレンス関係を使っているかと思いましたが、やはり、そういうことはしていないようです。論文と違い、米国特許での他特許のリファレンスは弁理士が調べて加えていたりするので、あまり参考にならないでしょう。

 Googleが、どのようにビジネスにつなげるかも興味深いところです。単純に、特許検索の結果画面に検索連動型広告を出すだけとは思えません。多くの人が参照している特許を持つ企業や発明者について、一般の検索でのページランクを上げるようなことをするかもしれません。そのように考えてゆくと、もしもGoogleが特許検索をほぼ独占してしまうと、とても恐ろしいことになると気づきました。特許は、一般のネット情報よりも、専門的でありビジネス上で重要な情報であるためです。一般のネット情報の検索ログを集積したデータから「一般大衆の興味」に関する情報を抽出することができますが、特許の検索ログを集積したデータからは「産業上の関心」に関する情報を抽出することができるのです。

 以前(たしか1997年)、一時、IBMがネットで無料の特許検索機能を提供しました。その際、他のコンピュータメーカーは、警戒して、会社からそのサービスを使うことをためらった、と言われます。なぜなら、その企業がどの特許に関心があるかをIBMに感づかれてしまう危険性があるためです。IPアドレスでアクセス(検索)した企業を調べることができるため、参照状況から関心度をうかがえるためです。

 それと同じように、Google Patent Search が広く使われるようになった場合には、Googleは、どの国のどの企業がどの特許に関心があるかが分かってしまいます。Googleは「悪いことはしない(Don't be evil)」と言っていますが、このような情報を「悪用」できます。例えば、どんな技術が期待されているかがこっそり分かるため、期待されている技術を持つ会社へ先回りして投資することで、大きな利益を得ることができるでしょう。また、どの国がどの技術分野に関心があるかもリアルタイムで分かるようになるので、国際間での技術の売り込みなどでの交渉に関わることができるようになるでしょう。Google自身ではしなくとも、そのようなことを行うための情報を高く売るかもしれません。そのように、特定の民間企業に、幅広い業種の国際的な「産業上の関心」に関する情報が集まってしまうのは、とても危険なのです。

 このような理由から、Googleに特許検索の独占を許してはならないと強く感じています。

 日本で、情報大航海プロジェクトが政府中心で進んでいます。しかし、私は、政府には一般の検索をターゲットにはせずに、特許検索や論文検索だけに注力してもらいたいと思います。特許検索や論文検索は、検索ログがとても大きな意味を持ち、国の科学技術政策やイノベーション促進の政策に関わるため、オルタナティブの提供の意味は大きいです。特許検索や論文検索だけは、Googleのような民間企業に独占されないように、必死で取り組むべきだと思います(規制するのもおかしいですので)。

[追記]
 弁理士の的場成夫さんのブログによると、既に「とある企業では、会社のアドレスからのアクセス禁止 の指令が出ているとのこと」です。

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December 03, 2006

イノベーション25に意見を送りました

 先月14日のエントリで示しました「元祖権」のアイデアを、本日、イノベーション25の意見募集のページから送信いたしました。次のようにまとめました。

 大学で教鞭を取っている者ですが、サービスイノベーション(流通も含む)について、本格的な取組みを取ることを提言いたします。日本では、サービス/流通の分野でのイノベーションは、欧米よりも大きく後れをとっているためです。ただし、長期的な視野でみると、医薬・工学・ITのような理系の技術革新とは、異なる促進方法を考える必要があるでしょう。
 そこで、新たな知的財産権の導入を提唱いたします。 これは、単に重点分野にお金をつぎ込むよりも、イノベーションが自然と促進されるための制度による効果がずっと大きいと思われるためです。今日、サービス/流通のイノベーションを促進する制度として、特許では保護できる範囲が狭く不十分です。これは、ビジネスモデル特許の審査で「発明ではない」(「自然法則を利用」する要件を満たさない)として拒絶される例が多いことから分かります。特許制度では、技術の面が伴わない仕組みやビジネスモデルは、いかに革新的であっても権利化できないのです。
 そのため、サービス/流通の仕組みやビジネスモデルでは、「自然法則を利用」しなくても権利化できる制度が望まれます。ただし、サービス/流通では「独占」は望ましくないため、特許のように独占するのではなく営業的な優位をもたらす制度を考えるべきです。なお、知的財産戦略本部は長期的視点で考えていないため、知的財産権の見直しまで行おうとはしていないようです。
 具体的には、「元祖権」(仮称)を提案します。この権利は、特許と同じように新規性や進歩性(容易に思いつかない)が審査されますが、「自然法則を利用」という要件は緩和します。元祖権を取得できた場合には、「自分が元祖」と正式に主張できるだけでなく、他社が真似して同じサービスを実施する場合には、元祖権を持つ会社が「元祖」であることとその問合せ先を、真似した会社のカタログやWebページ上に表示することを義務付ける制度です。独占やライセンス料はありませんが、他社が真似した場合に、元祖権を持つ企業が必ず営業的な効果を得られるようにする制度である。また、商標登録していれば、第三者に対しても、商標表示の際に元祖の表示も義務付けます。

