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October 27, 2010

iPadのビジネス利用2

 以前このブログで、iPadのビジネス利用について書きましたが、現在の状況としても、電子書籍端末の普及というよりも、タブレット型端末として、販売・営業・会議など、企業での活用が盛んになっています。タブレット型端末の用途が広がりつつあるという感じです。

 まだ日本ではiPad向けの書籍コンテンツは十分ではないですし、シャープなど、国内メーカーも対抗の電子書籍リーダーを出してきています。そのため、すぐiPadに飛びつこうという消費者は限られていて、少し様子見しようという人が多いようです。今年の家電の年末商戦でも、量販店からは電子書籍はまだ「種まき」という状況と見られています(日経MJ2010/10/25)。そのため、ソフトバンクは、まずはビジネス利用を開拓しようとしています。

 先週、ソフトバンクはSoftBank Days 2010 ~iPadが変えるワークスタイル~というイベントを企業ユーザ向けに開催しました。その様子が、日経産業新聞2010/10/21 に出ていましたが、iPadの企業導入に躍起のようです。そのイベントでは、ガリバーやAIGエジソン生命保険などの事例が紹介されました。その日経産業新聞の記事によると、ソフトバンクグループ内でのiPad導入効果として、残業削減、ペーパーレス、総コスト削減、生産性向上 をあげているとのこと。

 また、会議向けの用途もあります。日経産業新聞2010/7/2の「iPad効果? 会議の風通し良く」という記事の中で、役員会でノートパソコンに替えiPadを使うようにしたところ、より議論に参加するようになった、という事例が紹介されています。

 販売台数が増えれば、コンテンツ/APL提供者にとっても魅力的なプラットフォームになるため、まずは企業向けの導入を進めているという事情もありそうです。

 以下に、関連する記事や発表などをまとめておきます。

[総論/事例集]
特集ビジネスiPad(日経BP。関連イベントとして、11月17日にiPad活用 最前線あり)

iPadのビジネス利用進む(大河原克行が斬る「日本のIT業界」より)

[事例]
レストランのメニューはiPadの時代(Wiredvision)

メガネの三城(日経MJ 2010/10/15より)

iPadでドレスの「ヒラリ」を疑似体験 ノバレーゼ、店頭端末で臨場感を演出する。日経情報ストラテジー2010/10号 p.42 にも記事あり。

・ニューヨーカーのバーチャル試着(日経MJ 2010/7/2)

千趣会でのカタログアプリ

ニッセンのカタログアプリ

住友不動産の分譲マンションカタログのアプリ(産経新聞 2010/10/22)

・医療用 富士フィルムと慈恵医大(日経産業新聞2010/7/14より)

[追記](2010/11/6)
iPad駆使 データで攻略 日本女子バレー(朝日新聞2010/11/4より)

iPadで医療が変わる(ITpro EXPO 2010にて、日経メディカル二羽記者が活用現場を報告)
 

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October 20, 2010

国立公文書館の特別展「公文書にみる発明のチカラ」

 昨日、国立公文書館で展示されている平成22年度秋の特別展公文書にみる発明のチカラ - 明治期の産業技術と発明家たち-を見てきました。

 この展示は明日(10/21)迄ですので、関心のある方は忘れないようにしましょう。入場は無料です。なお、木曜は、午後7:30まで入館できるようです(閉館は午後8時)。

 まず、特許制度に関しては、次の展示がありました。
 ・専売略規則 --- 明治4年に施行。しかし、発明品が少なく翌5年に施行停止。
 ・専売特許条例 --- 明治18年に交付(明治21年に特許条例に改正)。

 この専売特許条例の中に、「発明者が特許後二年以内に不実施の場合や発明品を輸入した場合は特許を無効とする」とあります。「輸入した場合」の事情はよくわかりませんが、「特許後二年以内に不実施の場合」に無効ということから、商標と同様に、発明の実施を重視した法律だったことがうかがえます。日本での発明の制度は、もともと「排他権」よりも「専用権」の性格が強かった、と分析する法学者の論文を読んだことがありますが、この展示を見て、明治時代は全く専用権という性格だったことが分かりました。また、用語の定義として、「発見」を「従前世の中に存在していてもこれまで用いられていなかった事物を検出して実用に適応させること」と定義しているのも、利用されることを重視した法律だったと感じました。

 発明の展示としては、この特別展のパンフレットの絵にも使われている「納涼団扇車」(特許12号)が、扇風機的な発想でおもしろかったです。復元模型も作られていました。ただし、ずっと人が手で回さないといけない仕組みのようでしたので、それが今一つでした。電力を利用できなかった時代ですが、何か手はあったと思います。ゴム動力模型飛行機のようにゴムを使うことで、ある程度巻けば、数分間は動き続けるようにできるかもしれません。また、団扇を平でなく、少し凹凸を付ければ、風が強く来るのでは、と感じました。

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 シンプルな分かりやすい発明(またはB級発明)として、納涼団扇車を例にして展示したようですが、上記のような改良も考えられます。特許を与えなければ、他社が改良した製品を市場投入して、「納涼団扇車」の市場が育ったのかもしれません。〈反〉知的独占の書籍で出てくる例(例えば、1章に出てくる蒸気機関の発明)のように、特許制度は本当に役立ったのかを考えさせられる例だと思います。

 重要な発明でも特許取得できなかった例も出ていました。人力車の発明は、上記のような特許制度が施行される前に既に利用されていたため、特許化できなかったようです。その代わり、賞勲局より発明者に一時金が下賜されたとのことです(制度が整備される前の発明への特別な措置)。特許がなかったため、人力車は広く普及したのかもしれません。

