小売が公共事業になる日(日経ビジネス「記者の眼」より)
今年3月に、大きな災害の後はネットよりもリアルの流通・小売りが頼りになるという書き込みをしましたが、今日はその続きを考えます。
先週、日経ビジネスの「記者の眼」に小売が公共事業になる日、小売り企業は新しい公共の担い手になるかという記事が載りました。現状、多くの大手小売企業が買い物弱者に照準を合わせた業態開発に力を入れていて、かつ、それを高齢化と買い物弱者に悩む地域社会や行政が後押ししています。そのような状況から、今後は大手小売チェーンの誘致やその運営維持に税金が使われる時代が来るかもしれない、と日経ビジネスの記者は予測しています。特に、食品は、一種の「ライフライン」であることが、今回の震災後の状況からはっきりしてきました。ですので、この記事が予測するように、食品の流通は「公共」に近い扱いがされるようになるかもしれません。ただし、税金投入を最小限にするための工夫/仕組みが望まれます。また、大手チェーンの誘致だけでなく、中小の小売店の生き残りを支援することも重要でしょう。
関連する動きをまとめておきます。
・コンビニ、被災地で出店加速 ファミマは当初の5倍(産経新聞 2011/08/10)--- ミニストップは、東北での新規出店を従来計画の約3倍に引き上げた。セブン-イレブン・ジャパンは4月から被災地に移動販売車を投入。被災者の買い物支援と同時に、新規出店に向けた市場調査を進めている。ローソンは、東北地方で従来計画の出店に仮設店舗を上積みする。
・ローソン、限界集落に出店 買い物弱者対応で(産経新聞 2011/08/09)--- 「買い物弱者」支援の一環として広島県神石高原町と連携して行うもので、総務省の交付金などを活用。将来的に全国の過疎地での応用を目指したいとしている。
・「利用頻度で差が出た」、ミニストップの阿部社長(IT Japan 2011)--- 危機的状況で阿部社長が「最も活躍した」と評するのがテレビ会議システム。ただし、「非常時は最初こそトップダウンでもいいが、状況が見えた段階で権限委譲すべきだ。自立的に動ける体制を整えてこそ、迅速な復旧が可能になる。」
・セブン&アイHDとNTT東日本ら、被災地の仮設住宅に買い物支援サービス(日経BP ITpro 2011/7)--- 宮城県亘理郡山元町の仮設住宅に整備する無線LAN環境と、各戸に配備する「光iフレーム」を利用して、セブン&アイグループのネットショッピングを手軽に利用できる仕組みを整備。
・ホット横丁石巻(リリース文) --- トレーラーハウスをつなげた商店街。群馬県で作って持ってきて、石巻やその周辺で被災した人を雇用。NHK TVニュース 8/11 23:40頃に放送された。
・日本アクセス、今夏中にBCPを見直し(日経BP ITpro 事例データベース 2011/7)
・「ヤマトHD 被災地で買い物代行」(日経産業新聞 2011/8/5)--- 地元のスーパーと組み、利用者が電話で注文した商品を宅急便で配達。
また、今回の災害の直後にオフィスで一晩すごさなければいけなかった人が多かったことから、江崎グリコの置き菓子サービスオフィスグリコの利用が拡大しているそうです(日経MJ 2011/4/27によると、震災の夜にオフィスグリコを食べてしのいだ人がかなりいたことから、震災後に設置依頼が急増)。確かに、非常食(カンパンなど)よりもお菓子のほうがいいですよね。
[追記] (2011/8/26)
関連して次のような記事もありました。
・日経ビジネス2011年8月22日号 【特集】流通進化論より、「過疎化という商機」。
・珍しい“買い物弱者”対策、町がスーパー建設(産経新聞 2011/3/4)。福岡県芦屋町は平成23年度、スーパーマーケットの店舗を建設し、運営を民間に委託する取り組みを始める。
Comments