« ITベンチャーの第三世代? | Main | 激流 3月号の特集「既存小売業を変える ネット通販の猛威」 »

February 13, 2006

ソフトウェア関連の知的財産を担保にした融資

 今年になって、ソフトウェア関連の知的財産を担保にした融資のニュースが2つありましたので、ご紹介します。

 まず、1月に、ビィー・フリーソフトが、旅行業向け会計システムの特許を担保に日本政策投資銀行から融資を受けました。この企業は、.私の業種毎のeビジネス(旅行業界)のページでも紹介している、TravelAnswerという旅行サイトを運営しています。この融資は、「旅行業向け会計処理装置」(特許第3733478号)という特許を担保にした融資です。ITmediaニュースの記事があります。この特許は、旅行会社向けの基幹システムTravelWINSの仕組みですが、TravelAnswerはTravelWINSと連携して、サイト上から予約まで完結できるようにしています。私は以前、ビィー・フリーソフトにうかがって、この旅行業向け会計の仕組みを詳しくお聞きしたことがあります。ITを活用して、旅行商品の売上仕入計上のやり方を工夫しているため、担保になる価値はあると思います。

 また、春うららかな書房に対して、日本政策投資銀行と福井銀行が、知的財産権を担保とした協調融資を実施したとのことです。春うららかな書房は、独自の在庫管理手法で中古のコミック本を効率的に仕入れている中古本卸の会社とのことです。スーパー源氏などの中古本販売サイトに卸しているようです。特許男さんのブログでも、何を評価して融資しているかが分からないというご意見がありました。特許が出願されていれば、特許の知的財産として評価されるのを理解できますが、この在庫管理手法に関する特許は見当たりませんでした。この融資は、中古本卸というユニークなビジネスを可能にしているコアとなる仕組み(予想キャッシュフローの現在価値)を評価したようです。会計上、ソフトウェアを資産として扱うこともできます。特に、ユニークなビジネスを可能にするソフトウェアであれば、参入障壁を築いて、より確実なキャッシュフローをもたらすため、価値を評価できるでしょう。

 なお、これまでのソフトウェアの知的財産権を担保とした融資を調べると、次のようなものが見つかりました。
ガイオ・テクノロジー --- 組み込みシステム開発用ソフトウェアについて、高度かつ独自の技術・ノウハウを評価し、プログラム著作権を担保として融資。
ジャストウエイ --- 大手企業へライセンス供与しているソフトウェアを評価し、プログラム著作権を担保として融資。
ワイズマン --- 福祉・医療施設向けシステムに関わるプログラムについて、高度かつ独自の技術・ノウハウを評価し、プログラム著作権を担保に融資。
ペンシル --- ポータルサイト髪ナビ!に関する商標権・ドメインネーム所有権等の権利を担保にした融資。

 ジャストウエイのように、ライセンス供与してロイヤルティ収入があるソフトウェアであれば、キャッシュフローをもたらす資産としての担保価値はよく理解できますが、ガイオ・テクノロジーやワイズマンについては、春うららかな書房と同様に、ビジネスのコアとなっていることを評価していると思います。また、ペンシルについては、ブランド価値のようなものをポータルサイトに見いだしているようです。

|

« ITベンチャーの第三世代? | Main | 激流 3月号の特集「既存小売業を変える ネット通販の猛威」 »

Comments

こんばんは。特許男です。
春うららか・・・の件ですが、政策投資銀行のニュースリリースでは「仕入・在庫管理に係るコンピュータプログラムのプログラム著作権」が担保であると発表しています。
ソフトウエアに価値があるかどうかについて言えば、これがビジネスに有益なものであるならば、価値があると言えるでしょう。但し、それが=著作権、ということにはなりません。著作権は「複製」を許諾する権利であって、ソフトウエアが複製せずに利用できる状態になっているならば、そこで価値を持つものは著作権ではなく、ソフトウエアのインストールされたコンピュータの所有権ということになるからです。確かに会計上ソフトウエアは資産計上が可能ですが、それはが著作権の価値というわけではありません(∵ライセンスを受けて購入したソフトウエアでも資産計上は可能です)。春うらららかのケースで言うならば、ここで価値を持つソフトウエアに関する権利は、それがインストールされたサーバの所有権ということになるはずで、コピーする場面の生じない著作権が価値を持つことにはならないはずです。よって担保に取るならコンピュータ本体をとるべきであって、これは知的財産権担保の登場する場面ではないように思います。
こうした法律問題をしっかり検討せずに融資を実行し、プレスリリースまでしてしまうのはいかがなものか、という気がしています。

