国立公文書館の特別展「公文書にみる発明のチカラ」
昨日、国立公文書館で展示されている平成22年度秋の特別展公文書にみる発明のチカラ - 明治期の産業技術と発明家たち-を見てきました。
この展示は明日(10/21)迄ですので、関心のある方は忘れないようにしましょう。入場は無料です。なお、木曜は、午後7:30まで入館できるようです(閉館は午後8時)。
まず、特許制度に関しては、次の展示がありました。
・専売略規則 --- 明治4年に施行。しかし、発明品が少なく翌5年に施行停止。
・専売特許条例 --- 明治18年に交付(明治21年に特許条例に改正)。
この専売特許条例の中に、「発明者が特許後二年以内に不実施の場合や発明品を輸入した場合は特許を無効とする」とあります。「輸入した場合」の事情はよくわかりませんが、「特許後二年以内に不実施の場合」に無効ということから、商標と同様に、発明の実施を重視した法律だったことがうかがえます。日本での発明の制度は、もともと「排他権」よりも「専用権」の性格が強かった、と分析する法学者の論文を読んだことがありますが、この展示を見て、明治時代は全く専用権という性格だったことが分かりました。また、用語の定義として、「発見」を「従前世の中に存在していてもこれまで用いられていなかった事物を検出して実用に適応させること」と定義しているのも、利用されることを重視した法律だったと感じました。
発明の展示としては、この特別展のパンフレットの絵にも使われている「納涼団扇車」(特許12号)が、扇風機的な発想でおもしろかったです。復元模型も作られていました。ただし、ずっと人が手で回さないといけない仕組みのようでしたので、それが今一つでした。電力を利用できなかった時代ですが、何か手はあったと思います。ゴム動力模型飛行機のようにゴムを使うことで、ある程度巻けば、数分間は動き続けるようにできるかもしれません。また、団扇を平でなく、少し凹凸を付ければ、風が強く来るのでは、と感じました。
シンプルな分かりやすい発明(またはB級発明)として、納涼団扇車を例にして展示したようですが、上記のような改良も考えられます。特許を与えなければ、他社が改良した製品を市場投入して、「納涼団扇車」の市場が育ったのかもしれません。〈反〉知的独占の書籍で出てくる例(例えば、1章に出てくる蒸気機関の発明)のように、特許制度は本当に役立ったのかを考えさせられる例だと思います。
重要な発明でも特許取得できなかった例も出ていました。人力車の発明は、上記のような特許制度が施行される前に既に利用されていたため、特許化できなかったようです。その代わり、賞勲局より発明者に一時金が下賜されたとのことです(制度が整備される前の発明への特別な措置)。特許がなかったため、人力車は広く普及したのかもしれません。
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