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March 27, 2010

音楽のサブスクリプションサービスではフリーミアム戦略が必須(ナップスタージャパン撤退を戦略面から考える)

 ナップスターという音楽のサブスクリプションサービスをここ数年間使ってきましたが、今月初め、ナップスタージャパンのサービスが5月末で終了というニュースを知り、がっくりとしました。利用者があまり増えていないとは感ずいていましたので、しかたのないことと思いました。

 Wiredvisionのyomoyomoさんのコラムにも、ナップスタージャパン終了とデジタル音楽の行方という記事が出ていましたし、サービス終了を残念に感じる人は、少なくないようです。

 ただし、撤退はするものの、サブスクリプションサービスの未来がないとは思っていないようです。日経産業新聞2010/3/2の記事によると、今後の音楽配信については、「音楽配信市場の環境もにらみながら、再参入を検討してゆく」(タワーレコード)とのことです。音楽好きにはサブスクリプションサービスはたまらなく魅力ですので、ぜひ再参入を検討してほしいです。

 ただし、もしも再参入する場合には、大きく変わる必要があると私は思っています。特に、次の3点。

1) フリーミアム戦略
 現在かなりの曲は、YouTubeやMySpaceなどで無料で聴けます。ですので、サブスクリプションサービスにおいても、かなりの曲を無料で聴けないと、利用者にはアピールできないでしょう。例えば、2割の楽曲は無料で聞けるが、残りの8割を聞きたい場合には有料会員にならなければいけない、といった仕組みが考えられます。さらに、有料会員になれば、プレイリストの数を増やせたり、そのプレイリストを交換/投稿できる、といった付加的なサービスで魅力を出すのもいいでしょう。以前このブログに書きましたように、フリーミアム戦略で多くの利用者を集めることで、有料会員が少なくても、ビジネスとして成功することが期待できます。1000万人近くの利用者を集めることができれば、有料会員が1割程度でも運用しだいではビジネスになりそうに感じます。以前、世界では音楽配信の無料化が進んでいるという記事の中で取り上げたRhapsodyのように、無料会員の画面には広告が載る、といったビジネスモデルも考えられます。
 また、パッケージ販売との結びつけ方もしっかり設計すべきでしょう。アフィリエイトのような仕組みも望まれます。

2) コミュニティ機能の充実、マイページ機能の提供
 ナップスターユーザーはヘビーユーザーですので、音楽への思い込みは大きいでしょう。ですので、それぞれの曲に対してコメントを付けられるような機能が望まれます。そのコメントを、Towerのサイト(現在クチコミ情報ではHMVに劣る)でも利用すれば、CDの売り上げにもつながるでしょう。また、現在「ミンナノプレイリスト」機能はありますが、ジャンル毎とか年代別に投稿できたほうがいいでしょう。それに、プレイリストに対してコメントを付けられるような機能(またはSNSとの連携機能)があれば、もっと盛り上がるでしょう。
 マイページ機能も提供すべきでしょう。自分の好きなジャンルのニューリリースや、そのジャンルでのおすすめの曲(他の多くのユーザーがプレイリストに入れた曲など)が、マイページに出てくるといいです。

3) マーケティング手段の提供
 レコード会社やアーティストに対して、どの曲がよく聴かれているかや、それも、どの年代にとか、普段どんな曲やジャンルを聴く人に聴かれている、といった情報をリアルタイムに提供することができれば、レコード会社側からマーケティング情報料のような費用をもらうことができ、フリーミアムモデルの確立に役立つでしょう。楽曲の提供も増えることが期待できます。同時に、レコード会社のプロモーションに合わせた機能の充実も望まれるでしょう。

 他に、メジャーな携帯音楽プレイヤーに対応してもらうことも必要でしょう。ドコモの携帯電話で利用するとか、ノートPCでモバイル通信を使ってストリーミングを聴く、といった利用方法はなかなかされないでしょう。なぜか、Walkmanのオーバーシーズモデル(日本で購入できる)はnapsterに対応しているのですが、国内モデルでも対応してもらう必要があります。

 日経ビジネス2006/12/11「タワーレコード 店もネットも売りは「死に筋」」や、月刊アスキー2007年5月号「音楽配信がショップ売り上げアップの火種になる日が来る」といった考え方は間違っていないと思います。ぜひ今後、再参入を検討してほしいと思います。また、日頃、ダウンロード違法化の徹底をうったえている方々は、このサブスクリプションサービスの終了を憂慮すべきです。音楽の違法利用を減らすためには、サブスクリプションサービスの普及が重要だと私は考えます。今後はサブスクリプションサービスに何らかの支援をすべき、といった声が聞こえてきてもいいのですが。。。

