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November 03, 2008

ビジネスモデル/サービスの特許性の問題(米国のBernard Bilski事件)

 先週、米国でビジネスモデルの「方法」に対して、特許性を認めない判決が出ました。これは、Bernard Bilski事件と呼ばれる事件で、どんな判決が出るかが注目されていました。WSJやSeattle Times等で報じられました。

 日本でも、次のような記事が出ています。
 ・ITmedia「米連邦控訴裁、ビジネスメソッド特許の出願認めず」
  (この記事で「変質」という訳は変です。"transform"は、加工等による「変換」というような意味のはず)
 ・CNET「米裁判所、ビジネスモデル特許を却下--テクノロジ業界への影響は?」
 ・IP NEXT「Bilski訴訟の控訴審判決、ビジネスモデルの特許性を認めず」

 この事件は、エネルギーコスト急落のリスクをヘッジする「方法」が、抽象的なアイデアであるため特許を受けることはできない、という米国特許商標庁の判断に対する裁判でした。判決は、米国特許商標庁の判断を支持したものでした。
 このBernard Bilski事件の詳細は、河野英仁弁理士による今年4月時点の解説「ビジネス方法は特許されるか?~非ハードウェア型ビジネスモデル 大法廷で審理される~」が詳しいです。

 日本では、もともとビジネス方法特許について、このような判断がされています。日本では、抽象的な「方法」では特許を受けられません。ビジネスモデルやサービス提供において、計算機をどのように使うか、といった具体的な仕組みで特許が与えられます。米国でも、そのような扱いになってきていて、それが裁判で確認された、ということでしょう。米国特許商標庁は、一時はビジネス方法特許をかなり認めていて、特許許可率が5割程度あった頃もありました。それが、2003年には特許許可率は約16%にまで下がっています(なお、日本はもっと低くて8%程度)。

 抽象的なアイデアやサービスを特許に認めることで、パテントトロールなどの問題が多いのは事実です。例えば、米国ではTax Strategy Patent(納税のしかたの戦略に関する特許)は、税金関連のコンサルタントのビジネスに影響するため、保護対象から外すかが問題になっています。この問題については、John Marshall Review of Intellectual Property Law(Fall 2007)に、The Proliferation of Tax Strategy Patents: Has Patenting Gone Too Far?という論文があります。

 しかし、ビジネスモデルやサービス自体を権利化できなくなることで、eビジネスやサービス分野のイノベーションが減退してしまう危険性もあります。革新的なサービスでも仕組みについての特許出願が進歩性の面から拒絶されたり、たとえ仕組みを権利化できたとしてもサービスは回避されやすくなる場合も多いためです。独占できない権利でいいので、何らかの権利を与えるべきと思います。元祖権のような知財制度を考えてゆく必要を今回も感じました。

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Comments

 ビジネスモデル特許は、以前、技術の発達に寄与せず産業の発展に貢献しないという批判があり、独占権(特許権)を付与すべきでない、との識者の意見が多数出たのを記憶しています。このころから、日本では、ビジネスモデル特許の進歩性や法的発明該当性(29条柱書)の判断が極端に厳しくなったように思います。現時点では、特許庁や知財高裁が、ビジネスモデル特許をよってたかって叩き潰すよう、日夜涙ぐましい努力をしているように感じてなりません。

 しかし、上記のような識者の意見は、技術の発達の現場を無視した空論のように感じます。技術の進歩は、産業界での市場ニーズが大きくなることにより、一気に加速されます。ビジネスモデルの新アイデアは、市場に新たなニーズを創造する性質を持っています。この新たに創造されたニーズに応えれば莫大な利益が得られるとなれば、そのニーズに応えるべく大資本をつぎ込んで基礎技術を開発するようになるのは、市場経済の当然の帰結です。

 要するに、ビジネスモデルの新アイデアは、技術の進歩を牽引する機関車的役割を果たすものであり、産業発達を法目的とする特許法にとっては、金の卵のような貴重な存在のはずです。にも拘らず、ビジネスモデル特許を目の仇にするのは、腑に落ちません。

Posted by: futureeye | December 08, 2008 at 10:23 PM

 元祖権のPDF論文、拝読しました。先進的な素晴らしいアイデアと思います。この元祖権が成功することを願って、コメントを投稿します。

1.革新的なサービス創出のインセンティブを、広く一般大衆をも含めて高めるために、元祖権を受ける権利(特許法33条や34条の特許を受ける権利に相当)を創設し、それに譲渡性のある財産権的価値を認め、他人に譲渡できるようにしてはどうかと思います。
 革新的なサービスのアイデアを思いついたが、資金がなく事業化できない人もたくさんいます。このような人たちの革新的サービス創出のモチベーションをアップさせるためのものです。
 この元祖権を受ける権利を原始取得した発明者自身が事業化すれば勿論その発明者が元素権者となりますが、発明者から元祖権を受ける権利を譲り受けた者が事業化すれば、その事業者が元祖権者となります。

