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November 14, 2006

サービスやビジネスモデルの分野のイノベーションを促進するための新しい知的財産権の提案

 安倍総理大臣は、日本社会への新たな活力となり、経済成長に貢献するイノベーションの創造に向けて、イノベーション25という長期的戦略指針を策定しようとしています。安倍総理大臣の所信表明演説で、20年後を見据えて経済成長に貢献する分野を戦略的に伸ばしていく方針の1つとして打ち出したものです。

 高市イノベーション担当大臣からのメッセージの中に、『私たちが取り組む「イノベーション」は、単なる「技術革新」という狭義の概念ではなく、広く社会のシステムや制度をも含めた「革新・刷新」であります』とあります。また、構成メンバーに、アートコーポレーション(アート引越センター)の寺田千代乃社長が含まれています。そのため、サービスやビジネスモデルの面のイノベーションについても検討の中に入れてもらえる可能性があります。そのように、いい機会ですので、提案をしてみたいと思います。イノベーション25のサイトでは、12月末まで広く意見を募集しています。また、日本学術会議のイノベーション推進検討委員会でも、学術関係者を対象に意見を募っています。

提案の背景
 サービスやビジネスモデルは、特許としては消極的に考える人が多い。また、サービスやビジネスモデルの独占はふさわしくないと考える人が多い。特許の要件には「自然法則を利用」したものという前提がある。ビジネス方法特許のように、IT活用の面の工夫があれば特許化できる(ただし、特許査定率は極めて低い)が、純粋なビジネスモデルでは特許にできない。しかし、革新的なサービスやビジネスモデルを一番最初に考えた人・会社に対して何らかの恩恵を与えるべきである。何らかのインセンティブがあったほうが、革新的なサービスやビジネスモデルの創出を促進できるためである。
 著作権では、オープンソースやCreative Commonsといった新たな考え方が出てきている。ソフトウェアや作品の著作権の主張を弱め、共有と協調を進めることで、より価値の高いものの創出につなげる考え方である。そのため、オープンソースやCreative Commonsのように非独占の概念を取り入れながらも、革新的なサービスやビジネスモデルを一番最初に考えた人・会社に対して何らかの恩恵を与え、かつ、さらに革新を促進することのできる新しい知的財産権を提案する。

提案内容
 サービスやビジネスモデルの分野のイノベーションの発展を促進するための新たな知的財産権として、「元祖権」(もっといい言葉があるかもしれないが、分かりやすいため、とりあえず使用)を提案する。
 元祖権を取得できた場合には、「自分が元祖」と正式に主張できるだけでなく、他社が、それと同じサービスを実施する場合には、最初に発案・実施した会社が元祖であることを表示することを義務付ける制度である。独占はしないし、ライセンス料の請求もしないが、他社が真似した場合に、元祖権を持つ企業が必ず営業的な効果を得られるようにする制度である。
 例えば、A社が転勤引越支援サービスで「元祖権」を取得した場合、まずA社は、自分のサービスのカタログやWebページに「転勤引越支援サービスでは自分が元祖」と正式に記述できる。同時に、S社が同じ転勤引越支援サービスを真似して実施する場合には、S社のそのサービスのカタログやWebページに、「このような転勤引越支援サービスの元祖はA社」または「A社式 転勤引越支援サービス」というような元祖表示(とその問合せ先の表示: 12/3 追加)を行うことを義務付ける。また、同時に商標登録していれば、第三者に対しても、「○○はA社の登録商標(転勤引越支援サービスでは元祖)」と表示する義務を負わすようにする。
 この権利を得るためには、革新的なサービスやビジネスモデルを発案した人や企業が申請。登録されるためには、特許とは違って実施していなければならない。また、登録商標が不使用で取消されるように、実施を止めてしまった場合には取消理由にできるようにする。
 特許と異なるのは、
 ・物品でなく、サービスやビジネスモデルに絞る。
 ・「自然法則を利用した」という条件は不要。ただし、「高度のもの」は特許と同じ。
 ・実施することが条件。
 ・先発明主義。
 また、特許法の35条のような条項も設けることで、職務発案(特許の「発明」とは区別したい)の場合、発案者に相当な対価が渡るべきである。そうしたほうが、インセンティブが高まる。

