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May 23, 2010

インテレクチュアル・ベンチャーズのビジネスの根本的な問題点

 このブログに「インテレクチュアル・ベンチャーズ」のキーワードで検索して訪れてくれている方がかなりいるようですので、インテレクチュアル・ベンチャーズ(IV社)のビジネスの何が問題かについて、もう少し説明を加えたいと思います。
 なお、これまでのIV社に関するエントリーは以下です。
 ・インテレクチュアル・ベンチャーズ社のビジネスモデルは規制が必要
 ・インテレクチュアル・ベンチャーズのビジネスは注意要

 ハーバードビジネスレビュー2010年3月号に、IV社のCEOのミアボルドが、発明資本主義の誕生という論文を寄稿しています。その内容から、IV社は、特許を重んじているが、それは特許の価値を最大化するためであることがうかがえます。
 下図に、一般的な特許の活用方法と、IV社の特許の活用方法の違いを示します。

Iv2
 図において、b(IV社が仲介する場合)で発明に投資する投資家は、発明の実施への投資はしません。特許にのみ投資するかたちであり、投資は発明の利用者(最終的に発明の便益を享受)とは全く関わらないところで行われ、IV社は特許の価値を最大化するために特許の権利を利用します。ですので、利用者にとって望ましくないこと(その発明を利用した商品やサービスの価格の高騰など)が生じる可能性が出てきます。

 忘れてならないのは、発明の本当の価値は、発明が実施されて初めて、利用者への便益として発生することです。特許としての価値を最大化する、というIV社の姿勢は、金融企業としての姿勢です。本来、特許の独占排他権は、産業発展につながる発明の奨励のためであって、特許資産としての価値を最大化(金融商品としての高い利回りを生む)するためではないのです。そのため、IV社のようなインベンション・キャピタルのビジネスモデルは、制限されるべきと考えるのです。

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May 11, 2010

医薬品のネット販売の問題については、もう少ししっかり考えてみるべきです

 昨年3月、医薬品のネット販売規制に賛成の理由というエントリーの中で、医薬品のネット販売の問題点をいろいろと書きました。その後、ネット企業2社が訴えて、裁判ざたになっていましたが、先々月、東京地裁がその行政訴訟の判決として、医薬品通販禁止は「合憲」という判断し、ネット企業側の訴えを退けました。「健康被害を防止するための規制として必要性と合理性が認められる」という判断です。

 この判決に対して、eビジネス推進連合会は「極めて遺憾」というコメントを発表していますし、ケンコーコム社長は、おかしいことは「おかしい」と言い続けると発言しています。

 しかし、ネット企業側は、利用者の健康の問題について、ほとんど気にしていないように感じられます。東京地裁の判決でも健康被害の防止の点で、規制を肯定しています。それなのに、ネット企業側は、医薬品のネット販売で健康被害が生じないような策を真剣に考えていません。自主ルールやケンコーコムの一企業だけの仕組みだけでは、健康被害が生じないようにはできません。ネットで医薬品販売を許可してしまうと、例えば、ネットのリテラシーが不十分で、かつ、医薬品の危険性(副作用や後遺症についてなど)のことを知らない利用者の中には、症状を入力して検索し、一番上に出てきた医薬品を購入(注意事項はろくに読まずに)してしまう人もいると思われます。これはとても危険です。しかし、ネット企業の人達は、そのような人を「自己責任」で済ませてしまうでしょう。医薬品を対面で販売すれば、注意できる可能性が高くなり、間違った医薬品を選んでしまうことをある程度は防げるでしょう。また、ネット企業の中には、できるだけ高い薬を売ろうとするところが出てくるかもしれません。

 私としては、ネットで医薬品を販売するための案として、2種類の方法を考えてみました。
案1 (認可制)
・厳しい条件をつけた認可制とする。例えば、ネットで購入注文があった際には、商品発送前に、ある時間以上(例えば、5分間以上)、その販売企業のコールセンター(薬剤師または登録販売者)へ利用者が症状やその医薬品に関して電話で相談させることを義務付ける。
案2 (利用者の知識を確認)
・医薬品に関してeラーニングコンテンツを用意する。購入しようとしている利用者に対して、ネットを通して薬の知識を確認するテストを実施。そのテストに受からないと販売できないようにする。

