インテレクチャル・ベンチャーズ社とオープン・イノベーションとパテントトロール問題
週刊東洋経済 2008年10月25日号の「特許大異変/発明家の復権によりイノベーションは加速する」という記事では、今後は研究開発が水平分業化に進むのでないかという指摘がされています。その記事の中で、インテレクチュアル・ベンチャーズ(IV社)が取り上げられています。Business i.の10/7の記事「日本に“新しい資本主義”上陸」では、IV社の日本法人の設立記念セミナー・レセプションの模様が報道されています。テレビ東京のWBSでも、10/14の「知の争奪戦」という特集の中でIV社を取り上げたようです(私は見逃しましたが)。そのように、今月はIV社のことが話題になっています。
研究開発も企業内だけで行なうのでなく、外部から調達する「オープン・イノベーション」の流れがあります。IV社は、特許の流通を促進することで、そのような研究開発の外部化を支援することを狙っている企業です。ビジネスとしては、事業へ投資するのでなく、研究開発(の成果物としての特許)への出資を募っている特許ファンドです。
チェスブロウのオープンビジネスモデルという本では、IV社を単にイノベーション仲介企業でなく、独自のビジネスモデルを持つ企業として紹介しています。著名な研究者を集めたインベンション・セッション等により、「特許の応用分野のポートフォリアを構築」(P.221)して、「新規分野に参入しようとしている企業にとって特許のワンストップショップになる」(P.223)ことを狙っている企業です。
IV社は自らをパテントトロール(特許を保有していても自分では特許を実施せずに、特許を実施する企業から多額の収入をあげようとする企業)ではないと言っていますが、違いはあいまいだと思います。IV社は、結果として多くの特許を保有することになるわけで、もしも保有している特許を侵害された場合には、投資家のため(特許から得られる利益を最大化するため)に、法的な手段に出るはずです。そのように、パテントトロールのようなこともする場合があるでしょう。
メーカーは、自社製品を差別化するための技術はなるべく内製化したいと考えるでしょう。有効な差別化や新規市場開拓につながる技術の特許の値段はつりあがることになるため、利益を上げにくくなるためです。製造はEMS、研究開発はIV社のような企業、とメーカーが両面で頼り切ってしまうは、当然問題でょう。
そのため、メーカーは、どのような場合に「オープン・イノベーション」を行なうのか、その方法はどうするか、という問題を考えることが大切になるでしょう。
個人的には、IV社のようなビジネスモデルは、パテントトロールになる危険性が高いので、あまり賛成できません。研究開発のコンサルのようなビジネスならば問題ないと思いますが、現状の特許制度では独占(差し止め)が大きな武器になってしまいます。久野さんが提唱されている「第2世代知財」や、私が発案中の元祖権のような、独占しない知財制度を考えてゆく必要を感じます。
ところで、年内の学会発表の予定ですが、11/29(土)に、同志社大学(京都)にて、情報処理学会 第42回電子化知的財産・社会基盤研究会で発表予定。なお、京都へは日帰りの予定。
12/19-20には、一橋大学(東京・国立市)で開かれる応用計量経済学会の国際コンフェレンス(特許とイノベーション:"Patent and Innovation")で発表予定(poster sessionですが)。

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