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August 28, 2011

スマートフォン業界での特許戦争を契機に特許制度そのものについての議論も

 スマートフォン業界で特許戦争が起こっていて、グーグルによる巨額でのモトローラ買収は、主にスマートフォン関連の重要特許を手に入れるためといわれています。そのような状況から、先週あたりから特許制度そのものについての議論も起こっています。

競争の本質を覆い隠すグーグルとアップルの特許戦争(電通国際情報サービス 飯田 哲夫 氏)

ソフトウェア特許反対論者は立場を明確化しよう(テックバイザージェイピー代表/弁理士 栗原 潔 氏)

恐怖のパテント費用--テクノロジをパテント訴訟業の餌食にするな(TechCrunch、Erick Schonfeld)

 なお、スマートフォン関連で訴訟に使われているソフトウェア特許は、ビジネスモデル特許ではなく、ソフトウェアの機能やユーザインターフェースの特許のようです。ですので、サービスを対象にして独占を図るのでなく、機械のパーツの特許のように、多くの特許を使って自社製品を守ろうとするものです。

 私は昨年、発明のコモンズという本で、主にビジネスモデル特許を対象にして、コモンズ化(先行者優位のみを与える制度に変更)の提唱しました。
 その後、一般の特許制度については、今年6月の日本知財学会の年次学術研究発表会で、特許制度に代わる登録発明実施料分配制度の提案と課題という発表をしています。音楽著作権では利用に応じた利用料の徴収が行われているように、特許でも、独占権でなく、利用に応じたロイヤリティの徴収を行えばいいという案です。「特許の藪」のような場合でも適切な徴収ができるように、部品表を用いる仕組みを提案しています。ソフトウェアの各機能ごとの特許も、ハードウェアの部品表のように、機能構成表などを用いて、適切な徴収ができると思われます。私としても、このような案を多くの方々に分かってもらえるよう、今後多くの場で提案してゆきたいと思っています。特許が効果的にイノベーションを促進する制度といえなくなってきたことから、特許制度をどう改革すればいいかについて、多くの研究者からいろいろな案が出てくるべきでしょう。

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August 21, 2011

電力会社の体質変革のための制度案(朝日新聞「声」への投稿の補足)

 これまで、私のブログでは、原発関連の問題について次の2つの書き込みをしました。
 ・原発利用は「トランス・サイエンス」問題
 ・原発を電力会社に安全に運営してもらうための制度案

 最近、政府が原発の監督機関を変更することを決めたため、この機会に原発に関しての制度をもう一度考え直しました。やはり、福島原発事故後の東京電力の対応の問題、九州電力のやらせ問題などは、電力会社の体質的な問題といえるでしょう。公共サービスを提供する企業という自覚がなさすぎると痛感します。そのため、規制や監督を強化するだけでは、原発の安全性を高めるのには不十分でしょう。人の面の制度が望まれます。このような問題はあまり議論されていません。そのため、朝日新聞の「声」に投稿したところ、運よく採用され、本日の朝刊に掲載されました。以下、引用します(この部分の著作権は朝日新聞社が有しますのでご注意ください)。

電力会社は原発近くで研修を  幡鎌 博(2011年8月21日付 朝日新聞「声」より)
 政府は環境省の外局として原子力安全庁を設ける方針を決めた。従来の原子力推進から、環境規制を中心に置く組織体制に変えようというのは評価できる。しかし、それだけで十分か。もうしばらく原発を稼働させるのであれば、安全運用を徹底させるための制度を色々と工夫すべきだ。
 電力会社にはそのため、いま以上に原発についての社会的責任を強く感じてもらい、全社的に安全性を最重視した業務や意思決定を行う体制作りをしてもらう必要がある。
 そこで次のような制度を検討すべきだ。①稼働中の原発のすぐ近く(例えば1㌔以内)に電力会社の研修施設を建設②交代で電力会社の役員を含む全社員に毎年2泊以上、研修施設での研修を義務付ける③万が一、原発が非常事態に陥った場合、そこで研修中の社員らが必要に応じて原発内の作業を行う。
 原発の安全稼働のためには、規制や監督の強化だけでなく、電力会社の経営者と全社員に原発の危険性を「自分ごと」として感じてもらう必要がある。政府はそのための指導を徹底すべきだ。

 この「声」のコーナーは550文字以内という制約があり、あまり詳しく書けなかったので、このブログで少し補足します。

 まず、現場だけでなく、電力会社が全社的に原発の安全性を最重視する体制を取ってもらう必要性について補足します。東京電力の福島原発の現場に勤めておられる方は、事故後の対応はがんばってらっしゃると思います。しかしながら、問題は、それ以外の従業員(役員を含む)です。現場の人以外の電力会社社員は、原発の危険性を「他人ごと」のように考えているように見えます。まず、事故の原因として、経営戦略上で原発事故を軽視していたことがあげられます。東京電力は、今年の事故前まで、海外へのインフラ輸出を進める戦略をかかげていました。例えば、昨年9月に発表された東京電力 2020ビジョンには、海外事業展開が大きく打ち出されていますが、災害時の原発の問題についての記述は全くないです。それ以前にも、いろいろと危機の指摘がされていたようですが、この資料作りに関わった役員や経営企画部門の社員には、原発の危機意識がなかったということでしょう。また、想像ですが、もしかしたら、本社の経理部門が、コストや採算性のほうを重視して、安全性をより高めるための原発の現場からの予算申請の金額をカットしていたかもしれません。そのように、原発の安全性を高めるためには、現場以外にも、経理・人事・経営戦略など様々な部署の社員に、原発の安全性を最重視した業務や意思決定を行うよう徹底してもらう必要があるでしょう。そのため、設備の面だけでなく、人の面の制度も望まれるのです。