 「元祖」というのは卑近な言葉ですので、笑い話のように聞こえるかもしれませんが、まじめな提案です。関心を持たれた方は、是非コメントをお願いします。今後さらに具体化したいと考えます。協力してくれる方を歓迎します。

[追記](2006/12/3)
 やっと、イノベーション25に意見を送りました

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Comments

ご提案の趣旨に賛同いたします。独占排他権以外の制度で、イノベーションを推進するものはないかと下記のリンク先に記載のように、色々と考えていますので、良くわかります。

http://www.patentisland.com/memo45.html
http://www.patentisland.com/memo91.html


ご提案の内容は、著作権法第32条の引用と類似した考えかたのようにも思います。元祖としての出典を明示し、元祖の著作物と、自分の著作物の区別をしながら、元祖の著作物の分量以上の分量で自分の著作物を付け加えて、正当範囲で利用するなら権利者の許諾無く利用できるというものです。
出典表示が宣伝の機能を有するものに拡張し、対象を著作物ではなく革新的なビジネスアイデアにするというものだと考えます。

なお、下記によると日本学術会議のイノベーション推進検討委員会によるアイデアの一応の応募期限は、本日のようです。しかし、期限後でも受け付けるとも書いています。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/cgi-bin/jscrp/news/index.cgi?id=27

提案活動に協力させていただきたいと思います。

Posted by: 久野 | November 15, 2006 at 07:11 PM

久野さん
 ご指摘とご賛同ありがとうございます。
 確かに、「引用」に近い考え方です。
 また、マイクロライセンス等も非独占を志向した考え方のようですが、特許権ですと経営陣の方針が変わる場合も考えられます。そのため、サービス分野の市場の立ち上げや拡大に役立つためには、全く非独占の新たな知的財産権が望ましいと思います。
 今後、御協力いただくことがあると思います。その際は、よろしくお願いいたします。

Posted by: hatakama | November 16, 2006 at 12:17 PM

 特許制度を利用することによって(いわゆる「ビジネスモデル特許」)、ビジネスモデルに対して今も間接的にある種の保護が得られる場合がありますが、本来の制度趣旨との違いを運用で凌いでいるという感は否めません。そういう意味で、ビジネスモデルの保護のあり方を正面から議論することは意義深いと思います。
 問題は保護のあり方ですが、一般論として、その必要性と新しい制度を設けて運用するための社会的コストとのバランスを考慮する必要があると思います。新しい制度を設ける場合の保護形態については、ご提案の方式は広告宣伝・品質保証機能を重視した「商標型」のように思いますが、私は一定の優先期間を与える「特許型」(例えば、3ヶ月、6ヶ月といった独占実施期間を設ける)のほうがよいように思います。なぜならば、ビジネスアイデアの保護には商標のような需要者保護の側面は考えにくく、基本的には自由競争が前提であり、開発期間・構想期間相当の猶予期間を付与してあとは自由競争というほうが「産業活性化」の視点からは好ましいと思うからです。

Posted by: 土生 | November 26, 2006 at 09:49 PM

土生さん
 コメント、たいへんありがとうございます。とても参考になります。
 確かに、「社会的コストとのバランスの考慮」が必要ですね。制度として正式に提案しようという場合には、説得力のある根拠(経済効果など)を示す必要があるでしょう。先は険しいです。
 短期の優先期間を与えるような制度については、確か、米国Amazonの社長が以前提案していたと思います。調べなおしたいと思います。
 私は、需要者保護の側面というよりも、非独占でも営業的な利益につながるような制度を狙っています。元祖の表示義務に、元祖の企業の企業名だけでなく、連絡先やリンク(Webページに場合)も付けるよう義務付けるようにすれば、もっと営業的な利益につながるように思います。元祖の企業には、自分で宣伝広告しなくても客が来るようにしてあげるのです。
 「猶予期間を付与してあとは自由競争」という趣旨では、3年間だけ物品のデッドコピーを禁止した不正競争防止法の制度を、ビジネスモデルや役務にも適用するという案も考えられると思います。この案も考えてみたいと思います。
 それでは、ありがとうございました。

Posted by: hatakama | November 26, 2006 at 11:28 PM

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Tracked on November 23, 2006 at 01:36 PM

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