 ネット企業は、このような案をいろいろと考えるべきです。まずは、損得抜きで考えるべきです。そして、地道にロビイングなどして、ネットでの販売を認めてもらえるように努めたほうがいいと思います。
 ネット企業の中で特にケンコーコムの姿勢には疑問を感じてしまいます。利用者のほうを見ていないのです。利用者の健康を第一に考えるべきなのに、行政のやり方にケチを付けるような発言をしています。急成長したネット企業には倫理感を持っているのか怪しいことがよくありますが、今のケンコーコムには、ホリエモンがいた頃のライブドアに近い雰囲気を感じてしまいます。

[追記] (2010/5/23)
 少し追加します。
 ケンコーコム社長は、日経BPへの手記の中で、正攻法で主張してきたと述べていますが、私には正攻法とは思えません。
 制度を考える上で、利便性とリスクの両面から考えなければいけません。しかし、楽天とケンコーコムは、利便性の面だけを問題にして、パブコメを書いてくださいとネットで利用者に広く広報し、その結果として、多くのパブコメが集まりました。楽天社長は人気がありますので、同調する人は多かったのです。確かに、十分に賢い人なら、自分で医薬品の知識を正しく得ることができるため、ほとんど問題ないと思われます。そのため、ネットで買いたいという意見は少なくないでしょう。しかし、それと健康被害のリスクとは全く違う話です。ですので、このようなやり方が正攻法だとは思えません。巧妙な政治的手法です。
 私も政策提案していることがありますが、制度の決め方はとても難しいことだと常々感じています。制度はもちろん恣意的に決めてはいけないですが、政治的な決め方も危険なのです。特に、医薬品の場合は、リスクの問題を最重視するのは当然です。
 日経BPへのケンコーコム社長の手記をよく読むと、「売りたい側」の論理で主張していることが分かると思います。特定の人・業界や行政への批判が中心で、制度について真剣に考えているようには思えません。全利用者を代弁しているのでなく、かなり自分中心の主張に感じられます。読んでいて悲しくなります。利用者の健康のことについて十分に説得できないといけないでしょう。正論とは思えないのです。こんな人に医薬品を売らせるのは危険ではないかとさえ感じてしまいます。ですので、制度についてもっと真剣に考えることが望ましいと思います。ドラッグストアの方といろいろと話をしたことがありますが、ケンコーコム社長よりもずっと誠意があるように感じました。私は、ゼミ生に対しても、誠意があり利用者のことを第一に考えることができそうな学生にはドラッグストアへの就職を勧めています。
 最近、日曜夕方に、NHK教育テレビで、ハーバード白熱教室という番組が放送されています。これは、ハーバード大のサンデル教授の講義で、正義に関して哲学的に考えるために役立つ内容だと思います。このような講義の番組を見るなどして、制度のあり方を真剣に考えてもらいたいと思います。

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May 02, 2010

ネットとリアルの戦い(「楽天、全国で即日配送」の記事を読んで)

 一昨日(4/30)の日本経済新聞の1面に、楽天、全国で即日配送という記事が載りました。当初は楽天が自社で販売する書籍やDVDを取り扱うようですが、3年後をめどに全国5カ所以上に大規模物流センターを開設し、全店舗の商品配送を主要都市でカバーできる体制を構築する、という大胆な計画です。日経は「アマゾンに対抗」と解説していました。

 私は、この楽天の計画を読んで、ネットとリアルの戦いは、ネット側がどんどん有利になってゆくのではないか、と感じました。「明日使うものなので、今日帰りに店で買わなければ」という消費者の購買行動を、「明日使うものなので、今朝、ネットで注文しておこう(即日配送されるので大丈夫)」に変えるつもりでしょう。リアル店舗で買わなければいけない理由を、ネット企業は次々につぶしてゆこうという感じです。楽天市場での買い物を容易にするための小型の端末の開発も、そのような意図からでしょう。リアル店舗で購入している客を、ネット側(楽天など)はごっそり奪い取る気なのです。

 池袋の2つの百貨店で行なわれたネットとリアルの協力も、ネット側に有利に働きそうに感じました。百貨店のイベントで見たり買ったりした商品は、ネットでも売っているのですから、消費者が気に入れば次からはネットで買うでしょう。百貨店側は、一時的に客を呼び込めるという効果しかありません。

 なお、商業界の販売革新という流通業界向け雑誌の5月号の「セブンネットは楽天を超えるか 激動するネット通販の行方」という特集向けに、頼まれて短い解説記事を書きました。セブンネットショッピングの課題は大きいと思います。リアル側の企業は、もっと大胆な策を考えないと、今後ますます苦しくなるでしょう。

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