[追記] (2010/5)
 欧州でサービスされている音楽配信のSpotifyは、フリーミアムのビジネスモデルのようです。Internet Watchの記事がありました。

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March 24, 2010

ツイッターを顧客サービスに利用する米国企業

 以前、Twitter(ツイッター)のメディア論・マーケティング活用という記事の中で書きましたが、ツイッターを企業がマーケティングの手段として使うのには、私はそれほど関心はありません。リアルタイムでプロモーションを打ったり、その反応を知ることができますし、新しいもの好き(イノベーターやアーリーアダプタ)を狙う撃ちできる点で、広告/マーケティング業界の人達にとっては、たまらないメディアでしょう。ですが、そのような使い方は、主に暇人向けです。

 私が最近注目しているのは、ツイッターを顧客サービスに利用する使い方です。

 昨日夜のテレビ東京のWBSの特集で、ツイッターを顧客サービスに利用しているジェットブルー航空やザッポスの様子が報道されていました。ジェットブルーでツイッターを利用した顧客コミュニケーションのマネージャー曰く、「ツイッターを使い始めて、客が本当に必要な情報を与えていなかったことに気付いた。」同様にツイッターを顧客サービスに利用しているザッポスのカスタマーサービス部門担当者曰く、「ピラミッドのような効果がある。対応に満足した客がつぶやけばフォロワーにどんどん伝わり、一つのつぶやきが数千もの人に広がる。」このようなことが重要だと私は思います。

 ツイッターは電子掲示板や電話よりもずっとゆるいメディアなので、多くの利用者はそれほど困窮しているわけではなく、「助けてくれればうれしいなあ」といった気持ちなのでしょう。または、「愚痴」レベルかもしれません。このような顧客からのつぶやきに対して企業がしっかりと対応することで、利用者の期待以上の返答となり、顧客の満足度の極大化につながり、それがツイッターを通して他の利用者にも伝わってクチコミでその企業の評価があがる、というようなプラス面が期待できます。そのような効果を狙って、米国では顧客サービスに利用されているのでしょう。日本ではまだまだですが、今後このような使い方をする企業がでてくることでしょう。

 なお、本荘修二さんのダイヤモンドオンラインの連載記事ツイッター+αのつぶやき企業戦略の中に、ジェットブルー航空ザッポスの例が詳しく載っています。本荘修二さんのブログもあります。

 私はまだ入手していませんが、ビジネス・ツイッターという本にも、ジェットブルー航空の事例が載っているようです。

 顧客の苦情を拾って組織的な対応を行なう活動は「VOC(Voice of Customers)活動」と呼ばれ、日本でも取り組んでいる企業は少なくありませんが、その活動では何週間か何ヶ月かかけて、対応を検討します。それに対して、ツイッターはリアルタイムです。苦情以外に、顧客の「愚痴」や「素朴な疑問」などを聞いて、すばやく対応するのに適しそうです。ただし、サポート担当者へある程度の権限委譲は必要でしょう。

 東急ハンズのコレカモネットは、東急ハンズでは1人の社員だけでツイッター対応していたため、全ての質問に答えることができなくて、このような自動化(カモ型在庫検索ロボット)の仕組みを導入したようです。しかし、上記の米国の事例のように、人間が丁寧に対応したほうが大きな効果を得られると私は感じています。

 来月、「eビジネスの教科書(第三版)」が出ますが、入稿は1月だったため、ツイッターを顧客サービスに利用する話題は入れることができませんでした。

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March 15, 2010

「WOMマーケティングに関するガイドライン」は期待外れ

 先週金曜(3/12)に、WOMマーケティング協議会は「WOMマーケティングサミット2010」というイベントを開催し、その中でWOMマーケティングに関するガイドラインを発表しました。ブロガーに記事を書いてもらうようにお願いするといったクチコミマーケティングに関してのガイドラインです。この件は、ITMediaや、cnetなどで報道されています。

