April 06, 2006

多様性推進本部(新聞の「会社人事・機構改革」欄より)

 3/30のエントリで、新聞の「会社人事・機構改革」欄に載っているいろいろな組織名のことを書きましたが、松下電器産業に4/1付けで新設された「多様性推進本部」は、とても意味深い組織と思われます。4月4日の日経産業新聞の記事によると、この多様性推進本部は「性別や国籍、年齢などを問わず、多様な人材が活躍する企業風土の実現を目指す」組織とのことです。これまでは、女性躍進本部という部署がありましたが、女性だけでなく広く多様な人材が活躍できることを目指しているようです。検索してみたところ、松下は既に、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の取り組みの一つとして、多様性の実現をあげています。

 なお、この「多様性」という単語は、欧米で「ダイバーシティ」と言われる用語を和訳したものです。部署名に「ダイバーシティ」をつけている企業は既にありました。日産自動車の「ダイバーシティ デベロップメント オフィス」東京電力の「ダイバーシティ推進室」です。他に、多様性(ダイバーシティ)に取り組んでいる企業としては、旧東京三菱銀行P&G等があります。ですので、CSRの観点から、「多様性推進本部」のような組織名がこれから増えるかもしれません。

 解説資料としては、大和総研のレポート高橋俊介慶応大学教授による解説などをネットで読むことができます。

 ブログを検索してみたところ、最近、多様性(ダイバーシティ)のことに言及したブログとして、MANAGEMENT FRONTIERブログSophie FreyjaさんのブログVegefulさんのブログなどを見つけました。ブログでも結構話題になっています。

 大学教員としては、このような「多様性(ダイバーシティ)」を推進する組織を持っていたり活動している企業のほうを、女子学生や留学生には勧めたいと感じます。

[言い訳]
 最初書いた時点で、「多様性推進本部」のことを「多様性本部」と誤って記載しました。これは、4月4日の日経産業新聞の記事のタイトルでそのような間違いがあったため、私も間違えてしまったものです。失礼しました。

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March 30, 2006

新聞の「会社人事・機構改革」欄から学べること

 3月は、新聞に「会社人事・機構改革」が多く載る時期です。私は、日経産業新聞と日経MJを講読していますが、この時期は会社人事・機構改革欄の情報が多く、「そのスペースは要らないから記事をもっと多く載せてよ」と言いたくなります。知人が異動していないかをチェックするために、その欄を見る人が多いようです。しかし、会社人事・機構改革欄から学べることもありそうです。最近の新聞の会社人事・機構改革欄を見ていて、次のような部署名が気になりました。

イノベーション推進本部
 東芝にこのような名前の本部ができました。東芝の子会社でも、イノベーション推進部といった名前の部署ができています。知的財産部は別にあるので、この本部が何を目指してしているかがよく分かりません。企業戦略やビジネスモデルなどの面のイノベーションを推進するための組織かもしれません。最近は、中国などへ特許資料による技術流出が多いと指摘されていますので、特許の面だけでなく、「イノベーションを推進する施策」を考える部門かもしれません。または、昨年8月の東芝の経営方針説明会の資料に、「研究開発から事業化のプロセスイノベーション」(未来カタログなどを使用)という項目があるので、「死の谷」などの対策向けのプロセスイノベーションを重要視して作った本部かもしれません。御存知の方は教えてください。

顧客政策室
 阪急百貨店にこのような名前の部署ができていました。他の百貨店についてネットで調べてみると、松阪屋や高島屋に同じ名前の部署があり、伊勢丹や京王百貨店には「顧客政策部」があるようです。やはり、デパート業界はRFM分析等で優良顧客を選別して、顧客生涯価値を狙った経営をしていかないと生き残れない、という意識から、このような部署ができているのでしょう。

ものづくりセンター・ものづくり推進部
 多くのメーカーでこのような名前の組織ができています。やはり、団塊世代の退職のために、技術の伝承が問題になっているのでしょう。

生態系ソリューション部
 清水建設の部署名。ビオトープのための部署でしょうか?

トータルカーライフ事業戦略推進
 オートバックスセブンの部署名。カー用品の販売には、カーライフの視点が重要ということでしょう。

知画部
 オリエンタルランドにあった部署名(今月、経営戦略部に統合)。何をしていたのでしょうか?

 「会社人事・機構改革」の欄をきっちりと読むのは苦痛ですが、このような読み方をすれば、その業界/企業では何を目指しているかの理解に少しは役立つでしょう。

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December 27, 2005

MOTへの入門的な番組(12/25夜のNHKスペシャル)

 日曜(12/25)夜のNHKの日本の群像 再起への20年 第8回 トップを奪い返せ ~技術者たちの20年戦争~という番組は、MOT(技術経営)についての入門的な教材として適切な事例だと感じました。サムスンは、日本からの技術移転を進めるとともに、莫大な投資を半導体に注ぎ込み世界一の座に上り詰めていったが、他方、東芝等の日本の半導体メーカーは失速し大規模な再編を迫られている、といった現状を取材した番組でした。
 MOTでは、Death Valley(死の谷)の問題がよく上げられます。先進的な基礎研究を実用化するのに、莫大な投資が必要な(同時にリスクもある)場合が多く、その投資が集まらずに事業化までゆかないことを言います。また、現実的な競争状況として、産業スパイ等の情報戦やチキンレース(価格下落を怖がって投資を止めたほうが負け)といった問題もあります。半導体は、スケールメリットが大きいため、各社がこぞって大規模な設備投資をすると、全体として供給過剰になり、単価が下落するため、チキンレースの様相を呈しやすい業界です。
 日曜(12/25)夜のNHKの番組は、上記のような「死の谷」や競争状況の問題を分かりやすく解説していました。そのため、MOT本を読む前に、MOTのことを考えるとっかかりとしてお勧めです。再放送は、今夜深夜(12/28 0:25~1:17)です。

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