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October 26, 2008

インテレクチャル・ベンチャーズ社とオープン・イノベーションとパテントトロール問題

 週刊東洋経済 2008年10月25日号の「特許大異変/発明家の復権によりイノベーションは加速する」という記事では、今後は研究開発が水平分業化に進むのでないかという指摘がされています。その記事の中で、インテレクチュアル・ベンチャーズ(IV社)が取り上げられています。Business i.の10/7の記事「日本に“新しい資本主義”上陸」では、IV社の日本法人の設立記念セミナー・レセプションの模様が報道されています。テレビ東京のWBSでも、10/14の「知の争奪戦」という特集の中でIV社を取り上げたようです(私は見逃しましたが)。そのように、今月はIV社のことが話題になっています。

 研究開発も企業内だけで行なうのでなく、外部から調達する「オープン・イノベーション」の流れがあります。IV社は、特許の流通を促進することで、そのような研究開発の外部化を支援することを狙っている企業です。ビジネスとしては、事業へ投資するのでなく、研究開発(の成果物としての特許)への出資を募っている特許ファンドです。
 チェスブロウのオープンビジネスモデルという本では、IV社を単にイノベーション仲介企業でなく、独自のビジネスモデルを持つ企業として紹介しています。著名な研究者を集めたインベンション・セッション等により、「特許の応用分野のポートフォリアを構築」(P.221)して、「新規分野に参入しようとしている企業にとって特許のワンストップショップになる」(P.223)ことを狙っている企業です。

 IV社は自らをパテントトロール(特許を保有していても自分では特許を実施せずに、特許を実施する企業から多額の収入をあげようとする企業)ではないと言っていますが、違いはあいまいだと思います。IV社は、結果として多くの特許を保有することになるわけで、もしも保有している特許を侵害された場合には、投資家のため(特許から得られる利益を最大化するため)に、法的な手段に出るはずです。そのように、パテントトロールのようなこともする場合があるでしょう。

 メーカーは、自社製品を差別化するための技術はなるべく内製化したいと考えるでしょう。有効な差別化や新規市場開拓につながる技術の特許の値段はつりあがることになるため、利益を上げにくくなるためです。製造はEMS、研究開発はIV社のような企業、とメーカーが両面で頼り切ってしまうは、当然問題でょう。
 そのため、メーカーは、どのような場合に「オープン・イノベーション」を行なうのか、その方法はどうするか、という問題を考えることが大切になるでしょう。

 個人的には、IV社のようなビジネスモデルは、パテントトロールになる危険性が高いので、あまり賛成できません。研究開発のコンサルのようなビジネスならば問題ないと思いますが、現状の特許制度では独占(差し止め)が大きな武器になってしまいます。久野さんが提唱されている「第2世代知財」や、私が発案中の元祖権のような、独占しない知財制度を考えてゆく必要を感じます。

 ところで、年内の学会発表の予定ですが、11/29(土)に、同志社大学(京都)にて、情報処理学会 第42回電子化知的財産・社会基盤研究会で発表予定。なお、京都へは日帰りの予定。
 12/19-20には、一橋大学(東京・国立市)で開かれる応用計量経済学会の国際コンフェレンス(特許とイノベーション:"Patent and Innovation")で発表予定(poster sessionですが)。

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October 23, 2008

「仕事って、一生懸命やれば、・・・」(「OLにっぽん」第3話より)

 先々週書きましたように、日テレのOLにっぽんというドラマは、総務の仕事を海外へアウトソーシングしようという事件を通して、日本のOLがどのように変わればいいのかを考えさせる番組といえるでしょう。昨夜の放送(第3話)のストーリーで、その辺りが具体的になってきました。

 昨夜の放送の中で、典型的な「腰掛けOL」だった矢部桜が、中国人研修生に刺激されて仕事に積極的になった矢先、大きなミスをしてしまったことで、リストラされそうになって、半泣きで言った言葉。

