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December 25, 2006

サービスサイエンスとサービスイノベーション

 今年は、サービスサイエンスやサービスイノベーションという用語を、雑誌やネットなどでよく目にしました。今日は、それらをまとめておきたいと思います。

 サービスサイエンスについては、IBMが提唱した考え方のようです。ビジネス雑誌では、昨年、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューに出てきて、それから他の雑誌や学会で取り上げられました。サービスイノベーションも、今年から言われ始め、今月には経済産業省に研究会が正式に発足しました。

[サービスサイエンス]

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
2005年のパワー・コンセプト(下)14. 「サービスの科学」を拓く(2005年6月号)
・サービス・エコノミーのフロンティアのシリーズ
 [第1回]デリバード・バリュー・プライシングへの挑戦(2005年10月号)
 [第2回]サービス・サイエンスの可能性(2005年11月号)
 [第3回]サービス・プロフェッショナルを育成する (2005年12月号)

サービスサイエンスとは何か(富士通総研のレポート)

日経コンピュータ2006/5/1号「議論百出する“サービス・サイエンス”」

情報処理2006.6月号(Vol.47 No.5)「サービス・サイエンスの出現」

一橋マネジメントレビュー2006年秋号.AUT.「特集 サービスを科学する」

ダイレクトマーケティング学会の部会

サービス・サイエンス論(亀岡先生)は北陸先端大の講座。昨年から開講。

[サービスイノベーション]

日本企業のサービスイノベーション(野村総研のレポート. 2002年)

サービス・イノベーション:メーカーにとっての課題(SRIのレポート. 2005年)

サービスサイエンス・イノベーション有限責任事業組合

サービス・イノベーション(富士通総研の研究テーマ)

サービス・イノベーション・シンポジウム(IBM)

サイエンス化で切り拓く知識社会のサービス・イノベーション(日立総研の研究テーマ).その方法論の詳細はこちら

サービスイノベーション研究会(東京大学での産学連携の研究会).2006年10月に開かれたフォーラムの内容はこちら

経済産業省 第1回サービス産業のイノベーションと生産性に関する研究会(2006.12)

 検索してみましたが、個人のブログで、サービスイノベーションを取り上げているところは少ないです。社会人大学院で学ぶ技術経営というブログで、何回かサービスイノベーションを取り上げています。

 私としては、来年は、情報化事例・eビジネスのイノベーション(マッシュアップによる再発明など)・サービスイノベーションのための知的財産権(新知的財産権の提案など)、の3つの面から、サービスイノベーションに取り組みたいと考えています。

 目標としては、来年春の経営情報学会・日本知財学会、秋の研究・技術計画学会(最近、入会しました)の全国大会で発表したいと考えています。できれば、本にでもまとめたいですが。

[追記 (2009/5)]

 このエントリーの後に、サービスイノベーション関連で次のような記事を書いております。

 ・ヤマト運輸のサービスイノベーション March 14, 2009

 ・[書評] 顧客はサービスを買っている February 18, 2009

 ・革新的なサービス企業の事例を聞きました December 09, 2008

 ・ディズニーのサービスイノベーション March 10, 2007

 ・加賀屋のサービスイノベーション March 05, 2007

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December 20, 2006

Googleに特許検索を独占させてしまうのは危険

 先週、Googleは、米国特許を対象とした特許検索サービスとして、Google Patent Searchを始めました。この件については、ITmediaのニュースCNETのニュースパテログなどで、報じられています。

 使ってみた感触としては、米国特許商標庁(USPTO)の特許検索ページと比べて、ずっと使いやすいものでした。

 Google Patent Searchでは、検索結果から選ぶと、まず、概要・請求項・図(最初は3個)・参照特許を1つの画面で見ることができます。他の特許からの被参照情報も載っていますが、ちょっと少ない感じです。ちなみに、USPTOの特許検索ページでは、各特許の最初の表示画面はテキスト表示で、図は出てきません。検索結果の画面の「Images」のボタンを押して始めて表示されます。

 また、Descriptionを含む全文(明細書イメージ)を読むための画面では、Ajaxを使ったなめらかなスクロールが可能です。"Search within this patent" ができるのも便利です。検索語は、検索結果の明細書の上にカラーで強調表示されます。

