昨年10月に、インテレクチュアル・ベンチャーズ社とオープン・イノベーションとパテントトロール問題という書き込みをしました。今年前半には日本での活動も目立ってきましたので、インテレクチュアル・ベンチャーズ社(IV社)を再度取り上げます。
この夏、情報処理(情報処理学会の会報誌)の8月号に「発明パートナー募集」という、IV社のパンフレットが添付されていました。ここまで来たのかという印象でした。また、日刊工業新聞主催のイノベーション創出コンテスト2009に共催しています。その募集要項に、「優秀な新規発明案件は、コンテスト終了後、応募者の同意の下、共催者が購入する場合があります。」とあります。たぶん特許化可能かの公知公用例の調査してから購入するのだと思いますが、コンテストを通して、特許技術をそろえようという戦略のようです。
中小企業ニュースの米IV創設者兼最高技術責任者のエドワード・ジュング氏へのインタビュー記事(2009年07月02日)によると、
日本では原則として、特許未取得の技術や発明に対して投資するビジネスに特化する。当該技術を持つ発明家や研究者の特許取得を手伝い、それを非独占的に国内外の複数企業へ提供して利用料を得る。大学の研究室の技術も対象となる。国内や地域産業への貢献が主眼の技術移転機関(TLO)とは、海外展開を狙う点で差別化できる。特許取得に関する費用はIVが出す点で大学側にもメリットがある。
というように、日本では特許未取得の技術や発明を狙っているとのこと。また、特許取得に関する費用はIV社が出してくれるようです。
日経ものづくり2009年7月号にも特許の壁を壊せ“最強の「破壊者」現る”という記事でIV社のことが解説されています。「値段は市場価格」(p.43)であり、パテントトロールとは違う、と説明されていて、あまり問題視していません。
しかし、韓国では大きな問題になっています。Business i.の韓国で強烈 「トロール」たたきという記事にあるように、IV社は韓国マスコミの強烈なバッシングを浴びているとのこと。
私も、IV社は警戒すべきと思います。アイデアだけのマーケットであれば、健全でしょう。しかし、特許となると独占排他権が伴います(少なくともライセンス料を自ら決められる権利を持ちます)。強い特許ポートフォリアを構築できれば、その業界での立場は強くなってしまうでしょう。自分で発明を実施しないのに特許を集めようという企業が強くなると、産業全体での活力が弱まることが危惧されます。また、現在は技術の商社のような経営をしているようですが、経営者が変わった場合などに、パテントトロールに豹変する可能性もあります。そのため、IV社のようなビジネスは、禁止しないまでも、認可制にして、独占禁止法を強めに適用するといった政策が望ましいと思います。
大学側にとって、研究を買い取ってくれるのは、次の研究の資金になるため望ましいことです。しかし、これは国が考えるべきことだと思います。科研費や重点分野の補助金を出してくれる際に、特許を出願・取得すれば余分に(ご褒美として)資金を出すような制度が望ましいと思います。そうすれば、国策として特許ポートフォリアを構築でき、国際的競争力強化につながるはずです。
ところで、2007年から研究しているサービス産業向けの発明のコモンズ制度元祖権についての論文が、日本知財学会論文誌に載ることが決まりました。たぶん今年度内に出る号に載るでしょう。やっと知財関係者に広く知ってもらえるようになりそうです。
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