 「仕事って、一生懸命やれば、楽しいんですね。今頃、そんなことに気付くなんて、・・・」

 この言葉から、就職しても職場環境/条件などを理由にすぐに辞めてしまう最近の若者のことを連想してしまいました。私のゼミのOB/OGでも、1年程度で仕事を辞めてしまう者が何人もいました。仕事のおもしろさが分かる前に辞めてしまうのは、もったいないです。やはり、粘り強く仕事を続けることで、仕事の楽しさを感じてゆくことが大切なのだと思います。

 また、昨夜の放送で、日本企業が中国へアウトソーシングしたことで会社を辞めなければならなくなった人について、小旗(阿部サダヲ)は神崎(観月ありさ)に次のように説明しました。

 「あなたたち日本人が劣化したからです。」「中国人が日本人を追い出したのでなく、日本人が日本人を追い出したんです。」

 このようなことも考えなければならない点でしょう。日本企業は、これまでの成功体験から努力を怠って、「日本的経営」と言われるようなやり方を常識化してしまったことで「劣化」していないか、という問題です。脚本の中園ミホは、厳しい目で日本企業に問いかけている感じです。

 今後の放送も楽しみです。学生にも見ることを勧めます。

 ダイヤモンド社のサイトに、OLにっぽんに関連した記事「総務や経理まで中国へ業務移転 日本からホワイトカラーの仕事が消えていく」が載りました。このようなことを考えながら、学生にはこのドラマを見て欲しいものです。

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October 19, 2008

ネット通販はシニア層・日用品へと拡大

 先週10月15日の日経MJの1面記事「2008年版eショップ・通信販売調査」で、ネット通販の市場規模が前年並みの21.4%と拡大を続けている理由として、シニア層と日用品をあげています。(昨年の調査結果についての私の感想はこちらへ。)

 その先週の日経MJの記事では、まず、若年層から中年層が中心だったネット通販の利用がシニア層に拡大していて、日常的に食品などの購入を行なうシニア層が増えていることを「シニア層が動いた」と指摘しています。商品の種類では、普通に店で買えるような日用品のネット通販での売上が急増(Yahooショッピングでのトイレットペーパーの売上が前年同月比で60%増、トイレタリー類も60%増)しています。シニア層ですと、重たい荷物を家まで持ってきてくれる通販サービスはありがたいということのようです。米や水のような食品から、日用品にも広がってきた感じです。

 このような動向から、各スーパーはネットスーパーに積極的です。イトーヨーカ堂は昨年、ネットスーパーとは別に、 約10万点の商品扱うショッピングサイトも開設して、日用品なども販売を始めています。また、楽天は今年7月、食卓.jpの運営や、マルエツ・紀ノ国屋のネットスーパーの運営を行なうネッツ・パートナーズを子会社化するなどして、ネットスーパーへの対応を進めています。その詳細は、食品スーパー、ネットの乱という日経ビジネス2008年8月25日号の記事をご覧ください。
 先週、アマゾンジャパンも、食品&飲料ストアをオープンして、食品分野に進出しました。マーチャント@amazon.co.jp(モール)には、高島屋、オイシックス、ゴディバジャパン、成城石井などが出店しています。

 食品のネット購入では、店舗やネットのブランドで「安心感」を感じてもらえるかがポイントになるでしょう。また、食品と併せて日用品などいろいろな商品も同時に購入でき配達してくれるサイトが今後は望まれるでしょう。

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October 09, 2008

日テレのドラマ「OLにっぽん」が訴えているテーマ

 昨日から日本テレビのドラマOLにっぽんが始まりました。配役等が話題になっているようですが、私にはこの番組が訴えようとしているテーマがとても興味深いです。総務の仕事を海外へアウトソーシングされてしまうことに対して、日本のOLがどう対応するかというテーマです。

 私は、この番組で参考にしたと思われるNHKのドキュメンタリー番組を知っています。昨年9月に放送されたNHKスペシャル 人事も経理も中国へという番組です。通販のニッセンが多くの業務を中国にアウトソーシングしていることを取材していて、人事や経理の業務についても、半分程度は中国にアウトソーシングし始めたことを取り上げた番組でした。
 実は、私はこのドキュメンタリー番組をDVDに録画していて、私の授業の中で学生に見せています(最初の十数分位ですが)。授業のなかで、リエンジニアリング・アウトソーシング・シェアードサービス・BPO等を講義する際に、具体例としてこのような番組を見せているのです。女子学生で「事務の仕事がいい」という学生が多くいます。これまでは大企業での事務の仕事は「お気軽OL」という感じが強かったと思います。職業観を養いさせるためにも、このような番組を見せることで、楽な仕事は無いということを分かってもらいたいのです。

