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February 29, 2012

「座席管理システム」(新幹線などの車内改札を不要にする仕組み)の特許侵害訴訟

 知財高裁の判決情報を調べていてたまたま見つけた、特許権侵害の訴訟事件平成23(ネ)10013についてです。この事件は、座席管理システム(特許第3995133号)という特許を持つ個人発明家がJR東日本を訴えていた事件で、先月、知財高裁は、JR東日本はその特許権を侵害していないと判断して、その個人発明家の控訴を棄却し、JR東日本勝訴の判決を言い渡しました。少し解説しますと、この特許は、新幹線の指定席車両内で車内改札をしなくていいようにするシステムに関する発明です。JR東日本では、新幹線などで、指定席券の販売状況とその券が自動改札を通ったかという情報をもとにして、席についていることが問題ないと見なされる乗客には車内改札をしていません。その仕組みに関する特許です。その個人発明家は、自分の特許をJR東日本が侵害しているとして訴訟を起こし、差し止めを求めていました。ですので、もしも、個人発明家のほうが勝っていたら、JR東日本の新幹線などで車掌の車内改札が復活していたかもしれません。それはちょっと、うっとうしいですが、JR東日本の車掌の採用募集が増えることになれば大学教員にとってはありがたいです。JR東日本は学生に人気ですので。。。

 その知財高裁の判決内容については、知財判決 徒然日誌や、佐成弁理士のブログに解説されていますので、関心ある方はそちらを参照してください。

 私が気になったのは、その個人発明家とJR東日本とのやりとりです。その個人発明家のWebページを偶然見つけたのですが、JR東日本とのやりとりが細かく記載されていました。まず、その個人発明家は、この特許の前にも、「座席指定席利用状况監視装置」(特許第1836419号)という特許を成立させ、JR東日本などとやりあっていたようです。実際、判定請求(判定2004-60023)までしていました。そのこともあり、今回の特許でもいろいろとやりとりがあったようです。

 JR東日本の問題として感じたのは、個人発明家に対する態度です。「当社の信用を傷つけ、あるいは当社の業務を妨害する等々のことをなさらないように予めご注意申し上げます」というような文章は決して用いないほうがいいと思います。大きな会社がこのようなことを言うと、脅されたと感じる人もいるでしょう。失礼だと思います。特許侵害を訴えることを発明家の正当な権利です。特許を評価した上で「しかしながら、侵害はしていません」というような態度をすべきでしょう。こんな失礼な対応をしていると、個人発明家は直接やりとりすることはやめ、パテントトロール(IV社など)に特許を売り渡すようになるかもしれません。そうすると、企業側はもっと大変でしょう。

 個人発明家側にも問題を感じました。発明者にはありがちですが、自信過剰気味になっていることです。発明が解決する課題からして、基本特許とはいえない感じです。また、情報システムの部分を「CPU」としてひとくくりにしているため、情報システムやビジネス方法の特許に詳しい審査官であれば、特許査定しなかったのではないかと思います。運良く特許になった、とも言えると思います。それに、特許検索してみたところ、社内改札に関する特許出願は、他にもいろいろありました。また、Wikipediaの改札の項目に、JR東日本の新幹線などでは、「あらかじめ座席指定券(指定席特急券・指定席グリーン券)を購入した段階でその情報が乗務員の持つ携帯端末に送られ(DoPa網を使用)」とあります。この記述が正しいとすると、その都度、DoPa(無線通信)で携帯端末に情報が送られるため、特許第3995133号が主張するようにホストコンピュータで個々の情報を一つの情報に統合、という仕組みは取られていないことになります。ですので、侵害していないことになります。そのようなことから、訴訟という手段を取ったことには疑問を感じました。

 審査官にも問題があるでしょう。この特許には、G06F 17/60の特許分類がついていませんが、ビジネス方法特許の審査基準に則って審査すべきでしょう。また、請求項が少しあいまいなので、侵害しているかが判断しにくくなっている感じです。このような請求項は拒絶すべきだったと思います。請求項があいまいだったため、知財高裁は、特許明細の中身から技術的範囲に属していないと判断せざるをえなかったのでしょう。

 ところで、パテントトロールがらみの話しとして、特許庁の口頭審理の予定表によると、昨日、ソニー・コンピュータエンタテインメントとエイディシーテクノロジーとの間の無効審判の口頭審理があったようです。残念ながら、用事があっていけませんでした。聞きたかったです。

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