 詳細は、小生のブログに載せております。
  http://hatakama.cocolog-nifty.com/strategicit/2006/11/post_5f13.html」

 今後、詳細を詰めて、来年度の日本知財学会の学術研究発表会(6月頃開催)あたりで、具体的な提案を行いたいと考えます。

 これから今年の授業期間が終わる18日までは、忙しい状況が続きそうです。残りの授業の準備だけでなく、ゼミ生4年の卒論の指導、ゼミ生3年の就活の相談、1-2月に行う集中講義の準備などです。そのため、18日位まではブログの更新ができそうにありません。失礼します。

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November 14, 2006

サービスやビジネスモデルの分野のイノベーションを促進するための新しい知的財産権の提案

 安倍総理大臣は、日本社会への新たな活力となり、経済成長に貢献するイノベーションの創造に向けて、イノベーション25という長期的戦略指針を策定しようとしています。安倍総理大臣の所信表明演説で、20年後を見据えて経済成長に貢献する分野を戦略的に伸ばしていく方針の1つとして打ち出したものです。

 高市イノベーション担当大臣からのメッセージの中に、『私たちが取り組む「イノベーション」は、単なる「技術革新」という狭義の概念ではなく、広く社会のシステムや制度をも含めた「革新・刷新」であります』とあります。また、構成メンバーに、アートコーポレーション(アート引越センター)の寺田千代乃社長が含まれています。そのため、サービスやビジネスモデルの面のイノベーションについても検討の中に入れてもらえる可能性があります。そのように、いい機会ですので、提案をしてみたいと思います。イノベーション25のサイトでは、12月末まで広く意見を募集しています。また、日本学術会議のイノベーション推進検討委員会でも、学術関係者を対象に意見を募っています。

提案の背景
 サービスやビジネスモデルは、特許としては消極的に考える人が多い。また、サービスやビジネスモデルの独占はふさわしくないと考える人が多い。特許の要件には「自然法則を利用」したものという前提がある。ビジネス方法特許のように、IT活用の面の工夫があれば特許化できる(ただし、特許査定率は極めて低い)が、純粋なビジネスモデルでは特許にできない。しかし、革新的なサービスやビジネスモデルを一番最初に考えた人・会社に対して何らかの恩恵を与えるべきである。何らかのインセンティブがあったほうが、革新的なサービスやビジネスモデルの創出を促進できるためである。
 著作権では、オープンソースやCreative Commonsといった新たな考え方が出てきている。ソフトウェアや作品の著作権の主張を弱め、共有と協調を進めることで、より価値の高いものの創出につなげる考え方である。そのため、オープンソースやCreative Commonsのように非独占の概念を取り入れながらも、革新的なサービスやビジネスモデルを一番最初に考えた人・会社に対して何らかの恩恵を与え、かつ、さらに革新を促進することのできる新しい知的財産権を提案する。

提案内容
 サービスやビジネスモデルの分野のイノベーションの発展を促進するための新たな知的財産権として、「元祖権」(もっといい言葉があるかもしれないが、分かりやすいため、とりあえず使用)を提案する。
 元祖権を取得できた場合には、「自分が元祖」と正式に主張できるだけでなく、他社が、それと同じサービスを実施する場合には、最初に発案・実施した会社が元祖であることを表示することを義務付ける制度である。独占はしないし、ライセンス料の請求もしないが、他社が真似した場合に、元祖権を持つ企業が必ず営業的な効果を得られるようにする制度である。
 例えば、A社が転勤引越支援サービスで「元祖権」を取得した場合、まずA社は、自分のサービスのカタログやWebページに「転勤引越支援サービスでは自分が元祖」と正式に記述できる。同時に、S社が同じ転勤引越支援サービスを真似して実施する場合には、S社のそのサービスのカタログやWebページに、「このような転勤引越支援サービスの元祖はA社」または「A社式 転勤引越支援サービス」というような元祖表示(とその問合せ先の表示: 12/3 追加)を行うことを義務付ける。また、同時に商標登録していれば、第三者に対しても、「○○はA社の登録商標(転勤引越支援サービスでは元祖)」と表示する義務を負わすようにする。
 この権利を得るためには、革新的なサービスやビジネスモデルを発案した人や企業が申請。登録されるためには、特許とは違って実施していなければならない。また、登録商標が不使用で取消されるように、実施を止めてしまった場合には取消理由にできるようにする。
 特許と異なるのは、
 ・物品でなく、サービスやビジネスモデルに絞る。
 ・「自然法則を利用した」という条件は不要。ただし、「高度のもの」は特許と同じ。
 ・実施することが条件。
 ・先発明主義。
 また、特許法の35条のような条項も設けることで、職務発案(特許の「発明」とは区別したい)の場合、発案者に相当な対価が渡るべきである。そうしたほうが、インセンティブが高まる。

