freee(フリー)がマネーフォワードに対して特許権侵害で差止請求訴訟(Smipsでの議論など)
昨日(12/10)、政策研究大学院大学で行われた第184回知的財産マネジメント研究会(Smips)に出席しました。
今回、この研究会の中の法律実務(LAP)分科会のテーマが、「FinTech関連の知的財産について、ビジネスモデル特許の今後のあり方について」というものでしたので、ビジネスモデル特許(ビジネス方法特許)に関して、特許関連の方々(特許庁・弁理士・企業内の特許実務の方)のご意見が聞けそうと思い参加しました。
まず、議論のとっかりとして、フィンテックで特許訴訟 中小向け会計ソフト巡りという先週の日経新聞の記事を元に、クラウド会計ソフトのfreee(フリー)が、同業のマネーフォワードが自動仕訳の技術の特許を侵害したとして差し止め請求訴訟を起こしたことが報告されました。そして、その特許の請求項をチェックするなど、議論を進めました。
そのFreeeの特許とは、会計処理装置、会計処理方法及び会計処理プログラム(特許5503795号)という特許で、私は以前から知っていました。問題になるかもしれないと思っていた特許の1つで、私のeビジネスの教科書のビジネス方法特許の章で、金融分野の特許の例としてあげていました。
その研究会では、侵害にあたるかは微妙なのでないか、というご意見の方が多かった感じです。今回の差し止め請求は、営業的な狙い(差し止めの可能性があると利用者がマネーフォワードを使うのを躊躇するのでは)といったご意見も出ました。
オーガナイザーの特許庁の足立昌聡さんからは、米国ではビジネスモデル特許の出願が減少傾向という点、海外サーバの場合などの域外適用の問題、この分野での均等論適用の問題などのお話をお聞きすることができました。
Comments
インターネットを使用したシステムに対する特許権の行使では、海外サーバーを使用されると、特許権の行使が非常に困難という問題が頻発します。請求項の構成要件の一部が海外のサーバー内の機能であると日本の特許権の効力が及ばないからです。
サーバーが日本国内にあったとしても、サーバー内部の技術内容や使用しているデータの中身を特許権者が知ることは、ほとんど不可能です。その結果、インターネットを使用したシステムに対する特許権の行使は大変に困難です。IoT産業革命の中で、特許権の活用に各企業の知財部は大変に悩んでいるところです。それに対する対策の1つとして、「データストリーム特許」が有り得ると思います。ネットワークを流れる所定のデータの流れ(データストリーム)を権利範囲とするものです。データストリームを特許法でいう「物」として扱いますので、データストリームの生産行為や使用行為等を行なう装置に対して、その内部構造を分析することなく権利行使ができます。詳しくは、次のサイトにて説明しています。http://www.patentisland.com/memo381.html
Posted by: 久野敦司 | December 12, 2016 08:04 PM
久野様
幡鎌です。コメントありがとうございました。
クラウドコンピューティングを利用する場合は、海外サーバを使う場合が少なくないので、特許侵害の判断が難しいという話は、SMIPSでも出ました。センターが国内か海外かも分からない場合もあり、判断は難しいでしょう。
データストリーム特許については、不勉強のため知りませんでした。おもしろい考え方だと思います。ありがとうございました。
Posted by: hatakama | December 14, 2016 04:42 PM
幡鎌先生
データストリーム特許は、日本企業からはまだほとんど日本出願がされていません。パナソニックとオムロンからの数件だけです。しかし、ドイツのフランフォーファー研究所から大量のデータストリーム特許が日本に出願されています。フランフォーファー研究所は、ドイツではIndustry4.0推進の中心的な組織ですので、それと関係があるかもしれません。日本企業も、早急にデータストリーム特許の取得に向けて行動を開始すべきと思います。データストリーム特許の現状を、下記サイトに簡単にまとめてみました。
http://www.patentisland.com/memo382.html
Posted by: 久野敦司 | December 15, 2016 09:55 PM
久野様
幡鎌です。解説、ありがとうございました。
出願の例をみますと、IoT関連のソフトウェア特許の出願では重要な請求項になると思われます。
ただし、純粋なビジネス方法の考え方とは、異なるレイヤーと感じました。
しかし、ビジネス方法特許でも製造・制御・SCM関連等のものではデータストリームが重要になる特許出願もありえますので、私としても注視してゆきたいと思います。
ありがとうございました。
Posted by: hatakama | December 16, 2016 04:20 PM