ICタグの活用事例(3)
3月10日のRETAILTECHの展示会報告のエントリで日本版フューチャーストア実験でのICタグの使い方のことを少し紹介しました。また、昨年8月と5月にも、ICタグの事例をまとめました。
今回は、それ以外の最近のICタグ事例をまとめてみました。行政の補助を受けた実証実験が多いため、年度末に近づいて実証実験の成果報告の発表が多くなっています(年度内に予算消化し実証実験の成果も出さないといけないのでしょう)。利用されているICタグの種類では、通信距離の長いUHF帯の利用が多いようです。
まず、一番の話題はヨドバシカメラです。ヨドバシでは、今年5月からICタグを利用して、メーカーが製品をヨドバシに納入する際の検品作業を効率化するシステムを本稼働させる予定です。日経コンピュータ 2005/10/31号に、迫り来るヨドバシ・ショックという記事があります。実験段階を経ないで、実運用に入るようです。丸紅子会社のマイティカードがUHF帯のICタグシステムを納入。
出版業界のICタグ利用は、日本出版インフラセンターが2007年からの実運用を目指して、実証実験をしています。平成16年度電子タグ実証実験結果が公開されています。最近は、日本レコード協会と共同で経済産業省の支援による電子タグ実証実験を行ったようです。リリースによると、この実証実験ではUHF帯と13.56MHzの電子タグを使っています。
新星堂は、上記の実証実験にも参加していますが、ブエナビスタホームエンターテイメント(ディズニーのDVD販売部門)・アクセンチュアと共同で実験も行っています。こちらは、どの商品がどれだけ顧客の手に取られたかを正確に把握できるようにして、顧客の迷いを認識(顧客が手には取っているが購入にまでは至っていない商品を特定)できるようにした試み。
東京シャツと丸紅は、UHF帯ICタグを商品管理に用いるための実証実験を、東京シャツの八重洲店で行っている。実験期間は2006年2月1日から6カ月。業務効率化のポイントは、(1)入荷時の検品処理、(2)売り上げ精算、(3)棚卸し作業。棚卸し作業は、バーコードを使う場合、八重洲店にある約3500点の商品の棚卸しにのべ8時間かかっていたが、これを今回の実験では、のべ1時間を目指している。日経RFIDテクノロジのコラム(第1回)、(第2回)、(最終回)あり。
YRPユビキタス・ネットワーキング研究所は、ICタグを用いて、青山商事が取り扱うスーツの生産から販売までの工程を管理する実証実験を行なった。青山商事は、実用化が見込めれば2007年にも全店舗に導入する意向。実験中の記事あり。顧客は情報端末でICタグからスーツの情報を引き出しながらコーディネート可能。
海外の事例として、ジレットとメトロの事例が日本でも紹介されています。
CIO Onlineに、米国でのジレットの事例がありました。ジレットは、ウォルマートのRFIDパイロット・プロジェクトに参加していますが、RFID連携で製造・流通プロセスの改革に挑んでいます。ICタグにより、ウォルマートの配送センターや店舗に商品が到着したことをチェックできるだけでなく、店舗の倉庫から販売フロアへ商品が移動したこともジレット側で知ることができる、というのはメーカーにはありがたいことでしょう。
日本でも参考にしたドイツのメトロのフューチャーストアは、CeBIT 2006という欧州の展示会の出展で、Future Storeの実店舗で試験運用しているものを展示しました。さらに、ICタグが製品に付いて家庭でも利用されることを見越してか、ユーザー宅でのICタグの活用事例も紹介しているとのこと。これまでのメトロのフューチャーストアの試みについては、日経BPリアルタイムリテールの解説があります。
食品関係では、やはりトレーサビリティの用途で利用されることが多いです。
T-Engineフォーラム(代表:坂村健東京大学教授)が農林水産省などと共同で進めているユビキタス食品情報基盤システム実証事業が、三越・生協・サミットで行なわれました。サミットの実験では、肉や魚のパックを個別に追跡可能になったとのこと。
日本酒の配送温度を適切に保つために、NTTデータ、トッパン・フォームズ、日本アクセス、日野自動車によるICタグ実験を3月27日から4月10日まで実施。日本酒の箱にアクティブ型で300MHz帯のICタグを付ける。輸送中にICタグに温度データを書き込むのだと思っていましたが、そうでなく、NTTデータのセンターに温度/湿度センサーのデータを常時送信するようです。ビンに付けるICタグは商品管理用で、センター側で各箱の温度状態データと結びつけるとのこと。それならば、なぜアクティブ型か、という疑問が生じますが。
マテリアルフローのサイトに青果物EDI協議会のRFID活用トレーサビリティ実験の記事がありました。「ちば2004年アクションプラン実験事業」の一つとして、「千葉ブランド」農産品の確立を狙ったもの。
菱食の広島フルライン物流センターでは、ICタグ付きのクレート(通い箱)を採用することで物流の効率化、誤配防止を狙っています。
メーカーでの生産管理や在庫管理での利用も増えています。
日経産業新聞2006.1.12によると、コマツは2006年度中に国内の全ての建設機械工場にICタグ(荷札)を使った生産管理システムを導入。部品を運ぶ台車やパレットにICタグを取付けて、部品ごとに細かく生産状況を把握。どこで部品が滞留しているかなどを突き止め、生産効率の改善に役立てる、とのこと。
富士ゼロックスは、日中韓サプライチェーンにおける電子タグ実証実験で、製品、ケース、パレット、コンテナなどにUHF帯のICタグを貼付し、グローバルサプライチェーンにおけるモノの可視化、品質トレーサビリティの確保、受発注などの基幹システムとの連動におけるICタグの効果を検証。
ヨークスは、手袋の生産管理にICタグを利用したシステムを導入。ICタグを使って手袋製品の進捗状況をリアルタイムに確認できるとのこと。
リンタツは、ステンレスの在庫管理向けにICタグを利用したシステムを導入。出荷時の作業時間が半分になり,棚卸しにかかる時間も60%削減できるようになった、とのこと。
ICタグに関するブログとしては、Ubicomp+Shoppingブログに、いろいろな事例や技術動向の情報が多く出ています。
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