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November 20, 2009

クリス・アンダーソン「フリー 無料からお金を生みだす新戦略」

 ロングテールの本で有名なクリス・アンダーソンが書いたFree: The Future of a Radical Priceという本が7月に出版され、私は先月から読んでいます。

 間もなく翻訳本も出るようで、キャンペーンサイトも作られています。期間限定で先着1万人に本書の全編が無料公開されたようです(既に1万人に達しています)。これは、クチコミを誘発する手口ですね。前作は日本ではあまり売れなかったようなので、こんなキャンペーン方法はいいやり方だと思います。

 私のゼミでは昨年、この本の元になったWiredの論文「Free! Why $0.00 Is the Future of Business」を読みました。この本は、だいたいその論文の延長という感じで、例や説明が細かくなったり整理されたりして内容が充実しています。

 本のポイントは、無料ビジネスの分類でしょう。

1) 直接的な相互補完(Direct Cross Subsidies)
 商品本体は安価または無料にして、消耗品や通信費で収益を上げるタイプ。ジレットの髭剃りが本体は安くして替え刃で利益を出した例や、日本での100円PCのような例など。

2) サードパーティ市場
 サードパーティが無料のマーケットを提供するタイプ。消費者と広告主を結びつけるなど。日本でのフリーペーパーのような例など。
 
3) フリーミアム(Freemium)--- free(無料)とpremiumを組み合わせた造語
 一部のプレミアム利用者は有料(サービス内容も上)で、その他の利用者は無料というタイプ。プレミアム利用者の利用料で、無料の利用者の費用までまかなうというもの。

4) 非貨幣市場(Nonmonetary Markets)
 Wikipediaのように対価なしで貢献してくれる利用者がいることで無料になるタイプ。

 また、ネットではほぼ限界費用ゼロになる場合がかなりあることや、知的財産権の問題などもからめて、いろいろと考察されているので、結構楽しめる本です。経営学部や経済学部の学生にはおすすめできます。アマゾンで、和訳本(フリー 無料からお金を生みだす新戦略)の予約ができます。

 少し不満なのは、ロングテール理論との関係や、CRMのような手法などとの関連も重要だと思うのですが、ほとんど述べられていません。その辺りが少し物足りない感じです。 なお、前作のロングテールの本は和訳が少し変だったので、この本の和訳本を入手できたら、また訳をチェックしてみるつもりです。

 それから、この本にはあまり詳しい記述はないようですが、クリス・アンダーソンは、「オープンソース・ハードウェア」と呼ばれるビジネスモデルのプロジェクトを開始したことが、この本のPrologueと4章に少し書かれていました。調べてみると、彼のブログに、A business model for open source hardwareという記事がありました。このようなプロジェクトの動向は、今後の知財制度を考える上で重要といえます。

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November 13, 2009

Twitter(ツイッター)のメディア論・マーケティング活用

 Twitterを自分では使う気にはなれないのですが、注目はしています。メディアとしてみると、ブログ/SNSとはかなり違う使い方がされています。リアルタイム性が高く、フォロアーになることでいち早く関心のある人の行動や意識を知ることができます。

 マーケティングツールとしては、メルマガと企業ブログの中間的な情報発信ができそうです。楽天トラベルのつぶやき娯レンジャーや、デル、福助などが情報発信しています。リアルタイム性を活かした事例としては、今週火曜(11/10)のソフトバンクモバイルの新商品発表会で、発表会の様子がTwitterで実況されました。なお、その実況を行うのに、書き込み役3名を放送作家が指揮したとのことです。そこまでの体制で行ったため、この日Twitterには1万2千人の視聴者がいましたが、先月のauの新商品発表会の実況の時のような問題(Twitter上で苦情が殺到)は起きなかったようです。また、ブログ検索/分析するのと同様に消費者の意識を知ることができますが、Twitterのほうがよりリアルタイム性が高いです。

 しかし、これまでの使われ方を見ていると、Twitterがブログ/SNSのように万人まで普及するとは思えません。情報を誰よりも早く手に入れたい、といったイノベーター・アーリーアダプターのタイプの人は使いこなしていくでしょうが、それら以外の人々にはあまり使われないかもしれません(私のようなコミュニケーションがあまり好きでない者は全く魅力を感じません)。ブログ/SNS程度のコミュニケーションで満足する人が多いでしょう。ただし、GPSとの連携機能(場所的に近くにいる人のつぶやきを知る機能など)や、ブログ/SNSとの連携機能が充実してくれば、もっと使われるかもしれません。なお、私は学生にはTwitterをあまり勧めていません。それよりもブログ/SNSで長文を書く(つまり思考する)習慣をつけることを勧めています。

 以下、Twitterのマーケティング利用に関する雑誌やネットの情報で主なものを載せておきます。

特集1 Twitterの可能性 注目度急上昇! メルマガを超える集客ツールになるか?、日経ネットマーケティング 2009年11月号

特集 Twitter(ツイッター)のネット販売活用術、月刊 ネット販売 2009年10月号

・津田大介 Twitterが持つ6つの特徴とマーケティング活用、Markezine Day 2009リポート

・藤代裕之 時間を手に入れた「ツイッター」がもたらすパラダイムシフト、日経IT Plus「ガ島流ネット社会学」より

・山崎秀夫 進むつぶやき型の動的ミニブログ『ツイッター』のマーケティング活用、日経BizPlus 連載企画:「Web2.0時代が演出するマーケティングトレンド」第40回 (エコノミスト2009/8/25号にも、「リアルタイムが社会を変える ツイッター革命」という山崎秀夫さんの記事あり)

リアルタイム・ウェブの底力  ネット業界次なる大金脈か?、BusinessWeekより

テレビマンが感じたTwitterの可能性、Internet Watchより

・枝 洋樹 ビジネスパーソンのための「Twitter」論 秒単位で人の思考を検索できる、日経ビジネスオンライン

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November 06, 2009

楽天はEdyを傘下に入れることでネットとリアルの両方の消費者行動情報が手に入る

 楽天は昨日、Edyを運営しているビットワレットを連結子会社化することを発表しました。ITmediaや、Internet Watchや日経産業新聞などで報道されています。

 この話を聞いて、決済ビジネスの面よりも、楽天がネットだけでなく、リアルでの消費者行動情報も入手できることになることが大きいと感じました。そのシナジー効果は大きいと思います。ポイント連携するということなので、たぶん両者をひもづけることになるのでしょう。ネットとリアルの両面の消費者行動をうまく分析できれば、アマゾンやヤフー等にはできない差別化した戦略を立てることができるでしょう。ちょうど先月、セブンイレブンがEdyを全店導入したところで、Edyの利用が広がるはずという見込みもあったのでしょう。

 いい買い物だと思います。

[追記 2010/2/3]
 楽天の三木谷社長は、日経MJ 2010/1/18 のインタビュー記事(2010 トップに聞く)の中で、「小銭で支払っている市場は40兆円とも60兆円とも言われるが、それをエディなど電子マネーで置き換えることに真剣に取り組みたい。エディは数十億円の利益を出すために子会社化するのではない。壮大な実験だが大きな可能性を感じている」と述べています。
 日経MJ 2009/12/25の1面に 「楽天へエディ族誘導」もあり。

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