ICタグの販売現場での活用(三越など)
本日の夕方6時のNHK総合のニュースで、三越日本橋本店の婦人靴売り場でICタグが使われ始めたというレポートがありました。この話は、日経BP リアルタイムリテールの事例紹介で知っていましたが、映像を見てどのように使うかがよく分かりました。一般に百貨店の靴売り場では、店頭に出ている靴の十倍近くの数が倉庫に保管されているとのこと。他のサイズ/色の靴が無いかを店員に尋ねると、かなり待たされるのが普通でした。それを解消するためにICタグを活用しようというものです。タッチパネルPCを使って在庫を検索することができるようにしたシステムで、PCの前の台の上にICタグの付いた商品を置くだけでよいのです。そうすると、その種類の靴の他のサイズ/色の在庫状況をタッチパネルで調べることができます。テレビでは話は出てきませんでしたが、棚卸し時間も大幅短縮できるようです。タッチパネルPCについては、実験時点でのUNISYSの事例紹介の写真のほうがよく分かります。
リアルタイムリテールの事例紹介によると、実験では、販売につながった接客時間は約12分と以前とあまり変わらないが、商品を紹介した回数がそれ以前の平均1.7回/1.8回から、3回弱に増え、成功率も高くなっていると思われ、販売につながらなかった接客時間は大幅に短縮された、とのこと。効果がありそうです。
この話について、ファッション流通ブログde業界関心事によると、百貨店の靴売り場は、一般的に靴メーカーではなく、靴問屋さんの縄張りだそうで、靴問屋さんの重い腰が上がらなければ出来なかった話、ということです。
海外での、販売現場でのICタグの活用については、官民合同ICタグ米国視察調査の結果報告に、プラダ・ソーホー店(ニューヨーク)でのICタグ利用が紹介されています。ICタグ付き商品を試着室のアンテナ付きクローゼットに持ち込むと、当該商品のデッサン、素材、色、サイズの情報やファッションショーのビデオが見られるなど、買い物を楽しくする情報が提供される仕組みになっている、とのこと。日経BP リアルタイムリテールのRFIDイノベーションセンター(独のメトログループ)の解説には、インテリジェント試着室や、スマートシェルフ(RFIDリーダーを設置した商品陳列棚で、どの商品が手に取られたか、つまり興味を持たれたか、が分かる仕組み)が紹介されています。
他に、ICタグが販売現場で利用されている事例としては、日産カレスト座間の事例が、日経コミュニケーション2005/2/15号に紹介されています。中古車を探す顧客にPDAを貸与し、無線LANと無線ICタグを駆使し、PDAからは(1)車両の展示位置の検索,(2)車種や年式,修復歴など詳細情報の閲覧,(3)試乗の申し込み,(4)概算見積もり、ができるようにしたとのことです。
今後も、ICタグの活用が進みそうです。
Comments
TBありがとうございました。ファッション流通ブログde業界関心事のtakaです。
本業はファッションアパレル・雑貨・靴の特に小売業における顧客満足を目的とした情報化、データ活用のコンサルをしております。
貴ブログは、業務にも関連がありそうで、内容も濃いブログですので、ちょくちょく拝見させて頂きたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。
Posted by: taka | May 04, 2005 10:26 PM
takaさん
おいでいただき、ありがとうございます。
私は、流通業にはあまり詳しくありませんが、
今年のゼミでは「流通ビジネスモデル」という
本を輪読しますし、リテールサポートやCRM/
FSPなどの流通での情報化について、最近は
いろいろと情報収集しています。
takaさんのブログも参考にさせていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by: hatakama | May 05, 2005 02:15 PM
三越の場合、ICタグの導入によって、接客時間が12分から6分へと減り、売り上げは、平均で5%程度増えたということです。
また、第2回の実証実験から類似検索という機能を追加し、希望するデザインの希望するサイズが見つからなかったとき、似たようなデザインの靴をラフスケッチのような線画から選べるようになりました。
顧客にも店員にも好評で、8月には銀座店に導入されるということです。
また、札幌店、名古屋栄店、天神店にも導入する意向のようです。
とりあえず、今日はここまで。
Posted by: かねたん | July 22, 2005 11:44 PM
利便性は向上したものの、細かな課題も明らかになったようです。
一つは、取り置きへの対処。
取り置きになると他の顧客へは売ることができないが、売上げにもならない。
そのため、実在庫との誤差が大きくなってしまいました。
これは、取り置きというカテゴリーを作ることで解決しました。
もうひとつは店員が持っているPDAでの検索です。運用開始後、
・バッテリーが1日もたない
・起動に時間がかかり(十数秒)、ロスタイムが発生する
という問題が明らかになりました。
PDAでは、在庫一覧を出すことができるのですが、当初予想したほど必要性は高くなく、PDAが使われるケースが少ないということでした。
私が取材に行った際、しばらく売場で様子を見ていたのですが、タッチパネルは、入れ替わり立ち替わり使われるものの、PDAを使っている店員は1名もいませんでした。
Posted by: かねたん | July 27, 2005 01:06 PM
かねたんさん
情報ありがとうございます。私はまだ見に行っていませんので、役立ちます。NTTcomの事例集にPDA利用場面などの動画がのっているのを見ていますが、確かにPDAの操作は少しやっかいそうです。
客自身がタッチパネルで使うようになれば、PDAはそれほど必要でないのかもしれません。ただし、卸の在庫を確認するためにはPDAを操作する必要があるようですので、店になかった場合に、顧客を逃がさないようにするのが課題でしょう。
それでは。
Posted by: hatakama | July 29, 2005 10:19 AM
タッチパネルでは、店内在庫の有無しか確認できませんが、現状では、それで十分のようです。
ちなみに、PDAでは、店内在庫の数量、卸会社在庫の数量を確認できます。
8月に銀座店でも稼働するようになれば、日本橋本店から銀座店の在庫確認をできるようにすることも必要になると思います。
残念ながら、この辺の具体的なプランについては聞けなかったのですが、新たに卸2社が加わることもあるので、何らかの対策を考えているものと思われます。
Posted by: かねたん | July 30, 2005 01:35 AM
具体的な数字をいくつか…
店舗での入荷検品にもICタグが利用されていますが、バーコードタグで検品するより1/3~1/5まで所要時間が短縮されるそうです。
棚卸しについては、1台の棚について約250足の靴が収納されていますが、これをバーコードタグで検品すると、1台あたり約15分が必要だそうです。これが、ICタグで検品すると約4分で済むそうです。
Posted by: かねたん | August 04, 2005 04:57 PM
かねたんさん、ありがとうございます。
先週発表されたUnisysのシンエイ/三越の事例解説の中でも、本稼働後のデータが出ていました。検品の効率化にとても効果があるというのは、データからよく分かります。
また、今後は、ICタグの取り付け作業と、ICタグとJANコードの関連付けが課題のようです。
本日、「ICタグの活用事例(2)」という書き込みもしましたので、そちらもよろしく。
Posted by: hatakama | August 08, 2005 02:27 PM