 ダイレクトリンクも可能です。例えば、Method and system for managing attraction admission (U.S.Pat.No. 6,173,209)は、ディズニーランドのファストパスの仕組みと思われる特許へのダイレクトリンクです。(これは、日本でも昨年特許化しています。特許第3700833号。私の「eビジネス」の授業の中で情報システムの特許の例としてあげました)

 Googleは、他の国でも、同様な特許検索サービスを行う計画とのことなので、日本の特許の検索もサービスされるようになるのでしょう。日本の特許庁の特許電子図書館のサービスは、最悪(ユーザインタフェースの悪さ、メンテナンス期間の多さ・長さなど)なので、日本でサービスされた場合には、多くの人は特許電子図書館よりもGoogleのサービスを使うようになるでしょう。大企業のメーカー等でよく使われている有料の特許検索サービスも大打撃でしょうし、単純な特許検索機能はサービスをやめてしまって、特許マップ機能といった高付加価値の機能だけを提供するところも出てくるでしょう。

 使ってみていて、この検索サービスの検索結果のランキングの求め方(どのような順番なのか)について、疑問を感じました。About Google Patent SearchのページのFAQを見ると、"We use a number of signals to evaluate how relevant each patent is to a user's query" と書かれていました。ページランクのように特許間のリファレンス関係を使っているかと思いましたが、やはり、そういうことはしていないようです。論文と違い、米国特許での他特許のリファレンスは弁理士が調べて加えていたりするので、あまり参考にならないでしょう。

 Googleが、どのようにビジネスにつなげるかも興味深いところです。単純に、特許検索の結果画面に検索連動型広告を出すだけとは思えません。多くの人が参照している特許を持つ企業や発明者について、一般の検索でのページランクを上げるようなことをするかもしれません。そのように考えてゆくと、もしもGoogleが特許検索をほぼ独占してしまうと、とても恐ろしいことになると気づきました。特許は、一般のネット情報よりも、専門的でありビジネス上で重要な情報であるためです。一般のネット情報の検索ログを集積したデータから「一般大衆の興味」に関する情報を抽出することができますが、特許の検索ログを集積したデータからは「産業上の関心」に関する情報を抽出することができるのです。

 以前(たしか1997年)、一時、IBMがネットで無料の特許検索機能を提供しました。その際、他のコンピュータメーカーは、警戒して、会社からそのサービスを使うことをためらった、と言われます。なぜなら、その企業がどの特許に関心があるかをIBMに感づかれてしまう危険性があるためです。IPアドレスでアクセス(検索)した企業を調べることができるため、参照状況から関心度をうかがえるためです。

 それと同じように、Google Patent Search が広く使われるようになった場合には、Googleは、どの国のどの企業がどの特許に関心があるかが分かってしまいます。Googleは「悪いことはしない(Don't be evil)」と言っていますが、このような情報を「悪用」できます。例えば、どんな技術が期待されているかがこっそり分かるため、期待されている技術を持つ会社へ先回りして投資することで、大きな利益を得ることができるでしょう。また、どの国がどの技術分野に関心があるかもリアルタイムで分かるようになるので、国際間での技術の売り込みなどでの交渉に関わることができるようになるでしょう。Google自身ではしなくとも、そのようなことを行うための情報を高く売るかもしれません。そのように、特定の民間企業に、幅広い業種の国際的な「産業上の関心」に関する情報が集まってしまうのは、とても危険なのです。

 このような理由から、Googleに特許検索の独占を許してはならないと強く感じています。

 日本で、情報大航海プロジェクトが政府中心で進んでいます。しかし、私は、政府には一般の検索をターゲットにはせずに、特許検索や論文検索だけに注力してもらいたいと思います。特許検索や論文検索は、検索ログがとても大きな意味を持ち、国の科学技術政策やイノベーション促進の政策に関わるため、オルタナティブの提供の意味は大きいです。特許検索や論文検索だけは、Googleのような民間企業に独占されないように、必死で取り組むべきだと思います(規制するのもおかしいですので)。

[追記]
 弁理士の的場成夫さんのブログによると、既に「とある企業では、会社のアドレスからのアクセス禁止 の指令が出ているとのこと」です。

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December 11, 2006

バネバー・ブッシュのMemex

 インプレスのWBB Forumというサイトで、インターネット・サイエンスの歴史人物館という企画が先月から始まっています。このような企画は、大学で教えている者にとってはありがたいです。若い人には、流行のこと(Web 2.0 等)だけでなく、時にはネットの歴史をひもといてもらいたいです。

