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April 10, 2008

[書評]「経営の未来 マネジメントをイノベーションせよ」

 先々月出版されたゲイリー・ハメルとビル・ブリーンによる経営の未来 マネジメントをイノベーションせよという本を先週から今週にかけて読みました。ネット書店の書評やブログを検索すると、好意的な書評が多いようですが、少し辛口な批判をしてみたいと思います。

 この本の価値を適切に評価するためには、イノベーション・マネジメント(トニー・ダビラ他、英治出版、2007年) やイノベーションの経営学(ジョー・テッド他、NTT出版、2004年) といったイノベーション経営の本と合わせて読んだほうがいいと思います。なお、これまでのイノベーション経営の本としては、MOT(技術経営)的な内容が多かったですが、「イノベーションの経営学」ではオープンソースコミュニティのことまで出てきますし、「イノベーション・マネジメント」の本では、サービスやビジネスモデルの面のイノベーションやオープンイノベーションの事例も多く出てきます。

 もともと、ゲイリー・ハメルは「コア・コンピタンス経営」という本で知られた人です。経営学の理論でいうと、資源アプローチ(リソースベースド・ビュー)という立場の学者で、その立場から未来のイメージを基にした戦略立案・企業改革・パートナーシップを提唱してきた人です。そのハメルが、「ここ数年、ロンドン・ビジネススクールの二人の同僚とともに、経営管理イノベーションの歴史を研究してきた」 (P.24-25) 結果として、まとめた本のようです。
 ですので、事例の分析はしっかりしていると思います。4章=ホールフーズ・マーケット、5章=W・L・ゴア、6章=グーグル、10章=主に、IBMの新規事業機会(EBO)プロセス、の事例分析は、一読の価値があると思います。

 ですが、結論や方法論の面では、もの足りなさを感じます。11章の「マネジメント2.0」については、著者自身が「予言」と言っているように、しっかりとした方法論とは思えません。他方、「イノベーション・マネジメント」の本では、イノベーション経営の方法論まで突っ込んで、7つのルールとしてまとめています。

 具体的には、「経営の未来」のP.37「図2-1 イノベーションの階層」では、製品・サービスイノベーション(テクノロジー)と戦略イノベーション(ビジネスモデル)を階層的に位置付けています。このように階層として見るのは、あまり適切ではないと思います。「イノベーション・マネジメント」の本のP.44「図2 イノベーションマトリクス」では、テクノロジーとビジネスモデルのイノベーションはどちらかというと並列的に示されていて、両方とも従来にない新しいものであれば、ラディカル(画期的)なイノベーションをもたらす、といった具体的な組み合わせを推奨しています。単純に階層的に見てしまうと、このような手法につながらないでしょう。
 「イノベーションの階層」と「イノベーションマトリクス」の図へ。

 結論としては、このゲイリー・ハメルとビル・ブリーンによる「経営の未来」という本は、イノベーション経営の入門書として、イノベーション経営の重要性を理解するのには適した本だと思います。しかし、実際にイノベーション経営を実践する場合には、この本の事例分析を参考にはできると思いますが、具体的な方法論については他の本(最初にあげた2冊など)を参考にしないといけないでしょう。

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