« 世界では音楽配信の無料化が進んでいる | Main | 日テレのドラマ「OLにっぽん」が訴えているテーマ »

October 05, 2008

サイバースペースの秩序のための規範

 サイバースペースの秩序・規範について、レッシグと池田信夫の本から少し考えてみました。

 CODE VERSION 2.0の中でレッシグは、サイバー空間でのCodeという概念を二つの意味で使い分けています。
 ・東海岸のCode(議会が立法する「規範」という意味)
 ・西海岸のCode(プログラムの「コード」の意味で、サイバー空間を機能させているもの)
 レッシグの本は、憲法学者の視点から、その2つの面を突っ込んで考えていて、とても興味深いです。

 現状、多くのネット企業は、著作権やネットの検閲などの問題で、「東海岸のCode」が「西海岸のCode」に影響を与えようとしていることに警戒感をもっているわけです。
 しかし、「東海岸のCode」が十分に整備されていない状況で、「西海岸のCode」が突っ走ってしまって、市民が迷惑を被ることもあります。Googleストリートビューがいい例です。米グーグルの法務担当副社長が9/29に効率的な新サービス導入には事後承諾がベターと語っていますが、これは全く西海岸の開発者側(とGoogle愛好者側)の論理であり、迷惑を被る市民への配慮は十分とはいえません。一部の人がネットを利用するという時代ではなくなり、サイバー空間の外にも大きな影響を与えるようになったため、全市民向けの秩序のために「東海岸のCode」側の対応がもっと必要になってきたといえます。

 また、ネットのサービスの競争政策についても、「東海岸のCode」は現状では十分に機能していません。GoogleやYahooなど寡占状況になってしまっているのは、ビジネス方法特許の成立が難しくなり、サービスをすぐ真似されてしまう、といったことが影響していると思われます。私が提唱している元祖権は、ネットのサービスのそのような状況に対しての競争政策の1つの案です。

 池田信夫氏は、ハイエク 知識社会の自由主義という本の「おわりに」で、「サイバースペースの秩序も、これから100年ぐらいかけて徐々にできていくのかもしれない」と述べています。ハイエク的な思想で考えるとこのような結論になるかもしれません。しかし、100年では遅すぎるように感じます。社会の混乱を避けネット社会が健全に発展するためには、今後10年程度で、サイバースペースの秩序のおおまかなところは形成されるべきでしょう。ネットに関係する学者(私を含め)は、そのためにがんばらないといけないでしょう。

 ネットに規制が入るのを毛嫌いする人は多いです。しかし、適切なルールが作られないといけないのです。「規制」というよりも、社会問題・競争政策などの「秩序」をもたらす「規範」が必要です。これは、西海岸の人達だけに任せるわけにはいきません。Googleストリートビューの問題で、このようなことを再確認できました。

|

« 世界では音楽配信の無料化が進んでいる | Main | 日テレのドラマ「OLにっぽん」が訴えているテーマ »

Comments

今後、次のような「ユビキタスネットワークの法的問題」も課題としてあがってくるようになると思います。

ネットワークを通じて知識、サービス、プログラムなどのオブジェクトが自動的に組み合わされて、高度な仕事やサービスや問題解決をしていきます。しかも、その大きな活動に参加している人やコンピュータは、全体としてどんな活動に参加しているのか把握することができないし、把握する時間もないし、把握する必要もないという状況が生まれてきます。ここで特徴的なことは、様々な組み合わせが自動的に行なわれるということです。ここに、今までにない、ユビキタスネットワークにおける知的財産権などの法的問題が発生します。

ネットワークを通じて自動的に組み合わされて創造された知識、機能、サービス、データなどのオブジェクトに関する知的財産権は誰が保有するのか、自動的な組み合わせで発生した利益はどのように分配するのか、自動的に組み合わせて発生した損害は誰がどのように責任を分担するのかという問題です。これをユビキタスネットワークの法的問題と呼びます。


元祖権も含めた第2世代知財の必要な時代となってきました。

Posted by: 久野敦司 | October 05, 2008 09:28 PM

久野さん
コメントありがとうございます。
確かに、「今までにない、ユビキタスネットワークにおける知的財産権などの法的問題」が問題になってくるでしょう。
集合知と呼ばれるものが誰の財産になるのかという問題など、制度面で考慮が必要になるでしょう。確かに、「自動的な組み合わせで発生した利益はどのように分配」というのも現実的な問題になるでしょう。
発明は密なコラボレーションが必要かもしれませんが、著作物はネットで簡単に共同制作できますので、著作権のほうが大きな問題になるのではないでしょうか?
それでは、ありがとうございました。

Posted by: hatakama | October 07, 2008 10:30 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference サイバースペースの秩序のための規範:

» 話題沸騰!ストリートビュー! [優Tube]
ストリートビューには驚きました。いろいろなところにあてもなくいってしまいます。話題のストリートビューについてブログを書きました。よかったらみてください。 [Read More]

Tracked on October 05, 2008 02:32 PM

« 世界では音楽配信の無料化が進んでいる | Main | 日テレのドラマ「OLにっぽん」が訴えているテーマ »