本当は怖いビジネスモデル特許
先週、特許庁から、ビジネス関連発明の最近の動向についてという資料が発表されました。ビジネス方法特許(一般にはビジネスモデル特許と呼ばれる)に関しての特許の動向をまとめたものです。
その資料のポイントは次の点です。
・2000年の第3,4四半期をピークに出願件数は減少傾向。
・2003年、2004年と続けて8%前後の特許査定率(特許になる割合が他の分野に比べて低い状況が続いている)。
・拒絶査定不服審判請求率は2000年以降、20%前後を推移。
・拒絶査定不服審判事件の請求不成立の割合は、近年、80~90%程度。
出願件数は減少傾向というのは、出願の質が高くなったということで、望ましい方向だと思います。私は、登録/公開されたビジネス方法特許のウォッチを続けていますが、件数が少なくなって助かっています。ビジネス特許ブームが去ったという御意見の方もいます。しかし、特許成立例をみると、ビジネス方法の権利化により企業競争力を高めようという姿勢は広く見られます。今年、eビジネス関連では、楽天のセミクローズドオークションの特許(特許第3659400号)、Homewith.netの特許(特許第3650324号)、ライブドアに買収された宿泊予約のベストストリームの特許(特許3624286号、3617035号、3617029号)などが成立していますし、金融関連や、ネット広告/ネットマーケティング関連でも、いろいろと成立しています。
特許査定率が低いのはこれまでも言われていましたが、馬場弁理士のブログに解説されているように、「依然として特許率が低いので、発明の内容をよく吟味してから出願せよ、と特許庁が言っている」と読み取るのがいいでしょう。数年前は、「発明ではない」(自然法則を利用した技術的思想の創作に該当しない)という特許法第29条第1項柱書違反で門前払い的な拒絶をされることが少なくなかったのですが、最近は明細の書き方がよくなったため、そのような拒絶は少なくなったと感じます。しかし、まだ、進歩性を十分にアピールできていない出願が多いのでしょう。ただし、小生が、eビジネス/eコマースの動向と技術というページで上げているような、実際のビジネスに関わる特許出願については、8%という低い査定率では決してありません。少なくとも数割くらいは成立している感触です(具体的な数値は出していませんが)。なお、特許の審査基準は、審査官によっても多少は違いますし、今泉さんのブログにもあるように、その時々で微妙に動いていると言われます。
拒絶査定不服審判請求率は20%前後を推移していると書かれていますが、実際のビジネスに関わる特許出願については、拒絶査定不服審判を請求するケースがかなり多いです。感触としては、拒絶査定されたうち半分位は拒絶査定不服審判を請求しているという感じです。
拒絶査定不服審判事件の請求不成立の割合は、80~90%程度と書かれています。確かに、2002~2003年は90%近かったですが、2004年は約80%です。ですので、出願の質が高くなっていると感じます。
結論としては、特許の思想体系のブログに述べられている「とはいえ、ビジネスモデル特許出願は特許にならないから無駄と考えると、もしかしたら痛い目にあうかもしれません」という御意見に同感です。火曜のブログに書いたJAL対ANAのような問題がいつ生じるか分かりませんので、一般の企業でも、属する業界のビジネス方法特許の動向を、ある程度は把握しておいたほうがいいでしょう。また、防衛のためにも、独特な情報システム利用については、特許化を目指すべきです。たけしの番組ではないですが、「放っておくと大変なことになりますよ」と警告したいわけです。
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