書籍「〈反〉知的独占」とネット上の「知的独占反対論 草稿」
ミケーレ・ボルドリンとデヴィッド・K・レヴァインという経済学者による〈反〉知的独占 ― 特許と著作権の経済学という本が出ます。出版社のページでは10/22発売予定で、Amazonでは10/19時点で「ただいま予約受付中です」になっていますが、そろそろ店頭に出てきそうです。
最近、池田信夫氏のブログで紹介されたため、既にネットで少し話題になっているようです。NTT出版のページには、最初の40ページのみ無料PDF版が公開されています。クチコミを狙ってのことでしょうが、最近では珍しくなくなりました。期間限定にしなくてもいいように感じます。
全体の内容を知ってから購入を決めたい方向けには、翻訳者の山形浩生さんのサポートページの中に、知的独占反対論 草稿(Against Intellectual Monopoly)の全訳が公開されています。「訳書と重複している部分も散見されます」とジョーク的に書かれていますが、ボルドリンとレヴァインがネットで公開している草稿を訳しているので、ほぼ本の内容と同じと思われます。
なお、草稿と書籍では、タイトル以外にも中身の訳が多少異なるようです。例えば、第5章のタイトル"The Devil in Disney" は草稿では直訳していて「ディズニーの悪魔」になっています。憶測ですが、書籍のほうの5章タイトルは、NTT出版の担当者がディズニーに配慮して変更するように求めたのかもしれません。
既に出版社からの献本はされているようで、ブロガーの書評が出ています。私は、原著のほうを昨年買って既にざっと読んでいますが、翻訳本を入手し次第、読み直そうと思っております。
レッシグの主張と共通する部分もあります。この本の中で、特許による独占がなくても先行者優位(first-mover advantage)によりビジネスで優位にたてるはず、という主張(経済学者らしい変な先行者優位も示されている)がありますが、レッシグも「コモンズ」(2002) の中で次のように述べています(p.324)。
でも、非効率なコピーからイノベータを保護する仕組みは特許だけじゃない。ネットワーク経済では、あるものを売り出す一番乗りになることは、特許のコストがなくても先行者優位を作り出す。
私にとってありがたいことに、現在、「<反>知的独占」のAmazonのページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」の中に、拙著発明のコモンズがあがっています。特許による独占の問題に関心のある方々に、私の本を知ってもらえるいいチャンスになりました。ちなみに、私の提案は、特許のような独占排他権はやめ、発明に対して全く別なタイプの権利を与えるという主張です。
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