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May 16, 2011

原発利用は「トランス・サイエンス」問題

 福島第一原発の事故は、人災とも言われています。それは、技術者が十分な注意を怠ったということではなく、東京電力の全社的な方針によって、原発のリスクが軽視され、十分な対策を取らなかった結果の人災といえるでしょう。原発利用は、「トランス・サイエンス」(trans-science) の問題とよく言われます。「トランス・サイエンス」とは、「科学によって問うことはできるが、科学によって答えることはできない問題群からなる領域」のことです。つまり、原発の場合には、事故になった際のリスクが大きすぎるため、技術者が科学の面だけで判断できる問題ではない、ということです。

 原発に関して、電力会社が技術者を中心にして、技術面だけでなく政治的・社会的な面まで考えて、市民にしっかりと説明してコンセンサスを取ることが望まれます。しかし、東京電力の場合には、技術者の社内での発言力は低そうでした。これは、「原発は安全」という外部への説明を徹底したかったためだと思われます。リスクについて触れることはタブーだったのでしょう。また、このような対応を許した国にも問題があったと思います。中部電力も、政府から浜岡原発の稼働を停止するように言われてから初めて稼働停止を検討しました。福島第一原発の事故を見れば、自分から稼働停止を検討するほうが自然だと思います。そのように中部電力もリスクのことを軽視していると思われます。このような電力会社の事情をふまえると、電力会社には、技術者倫理の問題だけでなく、全社的(つまり、技術者以外に原発に関して何らかの意思決定に関わる役員/社員を含める)に安全性を最重視する意識を持ってもらう必要がありそうです。

 先月、原発の近くに電力会社の研修施設をという提案の書き込みをしましたが、これはマイナスのインセンティブというのではなく、電力会社の役員/社員全員に、常に原発のリスクを意識してもらうための仕組みとして提案したものです。3月に原発事故が起こるまで、東京電力は今年は海外にインフラを輸出して利益をあげようという計画でした。リスクのことは全く念頭になかったのです。このようなことにならないためにも、電力会社には常に原発のリスクを意識してもらう必要があります。日本が今後も原発を使い続けるのであれば、そのための仕組み(制度)を考えるのは必須でしょう。

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