「ウェブ進化論」はあまりお勧めしません
ウェブ進化論という本が売れているようです。しかし、私はゼミ生にはあまり勧めていません。1~2年の学生や他学部の学生で、グーグルのことをほとんど聞いたことのない人の入門用には、読んでもらってもいいかもしれません。安い新書ですし読みやすい文章なので、入門書としてさっと読むのには向いていると思います。
しかし、次の点からあまり勧めていません。
・図が少ないのが難点。この本の中に図は2つしかありません。例えば、ロングテールのことを図なしで理解してもらうのは難しいです。ロングテールのことを初めて聞く人がどれだけ理解できるか疑問です。
・適切ではない表現がかなり見られます。タイトルに「進化論」を持ち出すのは、書籍販売のマーケティング上のテクニックでしょうか。最先端だけを書いて、それで全体の進化の方向だと訴えています。コンサルタントはこのようにインパクトのある表現をしがちですが、私には耐えられないです。ネットでは様々な動きがあり、こんなに単純化するのは問題です。「こちら側」と「あちら側」もやめてほしいです。誤解を生みやすい表現です。もしかして、この本の著者は、「ネットのあちら側」と「対岸という面のあちら側(シリコンバレー)」とを重ね合わせることで、多くの若者をシリコンバレーに呼び込もうとしているのではないか、と疑ってしまいます。P.34の「神の視点」も不適切です。ネットサービスでは「全体を俯瞰」することは多くの企業が行なっています。グーグルがしていることは桁が違うかもしれませんが、それで簡単に「神」を持ち出してもらいたくないです。というように、大学教員には書けないような大胆な表現をしていると思います。直感的には分かりやすいかもしれませんが、誤解を生みやすいのです。このような表現が好きな人もいるかと思いますが、私は嫌いです。
・「グーグルに勤める友人」からの話が何カ所か出てきます。ジャーナリストが書く本であれば、きちんとその会社のマネージャクラスの人にインタビューします。経営学者でも、キーマンにヒアリングしようとします。友人の話から判断するのでは、少し物足りないです。また、その友人について、グーグルに何年勤めているや、何の仕事をしているか、といったプロフィールの記述が無いのも不親切です。どのくらい信用できるか分かりません。また、P.62-63 に出てくるグーグルの考え方は、どこからの引用か(または、だれから聞いた話か)が明示されていません。
この本は、雑誌のコラムやブログのエントリを再編集した本なので、その程度の本と思って読んだほうがいいかと思います。ゆめゆめ「名著」だと期待しないほうがいいと思います。
グーグルについては、次のような本もあります。グーグルに関心をお持ちの方は、必要に応じてこれらの本も読んだほうがいいでしょう。
・ザ・サーチ --- ジャーナリストが時系列でグーグルのこれまでをしつこく記録しています。
・検索エンジン戦争 --- グーグルの会社の中のことにはあまり触れず、グーグルを中心に検索技術の流れについて解説しています。著者は、インプレスのINTERNET Watchというサイトで検索エンジンの裏側というコラムを担当されている方。
・なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか--- 調査や取材は少し物足りないですが、企業文化や制度(20%ルール等)を含め経営理論に基づいてグーグルの経営を分析。
他にも、1月にご紹介したForbesの記事や、TBSのがっちりマンデーで川田亜子アナがグーグル日本法人のオフィスを取材した様子/画像などもグーグルを理解する上で参考になります。
[追記]
今月から、グーグルの公式ブログGoogle Japan Blogが始まっていました。 このブログの内容も、グーグルを理解する上で役立ちます。「仕事も遊びも真剣」だそうです。

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