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November 10, 2006

レコメンデーションの動向

 2003~2004年頃には、一時、ネットでレコメンデーションやパーソナライゼーションを行うことの有効性について疑問視する声が高まりました。ウェブパーソナライゼーションを酷評するレポート発表という2003年のニュースがありましたし、ブログではリコメンデーション(レコメンデーション)の現実と幻ネットにおけるレコメンドは有効かといった意見が以前ありました。

 それが、ロングテール理論の中で、レコメンデーションは、多くにニッチ商品の中から自分にあった商品を見つけるための「フィルタ」の代表的な機能として位置づけられたため、昨年あたりから重要性が見直された感じです。

 レコメンデーションの仕組みとしては、それまでの各個人の購買履歴などをもとに人工知能技術を使ってお薦めする機能や、協調フィルタリングの仕組みを使った協調レコメンデーションなどがあります。後者の一番単純なものは、Amazonのサービスで「この本を買った人はあの本も買っています」と薦めるものですが、さらに利用者間の近似性を求めて推薦する技術もあります。(なお、以前のエントリの中で指摘しましたように、ロングテールの和訳本の中で、「協調フィルタリング」は、「集合知を利用したフィルタ」と訳されています。間違いではないですが、おせっかいすぎる意訳だと私は感じます。)

 これらの技術の詳細については、情報の科学と技術 2006年10月号「情報のフィルタリング」特集にある、 「推薦システム-情報過多時代をのりきる」や「情報フィルタリングの利用システム:情報推薦システム」といった論文が参考になるでしょう。

 また、直接推薦するのでなく、SNSのような場で、好みの似た人同士のコミュニケーションの場を設けることで、他の人の購入商品を参考にしてもらって、購入につなげようとする狙いのサービスも出てきました。例えば、ZOZORESIDENCEは、ZOZOTOWNで購入した服などをレジデンス内の自分の部屋(ネット上)においた上で、他者とのコミュニケーションを行えます。

 実際の効果ですが、月刊「ネット販売」の2006年6月号 特集:レコメンド活用最前線において、ファンケルや楽天ブックスなどにレコメンデーション技術を提供しているシルバーエッグ・テクノロジーの社長へのインタビュー記事の中で、レコメンデーション導入によって3~10%程度の増収効果をもたらしていると言っています。ただし、運用でコンスタントに「仮説→実行→検証」を繰り返さないと数字はあがらないと警告しています。

 ところで、ネットを通した宅配DVD レンタルサービスのNetflix(ロングテール本にも出てきた)が、先月、映画推薦システムの向上者に賞金100万ドルという、「Netflix Prize」の創設を発表しています。レコメンデーション技術をさらに高めるため、他者のアイデアを求めています。

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Comments

協調フィルタリングのリンク先と「推薦システム-情報過多時代をのりきる」を書いたものです.拙著をとりあげていただいて,お恥ずかしい限りです.
数式を使わずに説明するのに工夫してみましたが,あまりうまくできたようには思えません.いかがでしたでしょうか?
推薦システムの効果ですが,推薦システムのパイオニアRiedlの解説でも,cross-selling の増加とかの直接的な効果よりも,買い物にプラスαを加えて,サイトへのロイヤリティを高めるといった副次的な効果を主張しています.
J. Ben Schafer, J. A. Konstan, and J. Riedl. E-commerce recommendation applications. Data Mining and Knowledge Discovery, Vol.5, pp. 115–153, 2001
マイクロソフトのHeckermanなどは,顧客のライフタイムで費やす購入費用の最大化などという恐ろしい論文 (;゚Д゚) を書いています.
G.Shani, D.Heckerman and R. I. Brafman, "An MDP-Based Recommender System", JMLR, vol.6, pp.1265-1295 (2005)
しかし,Riedlの指摘するように,推薦システムは利用者との信頼関係が大切なので,こうした直接的で,あこぎな戦略は個人的には疑問です.

Posted by: しましま | November 11, 2006 at 12:29 AM

しましまさん
 コメントありがとうございます。
 数式を使わずに説明するのに工夫されたとのことですが、かなり分かりやすく書かれていたと思います。ただ、私個人にとっては、数式や論理式が多少は入っていたほうがイメージしやすいです。
 なお、私はCSCWに関する研究をしていた頃(10年前位)に、協調フィルタリングのことを調べましたが、最近の動向には疎かったので、しましまさんの論文はありがたかったです。
 サイトへのロイヤリティを高めるといった副次的な効果も、確かに大事ですね。SilverEggのCEOのフォーリーによる「Webパーソナライゼーション」という本で、「パーソナライゼーションが理想とする好循環」として「ロイヤリティを獲得しリピータになってもらう」ことまでも狙いとしています。やはり大切なのは「利用者との信頼関係」を構築するということですね。
 とことで、現状の推薦システムで物足りないのは、推薦の理由(合理的な理由、または、感動や心酔など)をうまく伝えていないことです(私が知っている範囲ですが)。類似度などの数値的な計算以外に、推薦の文章を分析して、推薦する人のプロフィールのどこにマッチしそうか推論する、といったことまで考えてもらいたいです。
 それでは、ありがとうございました。

Posted by: hatakama | November 11, 2006 at 11:47 PM

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