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August 31, 2007

ペルソナを用いた設計とペルソナ・マーケティング

 「ペルソナマーケティング」といった言葉が最近流行っていますが、元になったのは、Microsoftのユーザー・リサーチ・マネージャのJohn S. Pruitt他によるペルソナ戦略という本です。DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー2007年7月号には、その本の概要をまとめた高ユーザビリティ製品を開発する ペルソナ:顧客経験のデザインという文献もあります。

 私も20~30歳代にはソフトウェアの開発をしていまして、その頃はよくユーザビリティの向上策に頭を悩ましていました。ソフトウェアの使い勝手を向上させるには、利用者全員から要望をもらって、それをすべて取り入れればいい、というものではありません。コンピュータ利用については個人差が大きいため、全員に対して使い勝手が最高、ということはありえません。また、利用者全員の要望を開発者間で共有することは難しいですし、すべての要望を取り入れようとすると、シンプルさや統一性が無くなり、かえって煩雑さを増してしまうことにもつながりかねません。実際、多くの利用者の要望を取り入れようとして失敗した製品もありました。

 そのような状況から、Microsoftでは「ペルソナ」という考え方が生まれたわけです。「数多くのユーザーをユーザーを満足させようとするよりも、たった一人のために設計・開発したほうが成功する」という考え方です。典型的なユーザ像を仮想的に「ペルソナ」として作成し、そのペルソナが満足できるように設計するものです。ブログを検索したところ、ビズ・ナビ&カンパニーのビズナビホットラインというブログの中で、マイクロソフト社がWindows Vistaの製品プランニングにおいてペルソナの概念を用いて開発を行っていることについて、具体的に述べられています。ソフトウェア開発においては、「提供したいシナリオをペルソナを用いて書くことによって、開発者の独りよがりの発想による実装を避けることができる」ということがポイントなわけです。

 そのような「ペルソナ」の考え方が、ソフトウェア等の設計だけでなく、汎用的なマーケティング手法として広まりつつあります。日経BPによると、南都銀行は、サービス改善のために「ペルソナ」を作成した事例。プロフィールや価値観が伝わるようなエピソードまでペルソナに書き込み、その顧客に関連する担当者全員で共有することで、サービス改善につなげようという試みです。南都銀行については、personadesign.netによる事例解説もあります。日経情報ストラテジー 2007年10月号 特集1 究極の顧客像を構築せよ 「ペルソナ」マーケティングという特集には、大和ハウス工業・日立アプライアンス・横浜デジタルアーツ専門学校の事例が載っています。それらは、ペルソナを作って社内で共有することで、販促やサービス改善などに取り組んでいる事例です。なお、大和ハウス工業・日立アプライアンスの事例は、Pruittの本(訳本)に国内の応用事例として追加されています。

 マーケティング面でペルソナを作って広く企業内で共有することは、担当者間の意識合せや、マーケティングの方向合せで効果的と考えられます。また、個人情報保護法の問題から、特定の個人の情報を企業内で広く共有することはできないわけですが、「ペルソナ」にしてしまえば広く共有できるわけです。ただし、ペルソナを作る際に、個人を識別できるような情報を使うようであれば、「いただいた個人情報は、ペルソナを作るために利用させていただきます」というような注意事項を入れる必要があるでしょう。

 John S. Pruittの書籍では、主に製品設計の手法としてペルソナが提案されていますが、ナレッジマネジメント活動としてペルソナを作成・共有することにより、効率的なマーケティングにつながると期待できます。なお、サービス向上のためには、VOC(Voice Of Customers)活動も同時に行ったほうがいいでしょう。その場合、「顧客の声」の優先付けにペルソナを利用するのがいいでしょう。

 ところで、明日から1週間ほど、旅行などによりネットが利用できないかもしれません。メールやこのブログへコメントをいただいても返信が遅れてしまうと思います。ご了承くださいませ。

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