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January 27, 2006

大学教育から見たホリエモン

 私は、ライブドアの堀江元社長が逮捕されて、とても喜んでいます。これは、ホリエモンを好きでなかったから、といった個人的な理由ではなく、教育上問題だったためです。

 大学で教える立場から見ると、堀江元社長の経営は、「型破り」というよりも、「滅茶苦茶」「無知」といった印象を受けていました。ですので、そのようなやり方でどんどん成長されては、ネットベンチャーであれば大学で経営学などを勉強しなくともいい、といった風潮になりかねないと危惧していたのです。私としては、「一発当てても、経営の勉強をしっかりしておかないとホリエモンみたいになってしまうよ」と学生に言えるようになってホッとしています。(なお、ライブドアの場合、一発当てたというのは、事業でなく株式の百分割や近鉄買収案発表などで株価を上げたことを言っています。)

 テレビで堀江元社長の話を聞いていると、とても頭の回転の早い人であるとは感じました。問い詰められた時に、とっさに逆に問いかけたりして、カウンター攻撃のうまさは格別だと思いました。政治家が目をつけるのも無理はないと思いました。しかし、経営の基本的なところをしっかりと学んでいないという点を感じました。経営戦略のいろいろなセオリーを理解できていないように思えました。キャッシュフローを高めるためにコストを抑えるだけでいい、といったことを本の中で書いていました。経営の苦しい状態の会社をM&Aで吸収して大きくなるだけならば、そのやり方でも何とか通用しました。しかし、ポートフォリオ的な考え方や技術経営の考え方が全く欠落していたため、ネットにおいては真の強者にはなれなかったわけです。

 これまで、多くの株主にはいい印象を持たれていたようです。これは、株主には「株主の視点で語ってくれる経営者」と写っていたためだと思います。株主には、とても丁寧な口調で親切に話します。また、マスコミやブログで消費者に語りかけてくれます。しかし、実は、彼は会社が会社がこうなったらいいな程度しか考えられないような「株主の視点でしか考えられない経営の素人」であったということです。夢は語れますので、「通信とネットの融合」等多くの夢を語っていました。しかし、結局は、経営能力の問題からM&Aでしか会社を大きくさせることができないため、資金調達のために不正なことをせざるを得なかったわけです。ですので、とても経営者といえません。

 時価総額を目標としていたのもひどい話でした。株価は結果です。結果として時価総額を誇るのはいいとしても、目標にするのは滅茶苦茶です。しっかりとした企業理念や成長目標を持つことが企業経営には不可欠であることを、理解できていないようです。

 ネットビジネスでは、あまり成功しているとはいえなかったのです。ネット上のモールでは、ライブドアデパートへの来客数は、ページビューの数値で見ると、楽天市場よりも2桁程度少ないのです。ネットでは、店がすいているかが分かりませんが、楽天市場は混んでいる時でもライブドアデパートはがらすき、という状況です。唯一、ブログの利用者数は日本でトップシェアでしたが、最近はヤフーブログ等のほうが利用者数の増加が多く、間もなくトップシェアでなくなるでしょう。現在トップシェアといっても、だいたいは無料のサービスですので、ネットでの利益にはほとんど結びついていない状況なのです。ライブドアがセシールを買収した時にも、私は首をかしげました。モールビジネスがうまくいっていないのをごまかすための策にしか思えませんでした。それまでのモールビジネスは店子を集める在庫を持たないビジネスでしたので、アマゾン型のビジネスに移行するのであれば、大きな方針転換が必要です。しっかりとした方針転換の発表がなく、通販もやりますよ、といったあいまいな事業展開が気になったのです。

 元の社名の「オン・ザ・エッジ」という社名からして、教育上問題でした。「オンジエッジ」でなく「オンザエッジ」と名乗っていた理由は、はてなに出ていました。意図的に間違った読み方にしたようです。しかし、中学生が間違えて覚えてしまうかもしれません。また、英語が分かるかを試しているような嫌な社名だと感じました。

 私は、授業の内容を元に、eビジネスの本をこの春に書こうと思っていますが、本のオビに「ライブドア株で大損したデイトレーダーや、ホリエモンを選挙にかついで大恥をかいた政治家のみなさん必読の、eビジネス再入門」といった文字が踊るような本にすべきか迷っています。できるだけ多くの人に読んでほしいと思っていますので、あくまでもテキストとしての本にしたいのです。その本には、これまでは名をふせてライブドア批判を入れようと思っていましたが、逮捕されたので、実名で反面教師として利用させていただこうと思っています。

 今週月曜に、eビジネスの授業の小テストを行ないました。その中の問題の1つとして、ライブドアの経営の問題点を出題しました。だいたいの学生は問題を分かっていました。1割くらい、「目立ち過ぎただけ」とか「ホリエモンは好き」といった意見もありましたが、このような意見が少なくてホッとしました。

