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July 30, 2010

オープンソースコミュニティはどのような知的財産制度を望んでいるか?

 先週、LPI-Japan(Linux技術者認定試験を実施しているNPO)は、知的財産権に関する新たな研究を支援する目的で、九州大学大学院法学研究院 寺本研究室へ奨学寄附金を行なうことを発表しました。LPI-Japanは、オープンソースコミュニティの一種ですが、認定試験の収益があるので、その収益をオープンソースに役立つ何らかの研究に寄付したい、ということなのでしょう。九州大学の寺本振透教授は、「対立の知的財産権法から相互信頼の知的財産権法へ。閉鎖的な知的財産の利用からオープンな知的財産の利用へ」という指針の理論的な根拠を示すような研究をしようとしているようです。これは楽しみです。

 海外では4月に、Free Software Foundation(FSF)が、ソフトウェア特許に反対するためのドキュメンタリー映画「Patent Absurdity」(特許とその不条理さ)を公開しました。Bilski事件の判決を前にして、オープンソースコミュニティからの意志表示といったところだったでしょう。SourceForge.JPの記事があります。Patent Absurdityというサイトからその動画をダウンロードできます。

 また、オープンソース製品を提供している米Red Hatは、昨年、ソフトウエアのアルゴリズムを特許の対象から除外するよう求める意見書を、米最高裁に提出しました。その意見書には、"most open source software developers view software patents as hindering innovation" と書かれています。

 このように、オープンソースコミュニティはソフトウェアの特許(独占排他権)を望んでいません。オープンソースでは、特許がなくてもイノベーションが進みますし、逆に特許がオープンソース活動では障害になってしまうためです。つまり、オープンソースではソースコードを公開しているため、中の仕組みが分かってしまい、特許を侵害しているかがすぐに分かってしまうという弱点があるのです。

 なお、約1ヶ月前に、ビジネス方法特許に関するBilski事件の対する判決が米最高裁から出ました。ビジネス方法の特許対象についてあいまいさを残した判決であったため、ソフトウェア特許反対の観点から最高裁に意見書を提出していたSoftware Freedom Law Centerは判決に関する声明文を発表し、「思考とプロセスは特許可能とすることで肝心の部分を取り扱っていない」と遺憾を表明した、とのこと。SourceForge.JPの記事があります。

[追記] (2010/8/21)
 「知的財産」という用語に対してもストールマン氏は批判しています。「知的財産」だって?そいつは砂上の楼閣だという文書を見つけました。

 また、以前Amazonが1-click特許でBarnes&Noble社を訴えた時には、Amazonをボイコットしようという不買運動さえ行なわれたようです。

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July 27, 2010

グーグルとヤフージャパンとの提携=グーグルにとっては今後の新事業を狙った展開?

 本日、ヤフージャパンは、今後グーグルの検索技術を使用することを発表しました。米国のヤフーはマイクロソフトの検索技術を使う方針ですが、日本では違った展開になりました。次のような発表や記事があります。

Yahoo! JAPAN のより良い検索と広告サービスのために(グーグル)

「総合的に判断して、Googleが利用者に一番良いと結論」ヤフー井上社長(Internet Watch)

Yahoo!JAPAN、Googleの検索エンジンと広告配信システムを採用 正式発表(ITmedia)

 グーグルは、検索だけでなく、ヤフーの検索連動型広告をバックエンドで支えるが、広告ビジネスをそれぞれが行なうことは変わらないようです。ですので、両社のビジネスの面では、短期的には大きな影響はないと思われます。グーグルは、ヤフージャパンの広告ビジネスのシェアを奪おうというよりも、今後力を入れようとしている他の事業に活かせると思っているのでしょう。検索エンジンを握れば、動画(YouTube)や電子書籍(今後開始予定のGoogle Edition)といったコンテンツへの誘導がしやすくなります。ヤフージャパンは、それらの事業を直接的には展開しないでしょうから、ヤフージャパンにとっても問題はないのでしょう。また、ネットのクラウド化にとって規模拡大がなによりも重要なので、クラウドの面でもグーグルにとっては役立つ提携でしょう。ただ、ヤフージャパンの親会社のソフトバンクにとっては、アップル(iPhone)とグーグル(Andoroid)との板ばさみのようになってしまうのかもしれません。孫社長は少したいへんです。

 なお、ヤフーの検索エンジンを使っている他のポータルサイトにも影響があるでしょう。アウンコンサルティングのサイトに、PC 検索エンジンの相関図(2008年7月現在)があります。2年前の情報ですが、現在でもヤフーの検索エンジンを使っているポータルサイトがあると思われます。それらのサイトも対応が必要です。また、SEO対策をする企業にとっては、グーグルのランキング決定手法への対策だけでよくなくので、少しやりやすくなるでしょう。

 個人的には、マイクロソフトよりもグーグルと組んで欲しいと思っていました。マイクロソフトは、自らのマーケティング戦略のためには何をするか分からないので、私は信用していません。ですので、喜ばしいニュースです。ただし、ヤフーはグーグルの検索結果に多少のカスタマイズをしてほしいです。グーグルは、危ない情報でもあまりフィルタリングしませんので。

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July 20, 2010

iPadと自炊代行サービスの違法性

 iPadの発売を契機に、自分で持っている書籍を裁断し、スキャナでデジタル化(PDF化)して画面で見る利用者が増えているようです。なぜか、そのような利用形態を「自炊」と呼ぶようです。今後は電子書籍の販売が増えるとは思いますが、過渡期として、このような利用のされ方がしばらくは行われるのでしょう。

 このような書籍裁断・スキャンを自分で行うのであれば問題はないでしょうが、代行業者が行うと著作権法で問題です。先週土曜の東京新聞の1面にiPad人気で新ビジネス 本のスキャン代行、違法?という記事が載りました。ブックスキャンスキャポンのような自炊代行サービスは、訴えられれば違法となる可能性が高いのです。個人的に利用するための複製は許されるのですが、「その使用する者が複製」という条件がつくためです。
 
 著作権法に詳しい弁理士の方のブログでも、これらのサービスは違法と判断されるはず、という意見が出ています。
 ・残念ながら現状では複製代行サービスは難しい(テックバイザージェイピー)
 ・研究等の目的による書籍スキャンと私的使用目的複製の抗弁(benliブログ)

 しかし、自分で自炊する場合、機器をそろえるのと裁断・スキャン作業はとても面倒です。ブックスキャンのサイトに、自分で書籍をPDF化される場合という説明をわざわざ載せているのは、とても面倒ということを示して、自分のサービスを使ってもらおうというためでしょう。

 もしも、裁断機とスキャナを自前で用意して預け(つまりハウジングし)、それらを人手をかけずに自動的に動作させるような仕組みの代行サービス(著作権法第30条の「公衆の使用のための自動複製機器」に該当しないようにする必要あり)を提供できれば、「その使用する者が複製」といえるかもしれません(あまり自信はありせんが...)。仮に、そのようにして自炊代行サービスが合法化されれば、書籍だけでなく、新聞や雑誌なども代行してスキャンするようなサービスが行われるでしょう。そうすると、どんな新聞や雑誌でもいち早くiPadのような電子書籍端末で読めることになります。そうすると、電子書籍端末の普及は速いでしょう。

 なお、ブックスキャンとスキャポンのサービス料金がすごく低価格(それぞれ1冊、100円と90円)であることも話題になっています。もしかしたら(というかほぼ確実に)、最初の本だけ裁断・スキャンするが、同じ本を別な人から依頼された場合、すでにPDF化したデータを送るだけでは、という疑問が生じます。もしそうであれば、明らかな違法ですし、悪質といえます。

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