 そこで、原発近くの宿泊施設付きの研修施設で、電力会社の全社員(役員を含む、男性社員だけでもいいか)が、入れ替わりで毎年2泊程度の泊まり込みの研修を行うよう制度化することを提案します。なお、これは、1つの制度例です。他に上記目的に有効な制度が考えることができれば、この案以外でもいいでしょう。
 電力会社社員は、毎年何らかの研修(電力技術の研修、幹部向け研修、安全管理・顧客対応の研修など)をしていると思います。研修でなくとも会議でもいいですが、毎年、原発近くで2泊以上滞在すれば、原発の危険性について自らが強く感じるようになるでしょう。原発の近くで研修/宿泊中に地震があれば、ビクッとするはずです。近隣住民の気持ちが分かるでしょう。その研修には、原発内での非常時の作業の演習(半日程度か)も含めるといいでしょう。そのような演習を行っていれば、非常時に役立ちます。
 電力会社は、だいたい大きな研修施設を持っているようです。東京電力は総合研修センター(東京都日野市)、関西電力は能力開発センター(大阪府茨木市)という宿泊施設付きの大規模な研修施設を持っています。また、北陸電力は富山市内、九州電力は福岡市内、中国電力は広島市内、中部電力は愛知県日進市(人材開発センター)にそれぞれ研修施設を持っています。ですので、そのように研修を行う場所を、都市部でなく稼働中の原発の近くに変更することを義務付けるという提案です。なお、事故後、東京電力は急遽、放射線測定要員を育成する研修を行っているようです。事故の可能性はあったのですから、このような研修を普段から行っていてほしかったです。

 事故が起こってしまった今、東電以外の電力会社も、住民に対して単に「安全」と言うのでは不十分でしょう。「電力会社の全社員で原発の危険から近隣住民を守ります」というような意志・姿勢を見せてくれることが一番でしょう。自発的にはしてくれそうにないので、制度にしてはどうかという話です。
 また、監督機関よりも、電力会社のほうが危険性に関する情報をより持っているはずです。このような制度により、電力会社の社員全員が、非常に危険な原発を運用している企業としての自覚を持ち、危険性について詳しく知るようになるでしょう。それによって、原発の安全性を最重視した業務や意思決定を行うことになり、安全運用の徹底につながるでしょう。

 私は、原発推進派というわけではありませんが、風力や太陽光などの代替エネルギーで電力供給をまかなえる見通しはまだでしょうし、化石燃料に頼りすぎるのもリスクがあります。そのため、技術伝承も考慮して、最小限の原発の稼働を当面も認めていいのではと私は考えています。福島や浜岡のような地震・津波のリスクの高い原発は絶対に廃炉にすべきですが、天災面の危険性が低いところだけ、今以上に安全性の基準を高めて稼働させることにしてはどうでしょうか?安全運用を集中できるように、各電力会社1か所だけにしたほうがいいでしょう。その際、上記のような人の面の制度も取り入れることで安全性をより高めることができるはずです。

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August 18, 2011

グーグルのモトローラ・モビリティ買収は足元を固めるためか?

 今週、グーグルがモトローラ携帯電話機器部門を買収するというニュースが流れてびっくりしました。しかし、グーグルは最近、広告以外に、SNSのGoogle+(スマートフォン利用者にも使いやすいことが魅力)・携帯向け決済・電子書籍など、ネットを通したサービスに力を入れています。そのことを考えると、グーグルが携帯電話のハードウェアで儲けようという意図は考えにくいです。

 CEOのラリー・ペイジは、モトローラの特許が狙いと述べていますが、特許以外にも通信制御のソフトウェア技術も魅力だったのだと思います。Androidでは、OSだけでなく、通信制御の技術も重要だからです。Microsoftなどが携帯電話機器メーカーから特許ライセンス料を請求している現状を考えると、さらに十分な技術を持っておくべきと考えたのでしょう。

 このように、モトローラ携帯電話機器部門買収は、グーグルが今後、AppleやMicrosoft・Nokia陣営とスマートフォンの土俵で勝負してゆく上で、足元を固める狙いの買収だと思われます。Androidのプラットフォームが磐石でないと、スマートフォンからのネットのサービスで優位に立てないからです。ですので、Androidを採用している日本の携帯電話メーカーにとっては、いいニュースといえるでしょう(グーグルが大きく戦略を変えることがないことを前提としてですが)。