 このガイドラインは、昨年の春から検討されていたもので、昨年7月に公表の予定が延び延びになっていました。しかし、先週金曜に発表されたガイドラインは、時間をかけて検討された割に、全く具体性がありません。米国のFTCの広告ガイドライン(Web担の「タレントがブログで商品紹介すると100万円の罰金!?」 や、日経ビジネス2010/1/18号 p.102を参照のこと)がかなり細かく規定しているのに対して、WOMマーケティング協議会のガイドラインは、WOMマーケティング事業者に「関係性明示の原則」と「社会啓発の原則」に関して抽象的な目標を課すものでした。私は、クチコミマーケティング事例をいろいろと集めていますが、消費者にとって自然なクチコミか否かが分かりにくいものも多くあります。また、週刊朝日2009.6.19号には「ネットのクチコミ情報にご用心!消費者目線とは聞こえがいいけれど、実は”やらせ”だったという落とし穴」なんて記事もあります。そのため、具体的なガイドラインが望まれるところです。

 また、WOMマーケティング事業者に対してだけでなく、広告主(正確には、販売促進主)の企業に対してのガイドラインも望まれます(この協議会だけではできないかもしれませんが)。サンプリングの実施については、企業の新商品発表のリリース文に載せることがよくあります。それと同様に、ブロガーに試供品を使ってもらってブログへの書き込みをお願いしたことなどを、企業のリリース文の中(最後のほうにでも少しだけでも)に正直に示したほうがいいでしょう。消費者はだれもが、その企業のサイトをよく調べれば、クチコミマーケティングをしたことが分かる、ということが望ましいです。クチコミマーケティング実施に際して、WOMマーケティング事業者にだけ関係性明示を要求するのでなく、広告主の企業にも透明性を求めるべきでしょう。

* 広告主の企業のリリース文の例

(前半は商品の説明や仕様など)
マーケティング方法: 本商品を消費者のみなさまに広く知っていただくために、テレビCMや雑誌広告の他、一部のブロガーの方々に試供品を試用していただき、ブログに記事を書いていただくようお願いいたしました。ただし、記事内容については何も指定や制限はお願いしておりません。

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March 13, 2010

週刊ダイヤモンド「FREEの正体」やフリーミアム戦略についてなど

 今週月曜に出た週刊ダイヤモンド2010.3.13号の特集は、「FREEの正体」でした。これは、このブログで以前紹介したクリス・アンダーソン「フリー 無料からお金を生みだす新戦略」の本の内容をベースに、最近の例などを使って解説した特集記事です。クリス・アンダーソンの本を読まなくても、おおまかなことは分かりますので、フリーミアム戦略などに関心のある方にはお勧めです。また、その本を補う内容にもなっていると思いますので、その本に関心を持たれた人にもお勧めです。

 なお、この雑誌の特集のクリス・アンダーソンへのインタビュー記事とだいたい同じ内容が、ダイヤモンドオンライン上の独占インタビュー!『FREE』著者のクリス・アンダーソンが語る「無料経済を勝ち抜く企業と個人の条件」というページに載っています。また、この特集の取材内容メモ・インタビュー書き起こしメモもネットに公開されています。

 この雑誌の特集のp.39に、クリス・アンダーソンの本の内容を発売時に2週間だけネットで無料で公開した経緯についてNHK出版の担当者にインタビューしていますが、もっと詳しいインタビュー内容が、日経ネットマーケティグのサイトに書籍「フリー」ヒットの背景、1万人への無料公開がクチコミのフックにという記事で公開されています。

 今週水曜のNHKのクローズアップ現代も、無料ビジネスを取り上げていました。ビジネス面だけでなく、予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」という本を書いたデューク大学のダン・アリエリーの研究から、「無料」が消費者を異常に惹きつける現象を紹介していて、これはこれで為になる内容でしょう。

 私の感想としては、フリーミアムは主にネットのサービスで可能となる戦略でしょう。ただし、「規模の経済」によって成り立つ戦略ですので、十分な利用者を集めることが必要条件です。中途半端ではだめでしょう。従来の何千倍という利用者を集めることで、5%だけが有料ユーザーでも、従来の 1/10 程度の利用料ですませるようなビジネスモデルにしないといけないでしょう。規模の経済で限界コストが下がることで、95%の無料ユーザー分のコスト(変動費)については、利用料は取らなくても、広告収入などでカバーできることが必要でしょう。また、多くの無料ユーザーを集めることで、彼らが広告媒体になってくれることも期待できますので、広告支出を減らせることにもなります。そのように、フリーミアムの企画立案は、とても戦略的に考える必要があります。

[追記 3/15]

 書籍をネットで無償公開する動きについての記事を追加しておきます。
 ・書籍丸ごと“タダ読み”サイトが人気(iza、3/7)
 ・文春新書が『ネットの炎上力』の「読みどころ」を無料公開(JCAST、3/15)

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