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May 11, 2010

医薬品のネット販売の問題については、もう少ししっかり考えてみるべきです

 昨年3月、医薬品のネット販売規制に賛成の理由というエントリーの中で、医薬品のネット販売の問題点をいろいろと書きました。その後、ネット企業2社が訴えて、裁判ざたになっていましたが、先々月、東京地裁がその行政訴訟の判決として、医薬品通販禁止は「合憲」という判断し、ネット企業側の訴えを退けました。「健康被害を防止するための規制として必要性と合理性が認められる」という判断です。

 この判決に対して、eビジネス推進連合会は「極めて遺憾」というコメントを発表していますし、ケンコーコム社長は、おかしいことは「おかしい」と言い続けると発言しています。

 しかし、ネット企業側は、利用者の健康の問題について、ほとんど気にしていないように感じられます。東京地裁の判決でも健康被害の防止の点で、規制を肯定しています。それなのに、ネット企業側は、医薬品のネット販売で健康被害が生じないような策を真剣に考えていません。自主ルールやケンコーコムの一企業だけの仕組みだけでは、健康被害が生じないようにはできません。ネットで医薬品販売を許可してしまうと、例えば、ネットのリテラシーが不十分で、かつ、医薬品の危険性(副作用や後遺症についてなど)のことを知らない利用者の中には、症状を入力して検索し、一番上に出てきた医薬品を購入(注意事項はろくに読まずに)してしまう人もいると思われます。これはとても危険です。しかし、ネット企業の人達は、そのような人を「自己責任」で済ませてしまうでしょう。医薬品を対面で販売すれば、注意できる可能性が高くなり、間違った医薬品を選んでしまうことをある程度は防げるでしょう。また、ネット企業の中には、できるだけ高い薬を売ろうとするところが出てくるかもしれません。

 私としては、ネットで医薬品を販売するための案として、2種類の方法を考えてみました。
案1 (認可制)
・厳しい条件をつけた認可制とする。例えば、ネットで購入注文があった際には、商品発送前に、ある時間以上(例えば、5分間以上)、その販売企業のコールセンター(薬剤師または登録販売者)へ利用者が症状やその医薬品に関して電話で相談させることを義務付ける。
案2 (利用者の知識を確認)
・医薬品に関してeラーニングコンテンツを用意する。購入しようとしている利用者に対して、ネットを通して薬の知識を確認するテストを実施。そのテストに受からないと販売できないようにする。

 ネット企業は、このような案をいろいろと考えるべきです。まずは、損得抜きで考えるべきです。そして、地道にロビイングなどして、ネットでの販売を認めてもらえるように努めたほうがいいと思います。
 ネット企業の中で特にケンコーコムの姿勢には疑問を感じてしまいます。利用者のほうを見ていないのです。利用者の健康を第一に考えるべきなのに、行政のやり方にケチを付けるような発言をしています。急成長したネット企業には倫理感を持っているのか怪しいことがよくありますが、今のケンコーコムには、ホリエモンがいた頃のライブドアに近い雰囲気を感じてしまいます。

[追記] (2010/5/23)
 少し追加します。
 ケンコーコム社長は、日経BPへの手記の中で、正攻法で主張してきたと述べていますが、私には正攻法とは思えません。
 制度を考える上で、利便性とリスクの両面から考えなければいけません。しかし、楽天とケンコーコムは、利便性の面だけを問題にして、パブコメを書いてくださいとネットで利用者に広く広報し、その結果として、多くのパブコメが集まりました。楽天社長は人気がありますので、同調する人は多かったのです。確かに、十分に賢い人なら、自分で医薬品の知識を正しく得ることができるため、ほとんど問題ないと思われます。そのため、ネットで買いたいという意見は少なくないでしょう。しかし、それと健康被害のリスクとは全く違う話です。ですので、このようなやり方が正攻法だとは思えません。巧妙な政治的手法です。
 私も政策提案していることがありますが、制度の決め方はとても難しいことだと常々感じています。制度はもちろん恣意的に決めてはいけないですが、政治的な決め方も危険なのです。特に、医薬品の場合は、リスクの問題を最重視するのは当然です。
 日経BPへのケンコーコム社長の手記をよく読むと、「売りたい側」の論理で主張していることが分かると思います。特定の人・業界や行政への批判が中心で、制度について真剣に考えているようには思えません。全利用者を代弁しているのでなく、かなり自分中心の主張に感じられます。読んでいて悲しくなります。利用者の健康のことについて十分に説得できないといけないでしょう。正論とは思えないのです。こんな人に医薬品を売らせるのは危険ではないかとさえ感じてしまいます。ですので、制度についてもっと真剣に考えることが望ましいと思います。ドラッグストアの方といろいろと話をしたことがありますが、ケンコーコム社長よりもずっと誠意があるように感じました。私は、ゼミ生に対しても、誠意があり利用者のことを第一に考えることができそうな学生にはドラッグストアへの就職を勧めています。
 最近、日曜夕方に、NHK教育テレビで、ハーバード白熱教室という番組が放送されています。これは、ハーバード大のサンデル教授の講義で、正義に関して哲学的に考えるために役立つ内容だと思います。このような講義の番組を見るなどして、制度のあり方を真剣に考えてもらいたいと思います。

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