 その企画の第1回は、バネバー・ブッシュでした。私が選ぶとしても、バネバー・ブッシュを一番に考えるでしょう。一般にはあまり知られていませんが、World Wide Web のルーツを調べてゆくと、バネバー・ブッシュの発明したMemexにたどりつくのです。

 Memexの考え方とそれがハイパーテキストに与えた影響については、From Memex to Hypertext: Vannevar Bush and the Mind's Machineという本に詳しいです。ブッシュがMemexについて書いた "As We May Think" や他の論文が含まれます。また、"As We May Think" をもじった論文が書かれているなど、ブッシュの影響力の大きさがうかがえます。

 "As We May Think" は、日本語訳もされています。電網新世紀(パーソナルメディア,2000年)という本のP.52-63「われわれが思考するように」(ただし、抜粋) があります。図書館で探してみてはいかがでしょうか? また、この電網新世紀という本には、MITのT.Maloneの「電子市場と電子ヒエラルキー」も収録されています。この論文も影響力の大きかった論文です。なお、電網新世紀という本と私の書いたeビジネスの本とは、カバーの感じがよく似ているので、私の本棚では並べて置いています。

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December 03, 2006

イノベーション25に意見を送りました

 先月14日のエントリで示しました「元祖権」のアイデアを、本日、イノベーション25の意見募集のページから送信いたしました。次のようにまとめました。

 大学で教鞭を取っている者ですが、サービスイノベーション(流通も含む)について、本格的な取組みを取ることを提言いたします。日本では、サービス/流通の分野でのイノベーションは、欧米よりも大きく後れをとっているためです。ただし、長期的な視野でみると、医薬・工学・ITのような理系の技術革新とは、異なる促進方法を考える必要があるでしょう。
 そこで、新たな知的財産権の導入を提唱いたします。 これは、単に重点分野にお金をつぎ込むよりも、イノベーションが自然と促進されるための制度による効果がずっと大きいと思われるためです。今日、サービス/流通のイノベーションを促進する制度として、特許では保護できる範囲が狭く不十分です。これは、ビジネスモデル特許の審査で「発明ではない」(「自然法則を利用」する要件を満たさない)として拒絶される例が多いことから分かります。特許制度では、技術の面が伴わない仕組みやビジネスモデルは、いかに革新的であっても権利化できないのです。
 そのため、サービス/流通の仕組みやビジネスモデルでは、「自然法則を利用」しなくても権利化できる制度が望まれます。ただし、サービス/流通では「独占」は望ましくないため、特許のように独占するのではなく営業的な優位をもたらす制度を考えるべきです。なお、知的財産戦略本部は長期的視点で考えていないため、知的財産権の見直しまで行おうとはしていないようです。
 具体的には、「元祖権」(仮称)を提案します。この権利は、特許と同じように新規性や進歩性(容易に思いつかない)が審査されますが、「自然法則を利用」という要件は緩和します。元祖権を取得できた場合には、「自分が元祖」と正式に主張できるだけでなく、他社が真似して同じサービスを実施する場合には、元祖権を持つ会社が「元祖」であることとその問合せ先を、真似した会社のカタログやWebページ上に表示することを義務付ける制度です。独占やライセンス料はありませんが、他社が真似した場合に、元祖権を持つ企業が必ず営業的な効果を得られるようにする制度である。また、商標登録していれば、第三者に対しても、商標表示の際に元祖の表示も義務付けます。

 詳細は、小生のブログに載せております。
  http://hatakama.cocolog-nifty.com/strategicit/2006/11/post_5f13.html」

 今後、詳細を詰めて、来年度の日本知財学会の学術研究発表会(6月頃開催)あたりで、具体的な提案を行いたいと考えます。

 これから今年の授業期間が終わる18日までは、忙しい状況が続きそうです。残りの授業の準備だけでなく、ゼミ生4年の卒論の指導、ゼミ生3年の就活の相談、1-2月に行う集中講義の準備などです。そのため、18日位まではブログの更新ができそうにありません。失礼します。

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