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June 29, 2007

パブリックコメント制度に関する問題点

 知的財産推進計画2007に関連した話題ですが、日経IT-PLUSのサイトに先週掲載された「アップル」名乗るパブコメが提起した2つの問題という岸博幸氏のコラムがネットで話題になっています。

 私的録音録画補償金制度などの著作権制度に関しての岸博幸氏の意見については、池田信夫ブログ小倉弁理士のブログを見てもらえばいいかと思います。私は、日本知財学会に入会していて、7月1日には学会発表もしますが、著作権よりも特許・イノベーションのほうが専門ですので、著作権制度の問題については、意見を控えたいと思います。今回、私はパブリックコメント制度について、少し考えてみました。
 
 私も以前、パブリックコメントを提出したことがあります。私が提出したパブリックコメントのフォーマットでは、「氏名」の欄に、「企業・団体の場合は、企業・団体名、部署名及び担当者名」と注意書きがあるだけでした。なお、公開する際は、担当者名は外して公開しているようです。パブリックコメントは、「意見提出期間を定めて広く一般の意見」を求めるものです。社印などは不要ですし、組織でオーソライズされたオフィシャルな見解を出すようには特段定められていないようです。ですので、ある組織の担当者が自分の意見を、所属する組織の名前で出すことを禁止してはいないと解釈されます(道義的には、組織内でオーソライズされた見解のほうが望ましいでしょうが)。組織内で意見調整したり、トップに了承を求めたりするのも面倒です。
 実は、私が以前提出したパブリックコメントでも、学科の名前で提出したのですが、時間がなかったので(学科会議は月に1回であるため)、学科としての正式な了承を得ずに提出しました。事後に口頭で話した程度でした。

 ですので、例のパブリックコメントはアップルジャパンからの意見として公開されていますが、アップルジャパンの一社員が個人的な意見(または、部署のレベルの意見)として提出したのかもしれません。アップルがノーコメントだからといって、「なりすまし」と騒ぐのは大げさだと思います。パブリックコメント募集元が、必要に応じて(その企業から出るはずのない変な意見が出された場合など)、提出された意見の担当者に本人確認すればいいだけです。そんな手間とも思えません。または、提出された時点で、担当者に提出受付確認メールを送るといった方法もあります(「貴殿が提出していないようでしたら、ご返事ください」という文面付きで)。

 岸博幸氏は、官僚出身だけあって、性悪説で見てしまうのでしょうか?元官僚の方には、性善説に立脚するWikinomicsのようなことは理解できない人かもしれません。また、産業振興という観点から、レコード会社の事業を心配してしまって、著作者個人のことはよく見えないのかもしれません。また、岸氏は、アップルのパブリックコメントは「常識ではありえない一方的批判」と言っていますが、この辺りも官僚的な意見だと思います。アップルの意見はある程度筋が通っています。しっかり言っているのは気持ちがいい位です。弁理士の方でも、意見書にこの位しっかり述べる人はいます。岸氏は政府・官僚に対して一企業は「へりくだる」のが当然、とでも言いたいのでしょうか?

 岸氏は、パブリックコメントを募集する際、もし「なりすまし」のコメントがきたら、ということを心配されています。しかし、私がもっと問題だと感じるのは、パブリックコメントに対する回答の問題です(一部変更:2007/6/30)。
 意見公募手続等の概要によると、行政手続法の【結果の公示等(第43条)】には次のように定められています。

・命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、(1)命令等の題名、(2)命令等の案の公示日、(3)提出意見、(4)提出意見を考慮した結果及びその理由、を公示しなければならない。
 一般に、「(3) 提出意見」は公開されています。しかし、知的財産推進計画2007では、「(4) 提出意見を考慮した結果及びその理由」を公開してはいません(一部変更:2007/6/30)。  どう検討されたかは、パブリックコメントを出した企業・個人にとって大きな関心事です。1つ1つ回答してくれとはいいませんが、似たような意見が多く出ていた場合には、答えるのが筋でしょう。例えば、知的財産推進計画のパブリックコメントでは、個人からの意見としてJASRACを批判する意見が多く出されていました。このような意見に対して、知的財産戦略本部は考慮したか否かという検討結果を何も答えてはいません。それでは、パブリックコメントを出した人達にはとっては納得がいかないでしょう。単に「ガス抜き」しているようです。

 このように、パブリックコメント制度では、【結果の公示等(第43条)】の (4) の公開を徹底するべきです。そうでないと、この制度の意味はとても弱いものになります。

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