 今月は中旬から試験・採点・卒論指導などで超多忙(1/16からずっと出勤で、夜も卒論のチェックに追われてきた)であるため、頭が回らずにまとまりのある文章にはなりませんでした。失礼しました。

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January 17, 2006

コンテンツビジネスはロングテール現象以外に息の長い商品を売ることができる点も魅力

 今週のeビジネスの授業(昨日)では、コンテンツビジネスの話をしました。

 最近、CNET-Japanに、日米で異なる映像配信ビジネスモデルの行方というコラムがあり、その中で、「ロングテールの女神は再び映像配信でも微笑むか」という内容がありました。コンテンツについてもロングテールが当てはまるのは同感です。ただし、ロングテール現象以外にも、時間軸で息の長い商品を流通させることができる点も、ネットでのコンテンツ販売の魅力といえるでしょう。

 例えば、電子コンテンツの中の電子書籍では、単なるデジタル技術ではなく、文化を残すための発明という見方もされています。実際の電子書籍ビジネスでも、長期的に売れるコンテンツをそろえることで利益を出そうとしている、と聞いたことがあります。一時的に書店に平積みされるようなヒット作品を販売することよりも、継続的に売れる商品を流通させることで、長期的な販売を狙っているのです。

 日経産業新聞1月12日の「デジタル時流」にも、「日米の映像配信ビジネス新潮流」という記事があり、日本の動向や、Google Video Store の動きが書かれていました。Google Video Storeでは、過去のヒットテレビドラマのスタートレック等のコンテンツ販売を行なう予定とのこと。やはり、映像配信でも、著作権問題が解決されれば、時間軸で息の長い商品を売ることような方向になると思います。

 昨日のeビジネスの授業では、アマゾンやYahoo等、いろいろなeビジネスの事例の本も紹介したのですが、「ライブドアは目茶苦茶な経営をしているので、参考にしないほうがいい」と話しました。以前、ブログに書きましたように、適切に経営をしているとはいえないと思います。そして、昨日の授業の直後に、東京地検特捜部の家宅捜索の発表がありました。いいタイミングでした。というよりも、検察が動くのが遅すぎたと思いますが...

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January 04, 2006

グーグルの20%ルールは義務づけ? Forbes「躍進グーグルの型破り経営 (Google Thinks Small)」より

 本年もよろしくお願いします。

 さて、Forbes日本版2006年2月号のFrom the worldに、「躍進グーグルの型破り経営」という翻訳記事があったので、買って読みました。どのように、グーグルが、Google Map、Google Print、Gメールなど、様々な新ビジネスを生み出しているかを理解したいと考えているためです。

 その記事の中に、「グーグルはあくまでも社員のビジョンを重視し、社員は社内で過ごす時間の20%を、自分が担当している業務以外の関心を持つ分野に使うことが義務づけられている」という文章がありました。
 グーグルがこのような20%ルールを採用していることは、CNET Japanの記事で知っていました。しかし、これまでのその手のルール(3Mなどの研究開発志向企業で採用。3Mでは15%)は、「ある程度以内の時間を担当業務以外の分野に使ってもいい、または使うことを奨励」といった制度を設けるものでした。そのため、グーグルもその程度と思っていましたが、「使うことが義務づけられている」というのは驚きでした。
 検索してみたところ、この記事の原文(Google Thinks Small)がForbes.comにありましたので、20%ルールのところを確認しました。Workers are asked to spend 20% of their time on something that interests them, away from their main jobs. と書かれていました。"asked to spend" なので、「義務」と訳しても間違いではないでしょうが、もしかしたら、「奨励」位の意味かもしれません。

 その他では、社員の間で先週何を行ったか(5行以内にまとめる)を共有するなど、情報共有を徹底している点も特徴的でしょう。

 たぶんスペースの問題でしょうが、原文の一部は訳されていませんでした。しかし、訳されていない部分にも、興味深い内容がありました。We need generalists. というのも意外でした。研究開発を中心とした企業なので、技術的なスペシャリストを採用しているかと思っていましたが、様々なプロジェクトに参加するのに視野の広い人材のほうがいいようです。Googleの経営に関心のある方は、原文も読んだほうがいいと思います。

 このGoogleの組織戦略とYahooの戦略(シンプルルール戦略など)を比べると、スピード重視は同じですが、大きく異なっていることを強く感じました。Googleは、上記のような20%ルール、情報共有、そして社員が様々なプロジェクトに参加することで、多様で素早いビジネス展開を可能にしているのだと感じました。

[追記](2006/3/12)
 Forbesの日本語訳の記事の通り、グーグルの20%ルールは「義務付け」が正しかったです。ウェブ進化論という本の、P.86-88に「20%-80%ルール」として紹介されていました。「できない場合には評価に傷がつく」そうなので、義務付けといっていいでしょう。この本の著者の梅田望夫さんは、My Life Between Silicon Valley and Japanというブログを書かれているように、シリコンバレー企業の状況にとても詳しい方であり、グーグルに勤める友人もおありのようなので、間違いはないでしょう。

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