2.もう一歩権利の強化策はないものでしょうか。革新的なサービスモデルの事業化のためには、先行開発費用等の先行投資が必要な場合も多々あります。その先行投資の回収の手段として、もう少し強力なの営業的優位性が欲しいと思うのですが。
 他人の実施を阻止しない範囲内で宣伝広告機能の強化策として、なにかグッドアイデアはないか、いろいろ考えたのですが、思いつきません。
 期限限定で独占的排他権を認めるという考えは、新規参入を阻止しないという理想に反しますよね・・・

3.特許法や実用新案法との調整規定が必要になりそうです。元祖権法による公開後における特許出願や実用新案登録出願については、特許法29条2項(実用新案法3条2項)で排除できますが、元祖権出願後公開までの期間における後願特許出願等を特許法29条の2で排除できるようにするのか。排除するとすれば特許法29条の2等を法改正しなければならない厄介な作業が生じます。逆に排除しないのであれば、同じサービスモデルについて、元祖権と特許権とが並立することになります。元祖権者は特許権の排他的効力により実施できず、また特許権者は元祖権者へのリンクのWeb ページ上での表示を行なわなければなりません。しかし、リンク表示を行ってもらったところで、元祖権者が事業化不可能である以上無意味となります。

4.過渡期的対策提案
 元祖権が法制化されるまでにはかなり長い期間を要すると思います。そこで、法制化されるまでの過渡期として、ビジネスモデルでの対応の可能性はないのか、考え中です。
 元祖権の審査に関して、ネットを通したコミュニティーパテントレビュー(オープンなネットワークを活用して情報提供してもらう)という面白いアイデアが示されています。審査は全てこのコミュニティーパテントレビューで行ない、しかも、権利行使もこれと同様にコミュニティーパテントレビューのようなものを利用し、元祖権者の営業上のイニシアチブを実現します。さらに、コミュニティー参加者には一定の利益が得られるチャンスが与えられれば、コマーシャルベースに乗るビジネスとして成立するかもしれません。
 ビジネスモデルとして不可欠なものは、収益源と収益の参加者への配当です。
 例えば、次のような投機システムが考えられます。サービスアイデアを多数投稿してもらってそれを公開し、そのアイデアに投資したい投資家(参加ユーザ)の投資を募ります。アイデア投稿者は、集まった投資金を元に事業化を行います。事業化に成功して得た収益の一部を投資家およびシステム事業者に払います。
 投資家は、本当に新規で価値あるサービスアイデアに自分が投資し、しかも自分が投資したサービスアイデアに他人が多く投資すればするほど、そのサービスアイデアの資金が集まり事業化されやすくなり、高額配当が受けやすくなります。その結果、新規性がなく低級なサービスアイデアはその旨の情報提供が行なわれ、自然と審査が促進されます。また、自分が投資したサービスアイデアが事業化された後は、投資家は模倣サービスに目を光らせるようになるという、監視通報機能が期待できるようになります。
 元祖権法の制定に先行してこの元祖権ビジネスモデルを事業化し、既成事実を作り上げた上で、法制定に向けての圧力をかけるのも、1つの方法かもしれません。

Posted by: futureeye | December 14, 2008 at 04:41 PM

futureeyeさん
コメントありがとうございます。

1については、私もいろいろ考えましたが、やはりパテントトロールのようなビジネスを行なう者が現れるのを避けたいため、サービスの発明は、実施しなければ権利化できないようにすべきで、権利だけの譲渡もできないようにすべきと考えます。
2については、まだまだ考えないといけない点です。私も頭を絞っていますが、いろいろな人にアイデアを出してもらうようにしなければいけないでしょう。
3のようなデッドロック現象については、特許の間でも生じる問題でしょう。当事者間で解決すべきでしょうし、多少は法の中で考慮すべきでしょう。さほど大きな問題とは考えていません。
4のようなアイデアの投機システムについては、元祖権法の制定に先行するというよりも、元祖権が施行された際に生まれるかもしれないと想定しています。元祖権の取得にはそのアイデアの実施を前提にした場合には、アイデアの市場が生まれると予想できます。それは、アイデアを考える人と実施する企業とを仲介するようなビジネスになるでしょう。特許の売買の市場が、パテントトロール化を助長するのに対して、そのようなアイデア市場はあまり有害にはならないと考えます。しかし、そのような市場を作っても、元祖権法制定に向けての圧力をかけることにはならないと思います。

根本的な問題をご指摘いただき、感謝いたします。

Posted by: hatakama | December 16, 2008 at 11:41 PM

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