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August 13, 2011

小売が公共事業になる日(日経ビジネス「記者の眼」より)

 今年3月に、大きな災害の後はネットよりもリアルの流通・小売りが頼りになるという書き込みをしましたが、今日はその続きを考えます。

 先週、日経ビジネスの「記者の眼」に小売が公共事業になる日、小売り企業は新しい公共の担い手になるかという記事が載りました。現状、多くの大手小売企業が買い物弱者に照準を合わせた業態開発に力を入れていて、かつ、それを高齢化と買い物弱者に悩む地域社会や行政が後押ししています。そのような状況から、今後は大手小売チェーンの誘致やその運営維持に税金が使われる時代が来るかもしれない、と日経ビジネスの記者は予測しています。特に、食品は、一種の「ライフライン」であることが、今回の震災後の状況からはっきりしてきました。ですので、この記事が予測するように、食品の流通は「公共」に近い扱いがされるようになるかもしれません。ただし、税金投入を最小限にするための工夫/仕組みが望まれます。また、大手チェーンの誘致だけでなく、中小の小売店の生き残りを支援することも重要でしょう。

 関連する動きをまとめておきます。

コンビニ、被災地で出店加速 ファミマは当初の5倍(産経新聞 2011/08/10)--- ミニストップは、東北での新規出店を従来計画の約3倍に引き上げた。セブン-イレブン・ジャパンは4月から被災地に移動販売車を投入。被災者の買い物支援と同時に、新規出店に向けた市場調査を進めている。ローソンは、東北地方で従来計画の出店に仮設店舗を上積みする。

ローソン、限界集落に出店 買い物弱者対応で(産経新聞 2011/08/09)--- 「買い物弱者」支援の一環として広島県神石高原町と連携して行うもので、総務省の交付金などを活用。将来的に全国の過疎地での応用を目指したいとしている。

「利用頻度で差が出た」、ミニストップの阿部社長(IT Japan 2011)--- 危機的状況で阿部社長が「最も活躍した」と評するのがテレビ会議システム。ただし、「非常時は最初こそトップダウンでもいいが、状況が見えた段階で権限委譲すべきだ。自立的に動ける体制を整えてこそ、迅速な復旧が可能になる。」

セブン&アイHDとNTT東日本ら、被災地の仮設住宅に買い物支援サービス(日経BP ITpro 2011/7)--- 宮城県亘理郡山元町の仮設住宅に整備する無線LAN環境と、各戸に配備する「光iフレーム」を利用して、セブン&アイグループのネットショッピングを手軽に利用できる仕組みを整備。

ホット横丁石巻(リリース文) --- トレーラーハウスをつなげた商店街。群馬県で作って持ってきて、石巻やその周辺で被災した人を雇用。NHK TVニュース 8/11 23:40頃に放送された。

日本アクセス、今夏中にBCPを見直し(日経BP ITpro 事例データベース 2011/7)

・「ヤマトHD 被災地で買い物代行」(日経産業新聞 2011/8/5)--- 地元のスーパーと組み、利用者が電話で注文した商品を宅急便で配達。

 また、今回の災害の直後にオフィスで一晩すごさなければいけなかった人が多かったことから、江崎グリコの置き菓子サービスオフィスグリコの利用が拡大しているそうです(日経MJ 2011/4/27によると、震災の夜にオフィスグリコを食べてしのいだ人がかなりいたことから、震災後に設置依頼が急増)。確かに、非常食(カンパンなど)よりもお菓子のほうがいいですよね。

[追記] (2011/8/26)

 関連して次のような記事もありました。

日経ビジネス2011年8月22日号 【特集】流通進化論より、「過疎化という商機」。

珍しい“買い物弱者”対策、町がスーパー建設(産経新聞 2011/3/4)。福岡県芦屋町は平成23年度、スーパーマーケットの店舗を建設し、運営を民間に委託する取り組みを始める。

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August 03, 2011

O2O (Online to Offline) とは

 O2O (Online to Offline) という用語をよく見かけるようになりました。この用語は、昨年からTechCrunchの記事などで見られましたが、最近ではネット企業がよく使っています。例えば、楽天社長も今後重視する分野としてO2Oをあげていますし、日経デジタルマーケティングのサイトにも、先月三歩先読むキーワード O2O(オー・ツー・オー)というページができました。

 もともと、マルチチャネル販売・クリック&モルタルという概念はありました。その考え方の発展形として、ネットとリアルのシナジー(ネットで店舗在庫を検索できたり、ネットで予約して店舗に届けてもらい店舗で試着してから購入を決める仕組みなど)も既に行われています。しかし、 "O2O" という用語はリアル企業のネット展開だけでなく、ネット企業がリアル企業を支援するような形も含んでいる感じです。グルーポンなどのネットのクーポンで、店舗への誘導が盛んになったことから、ネット企業もネット専業というのでなくリアル企業に対してどのようなサービスができるかを考えてゆく必要性が高くなってきたということでしょう。

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