 「元祖」というのは卑近な言葉ですので、笑い話のように聞こえるかもしれませんが、まじめな提案です。関心を持たれた方は、是非コメントをお願いします。今後さらに具体化したいと考えます。協力してくれる方を歓迎します。

[追記](2006/12/3)
 やっと、イノベーション25に意見を送りました

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November 07, 2006

「ソフトウェアパテントは必要悪 論」は大きな間違い

 CNETのブログに「ソフトウェアパテントは必要悪」論というエントリがありましたが、この内容を鵜呑みにしないほうがいいでしょう。

 「ソフトウェアの特許を簡単に認めすぎている現行の法律」という現在認識は、日本では誤りです。先月24日のエントリで示したように、特に、ビジネス方法特許の分野は審査が厳しいですが、他のソフトウェア特許も審査はそれほど甘くはありません。

 欧州では、さらにソフトウェア特許に対して厳しいですが、オープンソース(特にOS)が特許で訴えられて差し止めされる、といった事態を警戒しているという背景が大きいようです。
 「米国の(ソフトウェアパテントの取得に対しての)寛容なアプローチが、テクノロジー業界におけるイノベーションや投資を増加させているという証拠は一切ない」という英国の法廷の裁判官の発言が引用されていますが、「イノベーションや投資を全く増加させていない」という証拠も出ていないわけで、現状、米国のアプローチを全く否定することはできないのです。ちなみに、ベンチャーキャピタルは一般的に、特許を持っていたほうが投資に熱心になります。特許は参入障壁として働きますし、もしも事業がうまくいかなくて精算する際に、特許を売却できるからです。

 「日本と米国は、優秀なソフトウェアエンジニアであれば、誰でも思いつきそうなアイデアをパテントとして認め過ぎである。」という認識も一般には正しくありません。中島さんのような超優秀なソフトウェアエンジニアにとっては簡単なことかもしれませんが、一般のソフトウェアエンジニアには特許にするのはそんなにたやすいことではありません。私もいくつかソフトウェア特許を持っていますが、まずアイデアを生むのに調査や発想にすごく時間がかかりますし、特許資料にしあげるのも時として学術論文を書くくらいエネルギーを使います。まれに、幸運にも、十分に練らないアイデアが特許になることもありますが、これは例外的なもので割合としては少ないです。

 「だからと言ってパテントを申請しておかないと、他の会社に先に申請されて痛い目に会うかも知れない。そんな理由だけで、弁護士に高いお金を払ってせっせとパテントを申請しているのが、今のソフトウェア会社の現状である。」という認識も正しくありません。中島さんのお付き合いしている企業の多くはそうかもしれませんが、一般化すべきでありません。知的財産権の意識の高い企業は、このような「必要悪」といった意識はなく、研究開発への投資の重要性と特許化による知的財産の蓄積・活用を理解しているのです。

 ソフトウェア特許を軽視する発言はブログによく見かけますが、IT分野のイノベーションを低めることになりかねないので危惧しています。最近ネットベンチャーの特許出願が少なくなっているのは特に問題です。開発合宿のような方法でちょっとした機能をたった1日で作ってしまうよりも、特許にする位、アイデアを十分に練ることが望ましいのです。技術力は特許で評価される場合が多いことを、ソフトウェア分野の企業でも再認識するべきです。

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October 24, 2006

特許審査短縮とビジネス方法特許の状況

 10月20日に、特許庁から、新たな特許行政の基本方針であるイノベーション促進のための特許審査改革加速プランが発表になりました。

 審査官を増やしたり、技術調査の民間受注の拡大をしたり、特許審査の効率化を図るなど、いろいろと策を立てるとのことですが、審査順番待ち期間の目標を見ると、険しい状況です。今年の目標は28ヶ月のところ、2006年8月時点で25.4ヶ月と目標としては短縮できています。しかし、5年前に審査請求期間の短縮をしたことで、一時的に審査請求が急増しているため、審査順番待ち期間は、平成20年に30ヶ月未満、平成25年には11ヶ月という目標(今年1月に策定)になっています。つまり、少なくとも2年間は審査順番待ち期間は拡大してしまうのです。この平成20年・平成25年の目標について、10/20の発表では短縮できると名言していません。まだまだ厳しいということでしょう。