Posted by: 特許男 | February 13, 2006 at 11:04 PM

特許男さん
 コメントありがとうございます。
 しかしながら、頂いたご意見にはうなずけない点があります。プログラムの著作権は著作権法上認められていますので、担保の対象はプログラムになるでしょう。権利があるのですから、法律的には問題ないと思います。私は20代のころはプログラマでして、開発したプログラムにはコメントで(C)を書き入れていました。特許法でも平成14年の改正からプログラムの請求項が認められましたが、著作権法ではそれ以前からプログラムは著作物として権利を認めていました。著作権には、複製権以外に、公衆送信権・譲渡権などもありますので、複製できるか否かで判断するべきではないと思います。
 言葉足らずで申し訳ありませんでしたが、私が言いたかった(問題にしたかった)のは、担保価値の対象でなく、価値の算定のほうです。ソフトウェアに特許があれば、はっきりと差別化や参入障壁をもたらすので、算定しやすいでしょう。しかし、プログラムの著作権は、同じ機能のプログラムを新たに一から開発された場合には、全く無力です。ですので、プログラム(やそれを活用する事業の仕組み)に何らかのノウハウが含まれていて、他社に真似されにくい(そのため確実にキャッシュフローが見込まれる)と銀行が判断することで、担保価値が算定されているはずです。
 小職は、弁理士ではありませんが、大学の「情報化戦略」「eビジネス」といった授業の中で、ソフトウェアの特許や著作権の話もしております。ですので、それらの法律の勉強はしているつもりです。
 それでは、今後ともよろしくお願いいたします。

Posted by: hatakama | February 14, 2006 at 03:49 PM

話題がクローズしかかったところ、再びすみません、特許男です。
私のコメントも舌足らずでした。
このケースでも、在庫管理のプログラムには著作権が発生しますので、先生のご指摘のとおり著作権を担保にとることは可能です。
その上で、価値算定において、著作権による参入障壁に問題があること、特許があると好ましいことは、まさに先生のご指摘されているとおりです。
一方で、それ以上に根本的な問題ではないかと思ったのは、担保としての処分性の問題です。この事案で担保処分を行うということは、担保となっているプログラムの著作権を第三者に売却するということです。これを、買い手の側の立場に立って考えると、その買い手は恐らくこのプログラムを利用して同様の事業を行おうとするのでしょうが、その場合に必要になるのは恐らくプログラムがインストールされたサーバであって、買い手は債務者からサーバを買上げれば十分で、著作権まで購入する必要がありません。なぜならば、ここがややこしいところですが、著作物を「使用」しても(=プログラムを実行しても)著作権を侵害することにはならないからです(例えば、本をコピーすると著作権侵害になるけれど、本を読むことは著作権の侵害にはならないのと同じ理屈です)。つまり、物理的なサーバさえ正当に購入すれば、自分で実施する限りにおいては著作権の有無は問題にならないと考えられます(よって、サーバを譲渡担保にとることは有効だと思います)。理論的には何らかの価値が算出できるとしても、実際は売り先が想定できない著作権を担保にとったところで、処分できないのではないか、というのが言いたかったことです。
よって、プログラムの著作権が実質的な意味で担保の対象になるのは、他人に利用させることを前提とするプログラム(≒パッケージソフト)であって、社内システムのプログラムは、処分性の点からそもそも担保の適格性に欠けるのではないか、というのが私の意見でした。

Posted by: 特許男 | February 14, 2006 at 06:14 PM

特許男さん
 再度、コメントいただきありがとうございます。
 担保としての処分性の問題でしたか。それならば、実務的には、ありえるかもしれませんね。
 なお、プログラムの著作権を得るということは、そのプログラムを自由に改変して他の用途にも利用できるわけです。そのためには、オブジェクトプログラム(サーバにインストールされた実行形式のプログラム)だけでなく、プログラム言語のままのソースプログラムも入手しておきたい場合が、少なくないと思います。ただし、現実に、担保となっていたプログラムの著作権を第三者に売却した、といった事例は聞いたことがないので、何とも分からないですが。
 それでは、ありがとうございました。

Posted by: hatakama | February 14, 2006 at 11:53 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/85591/8641431

Listed below are links to weblogs that reference ソフトウェア関連の知的財産を担保にした融資:

« ITベンチャーの第三世代? | Main | 激流 3月号の特集「既存小売業を変える ネット通販の猛威」 »