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October 19, 2010

書籍「〈反〉知的独占」とネット上の「知的独占反対論 草稿」

 ミケーレ・ボルドリンとデヴィッド・K・レヴァインという経済学者による〈反〉知的独占 ― 特許と著作権の経済学という本が出ます。出版社のページでは10/22発売予定で、Amazonでは10/19時点で「ただいま予約受付中です」になっていますが、そろそろ店頭に出てきそうです。

 最近、池田信夫氏のブログで紹介されたため、既にネットで少し話題になっているようです。NTT出版のページには、最初の40ページのみ無料PDF版が公開されています。クチコミを狙ってのことでしょうが、最近では珍しくなくなりました。期間限定にしなくてもいいように感じます。

 全体の内容を知ってから購入を決めたい方向けには、翻訳者の山形浩生さんのサポートページの中に、知的独占反対論 草稿(Against Intellectual Monopoly)の全訳が公開されています。「訳書と重複している部分も散見されます」とジョーク的に書かれていますが、ボルドリンとレヴァインがネットで公開している草稿を訳しているので、ほぼ本の内容と同じと思われます。
 なお、草稿と書籍では、タイトル以外にも中身の訳が多少異なるようです。例えば、第5章のタイトル"The Devil in Disney" は草稿では直訳していて「ディズニーの悪魔」になっています。憶測ですが、書籍のほうの5章タイトルは、NTT出版の担当者がディズニーに配慮して変更するように求めたのかもしれません。

 既に出版社からの献本はされているようで、ブロガーの書評が出ています。私は、原著のほうを昨年買って既にざっと読んでいますが、翻訳本を入手し次第、読み直そうと思っております。

 レッシグの主張と共通する部分もあります。この本の中で、特許による独占がなくても先行者優位(first-mover advantage)によりビジネスで優位にたてるはず、という主張(経済学者らしい変な先行者優位も示されている)がありますが、レッシグも「コモンズ」(2002) の中で次のように述べています(p.324)。

でも、非効率なコピーからイノベータを保護する仕組みは特許だけじゃない。ネットワーク経済では、あるものを売り出す一番乗りになることは、特許のコストがなくても先行者優位を作り出す。

 私にとってありがたいことに、現在、「<反>知的独占」のAmazonのページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」の中に、拙著発明のコモンズがあがっています。特許による独占の問題に関心のある方々に、私の本を知ってもらえるいいチャンスになりました。ちなみに、私の提案は、特許のような独占排他権はやめ、発明に対して全く別なタイプの権利を与えるという主張です。

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October 15, 2010

経営情報学会「組織・人・情報とイノベーション」研究部会で発表します

 今月23日(土曜)、経営情報学会の「組織・人・情報とイノベーション(IandOHI)」研究部会にて私の発表(報告)があります。場所は専修大学神田校舎で、どなたでも聴講できます。

 話す内容は、拙著発明のコモンズの本の内容が中心ですが、経営情報学会なので、経営面の話もある程度入る予定です。午後3時からの開始で、私が1時間少し程度発表し、その後議論に入る予定です。

 配布資料ですが、研究会のメンバーは、事前にネットでダウンロードしておくことになっています。研究会に入っていない方で、当日(または事前に)資料が必要な方は、幡鎌(hatakama@shonan.bunkyo.ac.jp)までメールください。私のほうで、コピーまたはメールいたします。前日(10/22)までにお願いいたします。

 ご関心ある方は、是非ご参加ください。
 
* 開催日時:10月23日(土) 15:00~17:30(終了予定)

* 場所:専修大学神田校舎2号館 2階 208室、専修大学神田校舎の地図

* 報告者:幡鎌 博氏(文教大学)

* テーマ:イノベーションを促進するための知的財産制度「発明のコモンズ」

* 参加要領:参加申し込みは必要ありません。参加費は無料です。

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October 08, 2010

土生 哲也「経営に効く7つの知財力」

 この本は、土生弁理士による著作で、8月に出版されたものです。土生弁理士は、これまで知財関連の著作がいろいろありますし、知的財産検定試験(2級) 問題と詳細解説というページにも登場している方です。

 この本は、知財活用の入門的な本ですが、特許をどのように活用するべきかという点で興味深い指摘が多いです。詳細は、土生弁理士のブログ経営の視点から考える「知財発想法」をご覧ください。

 私が興味を感じたのは、次のような内容です。

知的財産によって、協力関係を結ぶ。p.78

特許、契約以上に重要なものは「顧客満足」 p.99

顧客との関係に知的財産のはたらきを活かす。p.105

「知的財産の力で勝つ」というダイレクトな発想ではなく、「知的財産の力によって勝てる環境が整備される」という発想。p.170

元祖として知的財産を持つ者には、それが企業の理念、企業の思いから生み出されたものであること、その理念や思いを顧客に伝えて、顧客の共感を得られる可能性があることこそが、他にはない強みとなるものなのです。

 米国での知財経営の方針として、「知的財産で武装して、売上や利益を最大化せよ」といった考え方があります。しかし、現実的には、知的財産だけで勝負するのでなく、他の要素も組み合わせた経営が効果的でしょう。この本では、上記のように、知的財産だけで考えるのではなく、経営の中で知的財産を活かすための考え方や手法を具体例を用いて示しています。ですので、特に中小企業の方にはお薦めできます。


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