 また、10ページに、「本年度中に、大学等の研究者が特許と論文情報の統合検索を行うことを可能とするため、固定アドレスで特許公報データを直接照会できるシステムの運用を開始する(特許・論文統合検索システムの提供)」とあります。これは、研究者や学生にとってはありがたい話です。期待したいです。

 大阪ではたらく弁理士さんのブログでも指摘されていますが、表題に「イノベーション促進のための」と付いています。安倍内閣では、イノベーションを重視して、イノベーション担当の大臣もできましたので、特許庁がその動きに気を使っているのを強く感じます。

 ビジネス方法特許(ビジネス関連発明)についての発表も先月ありました。先月28日に、ビジネス関連発明の最近の動向についてが更新されました。特許査定率は、2005年も8%(全分野の平均値は約50%)に留まっているとのことですが、グラフを見ると2004年よりもほんの少し上昇している感じです。これまでは、特許庁から「特許にならないビジネス関連発明の事例集」や「ビジネス関連発明に対する判断事例集」が公表される前に出された特許出願の審査が多かったわけですが、これからは、それらの事例集を見て書かれた出願の審査が増えてゆくので、特許査定率の向上に期待がもてるでしょう。

 経営の視点から考える知財発想法のブログでは、特許庁の発表の他、ビジネスモデル特許本の話題が出ていました。本以外にも、NTT-ATのビジネスモデル特許情報が終了してしまったり、サンジーバーの「ビジネスモデル特許はこう読む」というメールマガジンが終了してしまったりして、少し寂しい感じがします。

 ビジネスとしては、最近、カブドットコムや、ウェブマネーが、特許のライセンス収益を得る方針を発表しています。ビジネス方法特許を取ったところが、もっと積極的に特許をビジネスに活かすようになれば、他の企業ももっと出願や権利取得に積極的になるでしょう。

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July 02, 2006

ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会

 6月13日に、経済産業省が設置した「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」から、ソフトウェアに係る知的財産権に関する準則が発表になり、現在意見を公募しています。

 これに先立ち、昨年10月に中間報告がありました。その内容については、私のブログにも書きましたが、「ソフトウエア特許がソフトウエア分野のイノベーションを阻害している」という過激なことが書かれていましたので、私も反対のコメントを出しました。

 しかし、今回の内容は、ソフトウェア特許の権利濫用に関する問題だけを取り上げていました。よかったです。特に、オープンソースのソフトウェアを利用している企業/自治体が利用の差し止めを求められることを避けるため、ソフトウェア特許の権利濫用は制限すべきでしょう。この点には異論はありません。オープンソースの推進におけるこの施策の位置づけについては、情報セキュリティの知識袋のブログに解説されています。

 7月12日まで、経済産業省がパブリックコメントを受け付けていますが、私は細かな点でコメントするかもしれませんが、大きな反対はありません。

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March 31, 2006

日本でもeコレクトの特許が成立

 佐川急便とJCBが共同出願しているeコレクトの特許が米国で成立したことは昨年5月のエントリで書きましたが、日本でも特許成立と佐川急便が発表したというニュースが、昨日の日経日経BPのサイトに出ていました。

 たぶん、「宅配便のカード決済方法およびカード決済システム」(特願2002-521793、PCT/JP2001/007224) が成立したのでしょう。拒絶査定を受けましたが、査定不服審判が通って成立したようです。

 まだ特許公報は出ていないので、どんな請求項で成立したのか分かりませんので、内容のコメントは差し控えます。
 この出願の拒絶理由通知書が、特許電子図書館の審査書類情報照会(3/27に機能追加)で見ることができます。
 13.04.2004:拒絶理由通知書 (詳細は略)
  第29条第2項(進歩性)
   1.特開平7-93411号公報
   2.特開平10-105614号公報
   3.特開平5-204956号公報
  第36条
  第29条第1項柱書

 このようにいろいろと指摘されています。また、審判でも一回拒絶理由をもらって補正しているようなので、成立した特許の請求項は公開時のものとは大きく異なっていると思われます。

 また、分割出願として、特願2004-175825と特願2004-344773があります。特願2004-175825のほうは、特許電子図書館で経過情報を見ると、
  出願審査請求書(他人): 差出日(平17.4.15)

とあります。どうも、他社が20万円近く払って審査請求したようです。特許法では、「何人も」審査請求できることになっていますが、このようなものを見たのは私は始めてです。関心を持たれていることが分かります。

 権利の行使については、「宅配便を手掛ける同業他社に対し有償でこのサービスのライセンス供与を進める」とのことなので、いきなりは利用の差し止めは求めないようです。ですので、大きな問題にはならないでしょう。

 宅配業界では、金融業界と同様にビジネスモデル特許への関心が高いです。
 例えば、最近のヤマト運輸の新サービスの宅急便e-お知らせシリーズ宅配ロッカー発送サービス