 フラット化する世界という本が数年前に話題になったように、人件費の安い国への業務へのアウトソーシングは世界的な潮流です。米国ではインド等へのアウトソーシングが当たり前になってきましたが、日本でもこれからは避けられないはずです。特に、景気が悪くなれば、中国等の人達でもできる仕事はどんどんと海外に出てゆくでしょう。そのような中で、日本のOLはどう変わるべきかを考える上で、この新番組はとても興味深いです。「ハケンの品格」もおもしろかったですが、中園ミホの脚本は社会派的なテーマを楽しいドラマ仕立てにしてくれていて教員にはありがたいです。学生にも見ることを勧めます。

[追記](2008/10/19)
 中国へのBPO/アウトソ-シングに関しての現地事情や注意事項を著した書籍として、「本社も経理も中国へ」(海野 惠一 著)を見つけました。中国(特に、大連)の事情や具体的なBPOの進め方がよく分かる本です。海野氏は、この本の最後で「2008年が日本のBPO元年となる予感」という予測をされています。

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October 05, 2008

サイバースペースの秩序のための規範

 サイバースペースの秩序・規範について、レッシグと池田信夫の本から少し考えてみました。

 CODE VERSION 2.0の中でレッシグは、サイバー空間でのCodeという概念を二つの意味で使い分けています。
 ・東海岸のCode(議会が立法する「規範」という意味)
 ・西海岸のCode(プログラムの「コード」の意味で、サイバー空間を機能させているもの)
 レッシグの本は、憲法学者の視点から、その2つの面を突っ込んで考えていて、とても興味深いです。

 現状、多くのネット企業は、著作権やネットの検閲などの問題で、「東海岸のCode」が「西海岸のCode」に影響を与えようとしていることに警戒感をもっているわけです。
 しかし、「東海岸のCode」が十分に整備されていない状況で、「西海岸のCode」が突っ走ってしまって、市民が迷惑を被ることもあります。Googleストリートビューがいい例です。米グーグルの法務担当副社長が9/29に効率的な新サービス導入には事後承諾がベターと語っていますが、これは全く西海岸の開発者側(とGoogle愛好者側)の論理であり、迷惑を被る市民への配慮は十分とはいえません。一部の人がネットを利用するという時代ではなくなり、サイバー空間の外にも大きな影響を与えるようになったため、全市民向けの秩序のために「東海岸のCode」側の対応がもっと必要になってきたといえます。

 また、ネットのサービスの競争政策についても、「東海岸のCode」は現状では十分に機能していません。GoogleやYahooなど寡占状況になってしまっているのは、ビジネス方法特許の成立が難しくなり、サービスをすぐ真似されてしまう、といったことが影響していると思われます。私が提唱している元祖権は、ネットのサービスのそのような状況に対しての競争政策の1つの案です。

 池田信夫氏は、ハイエク 知識社会の自由主義という本の「おわりに」で、「サイバースペースの秩序も、これから100年ぐらいかけて徐々にできていくのかもしれない」と述べています。ハイエク的な思想で考えるとこのような結論になるかもしれません。しかし、100年では遅すぎるように感じます。社会の混乱を避けネット社会が健全に発展するためには、今後10年程度で、サイバースペースの秩序のおおまかなところは形成されるべきでしょう。ネットに関係する学者(私を含め)は、そのためにがんばらないといけないでしょう。

 ネットに規制が入るのを毛嫌いする人は多いです。しかし、適切なルールが作られないといけないのです。「規制」というよりも、社会問題・競争政策などの「秩序」をもたらす「規範」が必要です。これは、西海岸の人達だけに任せるわけにはいきません。Googleストリートビューの問題で、このようなことを再確認できました。

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