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July 30, 2006

再発明(re-invention)を促進するマッシュアップ

 Web 2.0 の中でも重要視されているWebサービスのインタフェース(API)の提供は、特に、マッシュアップ(複数のWebサービスを組み合わせた新サービス)が数多く生み出されることにより、ネットサービスのイノベーション普及を促進すると思われます。マッシュアップは簡単に開発できるため、個人レベルでも開発して公開する場合が多いのです。つまり、マッシュアップを開発することで、さらに便益を増し付加価値の高いサービスを利用者自身が作り出して公開し、他者も利用できるようになるわけです。

 ここでは、イノベーション理論から、マッシュアップを考察してみたいと思います。イノベーション理論の古典的な書籍であるE. M. RogersのDiffusion of Innovations(訳本のタイトルは、イノベーション普及学入門) の中の「再発明」(re-invention)の概念を用いてマッシュアップを説明したいと思います。

 "Diffusion of Innovations"(原書、私が持っているのはfourth edition)の174ページに「再発明」(re-invention)が定義されています。
re-invention, defined as the degree to which an innovation is changed or modified by a user in the process of its adoption and implementation.

 つまり、再発明が利用者によって次々と生み出されることで、イノベーションの利用分野が広がるなどして、元のイノベーションの普及に役立つということです。

 そして、178ページに、再発明と "loosely bundled innovation" との関係が解説されています。
An innovation that is an abstract concept or that is a tool (like a compute software program) with many possible applications is more likely to be re-invented. The element comprising an innovation may be tightly or loosely bundled or packaged. A tightly bundled innovation is a collection of highly interdependent components; it is difficult to to adopt one element without adopting the other elements. A loosely bundled innovation consists of elements that are not highly interrelated; such an innovation can be flexibly suited by adopters to their conditions. So the designer or manufacturer of an innovation can affect the degree of re-invention by making the innovation easy or difficult to re-invent.

 考えるに、マッシュアップとは一種の "loosely bundled innovation" であり、つまりWebサービスのAPIが多く公開されることで「再発明」が数多く生みだされるわけです。そのため、Tim O'Reilly が予想しているような「組み合わせによる革新」が進みやすいと考えられるのです。

 このように、古典的なイノベーション理論が、今後のネットについての予測にも役立つのです。

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July 27, 2006

「情報経済」と「ユビキタスエコノミー」

 省庁によって、情報技術の発展や利用がどのように経済活動と関係してくるかの表現や考え方に違いがあります。

 経済産業省は、数年前から情報経済という表現をしています。先週、経済産業省から産業構造審議会 情報経済分科会の報告書として、「情報経済社会の課題と展望」~『情報経済・産業ビジョン』のフォローアップ~が発表になりました。ITの戦略的導入、ITを利用した産業の発展などがテーマです。これらの内容は、今年の情報化白書に盛り込まれることでしょう。その報告書の一部はパブリックコメントを受け付けています。私は、IT知財の活用に関して、少し異論を感じましたので、コメントを出すつもりです。

 総務省は、今月4日に発刊した情報通信白書で、ユビキタスエコノミーという表現を使い始めました。こちらは、インフラの発展から将来的な経済の発展につながるというビジョンを提唱している感じです。経済産業省は漸進的に経済を見ている感じですが、総務省はもう少し先を見ている感じです。なお、総務省では、ITでなく、C(Communication)を含めてICTと呼んでいます。やはり、通信を軽んじてもらいたくないのでしょう。

 私としては、IT活用の将来像を2つの面からとらえるべく、情報化白書と情報通信白書を1つにまとめてもらいたいのですが、省庁再編がないと難しそうです。

 春学期の授業が終わり、後は今週土曜の試験と採点だけになりました。ただし、書籍の校正、論文査読、HP更新もしなければいけないので、暇というわけではありません。といっても、かなり楽にはなりましたので、今週からは週2回位ブログを更新できそうです。

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July 02, 2006

ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会

 6月13日に、経済産業省が設置した「ソフトウェアの法的保護とイノベーションの促進に関する研究会」から、ソフトウェアに係る知的財産権に関する準則が発表になり、現在意見を公募しています。

 これに先立ち、昨年10月に中間報告がありました。その内容については、私のブログにも書きましたが、「ソフトウエア特許がソフトウエア分野のイノベーションを阻害している」という過激なことが書かれていましたので、私も反対のコメントを出しました。

 しかし、今回の内容は、ソフトウェア特許の権利濫用に関する問題だけを取り上げていました。よかったです。特に、オープンソースのソフトウェアを利用している企業/自治体が利用の差し止めを求められることを避けるため、ソフトウェア特許の権利濫用は制限すべきでしょう。この点には異論はありません。オープンソースの推進におけるこの施策の位置づけについては、情報セキュリティの知識袋のブログに解説されています。

 7月12日まで、経済産業省がパブリックコメントを受け付けていますが、私は細かな点でコメントするかもしれませんが、大きな反対はありません。

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